昭和52年版 通信白書

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2 宇宙通信の今後の課題

 我が国は,前述のとおり宇宙通信の発展に積極的に取り組んできた。今後,宇宙通信は,技術的にも利用分野においても多種多様な展開が期待されるところであるが,これまでの成果を生かし,社会の要請に適合した宇宙通信の利用を促進し,社会,経済,文化の発展,国民生活の向上に役立てていくためには,どのような課題が考えられるであろうか。
 まず第一に,これまでの宇宙通信の開発成果を可能な限り早期に国民生活に還元することである。すなわち衛星通信の分野では,通信衛星,放送衛星の早期実用化が緊急の課題であり,郵政省では,CS,BSの開発成果及び実験結果を踏まえて,次期衛星の実用化の実現に向かって努力しているところである。
 第二に,宇宙通信に関する自主技術の開発という課題がある。我が国の宇宙通信技術は,最近までの関係機関の努力により,国際的にみても相当のレベルに達したが,まだ外国の技術に依存するところが少なくない。宇宙通信の発展は,その性質上技術力によって左右されるところが大きいことから,今後我が国の宇宙通信の発展を期するためには,宇宙通信に関する自主技術の確立が不可欠である。今後,この分野における国産技術の開発に一段と努力をすることが重要である。
 第三に,宇宙通信の国際的な側面を考慮しなければならない。宇宙通信は,一般の無線通信についての,国際的規律に服するほかに,特に静止軌道及び周波数の使用について国際的に厳格な手続により規律されている。我が国の宇宙通信の発展にとって,静止軌道及び周波数の確保について関係国との調整を円滑に行うことなどが不可欠の条件である。したがって,今後,宇宙通信の分野における国際活動の活発化が必要である。
 最後に宇宙通信は,技術開発,施設整備,システム運用等に多額の資金及び優秀な人材等を必要とすること,既存の通信体系に大きな影響を与えうること,新たな通信サービスを出現させ,国民生活への影響も小さくないことなどから通信の分野における宇宙通信の役割及び社会的,経済的,文化的ニーズの今後の動向等を検討しつつ国民のコンセンサスの下に長期ビジョンを明確にしていく必要がある。
 宇宙通信は,人類にとって比較的新しい領域であるが,その進展に即応した適切な措置を講じていくことによってこの分野の無限の可能性を現実のものとしていくことができよう。
 

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