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第1章 平成元年通信の現況(4)地球環境保全への取組地球環境問題については、元年7月のアルシュ・サミットにおいても 大きく取り上げられ、地球環境の保全のための断固たる行動が必要であ るという基本認識で合意するとともに、各国に対し、必要な技術の開発 並びに地球的規模の環境の観測及び監視の機化が要請されている。我が国では地球環境保全に関する関係閣僚会議において元年6月、地 球環境保全施策等の基本的な方向について申合せがなされ、その中で観 測・監視については、広域的な大気、海洋、生態系等の観測及び人工衛 星による全地球的な環境監視の分野で積極的に貢献することとされた。 また、10月には「地球環境保全に関する調査研究、観測・監視及び技術 開発の総合的な推進について」が申し合わされ、各年度、政府全体の総 合推進計画を策定し、関係各省庁はこれに基づき施策を推進することと なった。 このように、地球環境保全のためには、環境の現状と今後の推移を正 確に観測、把握して対策を講じる必要があるが、地球規模の環境観測に ついては、衛星等を利用して行う電波等によるリモートセンシングが有 効かつ効率的な手段の一つである。また、地球環境情報の国際的、学際 的な相互利用の促進が重要となる。 このため、郵政省では、「地球環境保全における電波利用と情報通信に 関する懇談会」を元年9月に開催し、調査研究を進めており、第1段階 の取りまとめを行ったところであるが、今後は、関係閣僚会議の申合せ を踏まえ、リモートセンシングの分野での豊富な経験と実績を有する通 信総合研究所を中心に、以下のような研究開発を積極的に推進するとと もに、世界各国で観測された地球環境情報を効率的に収集、蓄積、処理、 提供、交換するための国際環境情報ネットワークの構築にむけて、関係 各省庁、各機関と協力し、必要な検討を行うこととしている。 (熱帯降雨の観測) 熱帯降雨は、地球全体の約3/2の量を占め、豪雨・洪水等により 多数の被害をもたらすとともに、エルニーニョ等で代表される熱帯地域 の数年規模の気候変動の原因となっているが、これを地球的規模で効率 的に把握するため、日米共同プロジェクトとして推進している熱帯降雨 観測ミッション(TRMM)の一環として、衛星搭載用降雨レーダの研 究を推進している。 (大気中の微量ガスの観測) 現在、国際的に特に対策が急がれているオゾン層の破壊、地球温暖化 問題解明のため、オゾンをはじめとする大気中の微量ガス成分を高精度 に観測する「短波長ミリ波帯電磁波による地球環境計測技術の研究」を 推進している。 (太陽活動の観測) 地球環境の変化の正確な推移の把握には、地球系全体のエネルギ一収 支を正確に観測する必要があり、そのためには、太陽活動や地球の高層 の状態を観測する必要がある。 そこで、コンピュータ通信を利用して世界各国の観測データを収集し、 太陽及び太陽地球間の正確な環境測定とその予報のための「宇宙天気予 報システム」の研究開発を推進している。
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