平成2年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

むすび

 元年度は、電気通信分野における競争が注目を集めた年であった。
 国内電気通信分野については、無線呼出しサービス等移動通信サービス分野では、新事業者のシェアが伸びる等競争導入の効果があらわれつつあるが、電話サービスについては、新事業者のサービス開始後、2年経過した元年においてもNTTに対する新事業者のシェアは、契約数で1割、収入で約3%にとどまっている。このような状況を背景に、2年3月、公正有効競争の創出等の観点から、NTTの在り方について電気通信審議会の答申が出された。これを受けて移動体通信業務の分離、事業部門ごとの収支の公開等を内容とする政府の方針が決定されており、今後の競争の進展が期待されている。一方、国際電気通信分野においては、国際化の進展に伴う需要増に支えられ、国際電話の取扱数・専用回線数とも高い伸びを示したが、元年には、新国際第一種電気通信事業者2社が新たにサービスを開始し、KDDを含め3社の競争状態となったこともあって、国際電話については、通話数の多い地域を中心に大幅な料金の値下げが行われるなど利用者は競争の恩恵を受けた。
 そのほか、放送分野においては、衛星放送の受信世帯数は230万世帯を超え、郵便事業についても内国郵便物数は順調に増加した。
 情報化の動向を見ると、産業の情報化については、企業のネットワーク化が一段落した感があり、普及率で12.8%(対前年度比11.1%増)、業務処理率では16.9%(対前年度比9.6%増)と順調に進展しているが伸び率は鈍化した。一方、家庭の情報化については、情報通信機器の保有等の装備面と家庭に対する情報の提供面は進展しているが、情報の利用時間は、相変わらずテレビジョン放送を中心としたマス・メディアの視聴を中心に微増、情報に対する支出はわずかながら減少となっている。また、地域の情報化について見ると、情報供給面の地域間格差は依然として大きいながらも落ち着いた動きを示しているが、情報発信力の地域間格差は供給面の格差より大きく、しかも、拡大傾向にある。なお、今回初めて公表されたNTTの地域間トラヒック状況を用いて各県の通話の交流状況を見ると東京を中心とする全国的な情報圏、九州を除く西日本と北海道に及ぶ大阪の情報圏、それに従来の地方ブロックの東北、中部、中国、四国、九州にほぼ対応する情報圏の形成が明らかになった。このように、我が国の情報化は、産業中心、東京等の大都市中心に進展しており、需要面の進展や地域の情報発信力の強化等総合的な政策の推進が必要である。
 また、元年度も日米間で、自動車電話問題、衛星の開発・調達問題等情報通信分野の問題が取り上げられたが、元年度には、国際政治における東西関係の大きな変化が生じたほか、日米の国際経済問題は国内の構造問題にまで及ぶなど、我が国を取り巻く国際環境の変化が国民の大きな関心事となった。我が国のヒト、モノ、カネ、情報の国際交流は、この20年間に大きく伸び、相互依存関係も進展したが、一方、インバランスも増大し、対外不均衡等の経済問題が深刻になっている。このような問題を解決し、真の相互理解と信頼関係に基づいた国際関係を構築するためにも放送等を活用した情報通信分野における国際交流の推進、国際交流の進展を支える情報通信基盤の整備のための開発途上国への協力、情報通信先進国間の国際協調、そして、我が国がその一員であるアジア・太平洋情報圏との情報交流の一層の活発化方策を積極的に進めていくことが重要である。

 

 

(2)情報通信基盤の発展に向けた協調 に戻る 付表 に進む