昭和52年版 通信白書

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第4節 有線伝送及び交換技術

1 有線伝送技術

 電話をはじめ,画像通信,データ通信のトラヒックの増加に対処できるように,大容量伝送方式の開発が進められている。
(1) 陸上同軸ケーブル方式
 アナログ伝送方式については,我が国の代表的な方式として全国的に用いられてきた12MHz方式(電話2,700回線)を始めとして,60MHz方式(電話1万800回線または4MHzテレビ9回線)が導入されている。60MHzを超える大容量アナログ伝送方式の基礎検討も進められている。
 ディジタル伝送方式は,音声はもとより画像,データ通信等の多様な情報を経済的かつ高品質で伝送できる特長を有しており,既にPCM-100M方式(電話1,440回線または4MHzテレビ15回線)が実用化されている。
 さらに,ディジタル伝送方式としては世界最大の伝送容量を誇るPCM-400M方式が51年12月,大阪-神戸,神戸-姫路の2区間に導入された。この方式は,1秒間に約4億個のパルスを伝送する超高速,超広帯域の伝送方式で,超高速トランジスタ,ハイブリッドIC等の新しい部品及び回路技術と新しい方式技術とが有機的に結合して実用化されたものである。電話5,760回線,4MHzテレビ60回線を高品質かつ経済的に伝送することができる本方式は,今後の多様なサービスを提供する電気通信網の形成に大いに寄与するものと期待されている。PCM-400M方式の諸元を第2-7-6表に示す。
 なお,更に将来の容量増大や経済化のための各種ディジタル伝送方式の研究が進められている。
(2) 海底同軸ケーブル方式
 郵政省では,電電公社,国際電電等の協力のもとに,50年度から4か年計画で,従来の銅に代えてアルミニウムを外部導体として使用する新海底同軸ケーブルシステムの開発を進めている。本開発は最近における国際通信の著しい需要増に対処するため,国際間の海底同軸ケーブルの各種の建設計画が進められている状況にかんがみ,国際競争力のある海底同軸ケーブルの早急な開発が必要であること,先行きの銅資源の枯渇化が憂慮されていることなどから外部導体としてアルミニウムを使用するとともに,ケーブルシステム全体について経済化を指向した新海底同軸ケーブルシステムの開発を行うことを目的としたものである。本計画で開発されるシステムは,12MHz方式(電話1,600回線,3kHz/回線)のものであり,51年度にはケーブル及び中継器等に関する基礎的な研究開発を完了し,53年度に予定されている現場試験に向けて作業が順調に進められている。
 国内通信用海底同軸ケーブル方式については,従来,短距離浅海用のCS-10M方式(電話900回線)及びCS-36M-S方式(電話2,700回線)が実用化されているが,50年10月には,深海用の大容量長距離方式のCS-36M-D2方式(電話900回線及びカラーテレビジョン2回線)が沖縄-宮古島間約360kmに布設され,51年12月から商用に供されている。この方式は,長距離海底同軸ケーブルとしては世界で最も広帯域のものであり,電話とテレビジョン信号の同時伝送も世界で初めての試みである。また,宮崎-沖縄間約900kmにおいてCS-36M-D1方式(電話2,700回線)の布設が52年4月に完了し,52年秋の開通を目途に試験が進められている。また,海底ケーブルの布設技術の開発も続けられており,50年度に竣工した布設船黒潮丸には,航行制御,ケーブル布設,工事記録などをコンピュータで制御する布設自動化システムが導入され,沖縄〜宮古,宮崎〜沖縄の海底同軸ケーブルの布設でその性能・動作が確認された。また,ケーブル埋設機の開発が進められ,水深200m程度までの埋設が可能となった。更に,障害修理後のケーブルの再埋設に用いる修理用埋設機等修理技術の開発が進められている。国際通信用海底同軸ケーブル方式については,CS-12M方式(電話1,600回線,3kHz/回線)及び5M方式(480回線,4kHz/回線)が開発されており,前者は,52年7月末完成予定の沖縄-ルソン-香港ケーブルの沖縄-ルソン間に,後者は,51年10月に開通した日本-中国間海底ケーブルに採用されている。
 大容量国際間海底ケーブルでは,ケーブル障害は通信サービスに重大な影響を与える。従って,ケーブル障害の迅速な修復を期するための効率的な海底ケーブル修理技術,特に埋設ケーブルにも適用できるものについて検討を行っている。埋設ケーブルを効率的に修理するためには,まず,海底床下に埋設されているケーブルの所在個所を探知し,これを捕捉し,ケーブル修理母船上に回収することが前提となる。このようなことから,海底ケーブルの探索及び捕捉について,その方式やセンサーの研究を進めているが,まず,ケーブル捕捉センサーとしてケーブル構成材料(鉄,銅などの金属)に電気・磁気的に反応するセンサーの研究開発を完了した。埋設ケーブルを従来の方式で捕捉すると,異常なテンションが加わって切断の恐れがあるが,本方式によれば捕捉信号が瞬時に発出され,ケーブルに異常なテンションをかけることを防止できる。

第2-7-6表 PCM―400M方式諸元
 

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