平成2年版 通信白書

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第2章 国際交流の進展と情報通信

4 中南米、アフリカ、中近東などに対する協力

 中南米、アフリカ、中近東の国々の経済は、国際価格の変動が激しい第一次産品の輸出に大きく依存しており、そのため経済が不安定で、財政赤字に悩んでいる国が多い。また、不安定な内政、地域紛争等の問題を抱えている国も多い。
 中南米、アフリカ、中近東の国々は、豊富な地下資源を埋蔵し世界経済上重要な役割を担い、国連の場においても議席数を背景として大きな力を持っている。近年、我が国は、これらの国々との相互理解の促進に努めている。
 (中南米・アフリカ等に対する協力の一層の推進)
 中南米、アフリカの国々の電話の普及率は、一様に低い。例えばアフリカ大陸全体の電話機台数は650万台で東京都の電話機台数(690万台)より少ないのが現状である。また、世界の電話機台数を100とするとアフリカ大陸全体でも1.2にすぎない。中南米では、メキシコが1.0、ブラジルが1.5、その他の中南米地域で1.7となっている(第2-2-21図参照)。
 これらの国々の場合、電話機の設置は、ほとんどの国で首都に集中し、地方の電話網等の整備は緒についたばかりである。また、設置されている設備も老朽化が進んでいる。
 日本から中南米・アフリカに向けた国際電話についてみると、現在のところ国際自動ダイヤル通話が不可能である国・対地がまだ多い。また国際自動ダイヤル通話が可能とされている国・対地であっても、国際自動ダイヤル通話は一様につながりにくく、首都・都市部を離れた地域にかける場合はオペレータを介する必要のある国が多い。
 一方、中近東については、一部の地域を除けば、国際自動ダイヤル通話は可能となっており、また、中近東諸国には、資金の面で余裕のある産油国が多いことから、国土の大部分が砂漠であるという地理的に苛酷な条件下にあるにもかかわらず、通信網の整備が進展しており、都市間の電話の疎通状況は概して良好である(第2-2-22表参照)。
 中南米・アフリカの国々は、中近東産油国と比べて電話通信設備等の整備が遅れているが、先に挙げた経済・社会的要因の他、密林、山岳、砂漠等の苛酷な自然環境が人々の住む地域を分断し地域間の通信を技術的に極めて困難にしていること、また、人口分布が稀薄なため通信サービスの採算性が低いことが、電話の普及を阻んでいる。
 近年、中南米・アフリカ等の国々においても、電気通信が社会・経済開発に果たす役割の重要性が認識され始め、電気通信の整備のために先進国に対して協力を求めてきている。
 我が国のこれらの地域への情報通信分野における協力は、日本の持つ高度な通信技術を駆使し、苛酷な自然環境に耐え、稀薄な人口分布に対応できる廉価な通信システム(ルーラル通信)を構築することである。
 郵政省ではこれらの地域に対して協力を進めているところであり、中でも、アフリカ(サハラ以南)地域は、世界の後発開発途上国(LLDC)42か国のうち28か国を占める世界的にも最も先進国からの支援を必要としている地域であることから、2年度に、同地域に対する適切な情報通信システムのモデルを設計し、その実現に向けてのプログラムを提示するために、「アフリカ電気通信網整備促進に関する調査研究」を実施することとしている。2年12月に、国際電気通信連合(ITU)においては、ジンバブエでアフリカテレコム90を計画しているが、郵政省は、同調査研究の一環としてこれに歩調を合わせ、同地域の情報通信設備の整備促進のためのセミナーの開催を計画している。
 また、移転された技術を有効に利用するための人的な動向についてみると、通信、放送、郵便の分野で、中南米・アフリカ・中近東諸国へ昭和55年度以来1330名の(プロジェクト方式技術協力の専門家を含む。)の専門家の派遣(JICAベースのみ)、昭和55年度以来、(財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)を通じて201名の海外派遣専門家の養成等が実施されている。
 郵政省は中南米・アフリカ等の地域に対する情報通信分野の協力に積極的に取り組んでいく予定である。
 東欧諸国は最近市場経済の導入による民主化を進めており、西側諸国は民主化を支援する観点から東欧諸国に対して積極的な協力を行うことにしている。
 我が国についても、先般、海部総理大臣が東欧諸国を歴訪したが、郵政省でも2年3月、通信・放送東欧調査団をポーランド、ハンガリー及びユーゴスラビアに派遣し、通信・放送の実態調査を行ったところである。
 通信・放送東欧調査団の報告によると、3か国の電話の普及率は、100人あたり12〜30台と開発途上国に比べると普及しているものの、電気通信設備は、全般的に老朽化が著しく進行しており、既存通信ネットワークは、雑音、漏話などが多く回線品質上問題が多い。また、設備の老朽化及び設備容量の関係から電話を申し込んでから取り付けられるまで5年もかかる等の問題を抱えている。交換機は、既に日本では使用されなくなったステップバイステップ方式のものが主流である。国際通信に至っては、ほとんどが手動式であり、電話を申し込んでからかかるまで数時間もまたされることも珍しくない状況であることが判明した。
 東欧諸国が市場経済を円滑に導入し、経済・社会の活性化を促進するためには、国内・国際両分野における情報交流を円滑に行えるような電気通信設備の近代化が必要であり、我が国としては東欧諸国に対して、あらゆる機会をとらえて支援する必要がある。

第2-2-21図 電話機分布地図

第2-2-22表 電話回線の首都への集中状況(1)

第2-2-22表 電話回線の首都への集中状況(2)

 

 

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