昭和52年版 通信白書

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1 新しいデータ通信網の動向

 従来のデータ通信システムは,コンピュータを中心とし,これに多数の端末が専用線を通じて接続される形式のものが大部分であった。しかし,コンピュータの利用が浸透し,社会活動が多様化してくるに伴い,一つの端末で多数のコンピュータと通信したいとの要望が出てきており,また,利用範囲の拡大に伴い低トラヒックの端末の需要が増加してきている。更に,分散設置された複数のコンピュータを結合してより高度のシステムを構成するいわゆるコンピュータネットワーク形成の動きが盛んとなっている。これらのことから,交換網利用のデータ通信システムへの期待が今後ますます高まるものと予想される。
 しかし,既設の電話鋼や加入電信網は,データ伝送の面では接続品質,伝送品質上の制約があり,通信速度についても限界があるので,高速,高品質で今後の多彩かつ高度なサービスを効率的に提供できるディジタルデータ交換網の開発が必要とされ,これは電電公社を中心に進められている。
 このディジタルデータ交換網は,44年度から検討が開始され,49年3月に試作機DDX-1により回線交換方式,パケット交換方式について試験が行われた。この成果に基づき,現場試験機DDX-2が試作され,50年12月から回線交換方式について東京,横浜,名古屋を結び試験が行われている。この試験の一環として,東京大学と京都大学間を結ぶ異機種コンピュータ間通信の実験が行われ,良好な結果を得るなど順調に試験が進められている。また,パケット交換方式についても試作試験が進められている。
 国際データ通信の分野においては,その多様化,高度化に柔軟に対処するため,伝送,交換機能とは別に,異種の加入者間のインターフェース機能を持つ通信処理装置(プロトコルマシン)の試作が国際電電により実施された。
 試作機は,汎用ミニコンピュータと通信制御装置から構成され,その機能は,[1]端末プロトコルの標準プロトコルへの変換(CCITT勧告X25),[2]パケットの分解・組立,[3]パケット多重による伝送路の有効利用,[4]高品質伝送,優先処理等の高度通信処理等を目的としており,その特徴は[1]通信処理構能の分散処理,[2]階層構造プロトコルの採用,[3]ハードウエア,ソフトウエア両面にわたるモジュール構成の採用等であるが,更に,システム構成の柔軟性,機能の拡張及び各処理能力の向上について検討が進められている。
 世界各国のデータ通信網の利用状況をみると,米国において,既に本格的サービスが実施されているのをはじめとして,カナダやヨーロッパ各国においてもサービスが開始されつつある。
 このような新しいデータ通信網技術に関する国際標準化作業は,CCITT(国際電信電話諮問委員会)において重要かつ緊急を要する課題として審議されており,我が国もこの標準化作業に積極的に参加している。51年秋のCCITT第6回総会では,データ通信網に関するいくつかの重要な勧告が採択された。
 

第2部第7章第5節 デー夕通信システム に戻る 2 情報処理技術 に進む