平成2年版 通信白書

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第2章 国際交流の進展と情報通信

(1)情報通信基盤の充実のための我が国の対応

 ア 国際機関を通じた対応
 情報通信分野における国際間の協力や通信方式の国際標準化を進めるため、国際電気通信連合(ITU)等情報通信を専門的に取り扱う国際機関の場において、様々な問題の解決が図られ、国際交流の促進に貢献してきている(第2-2-1図及び第2-2-2表参照)。
 我が国は、国際機関の場を通じて、諸外国と協力しながら世界的な情報通信の発展のために積極的な貢献を行っている。
 主な国際機関の最近の動きは、次のとおりである。
 ITUについては、国際無線通信諮問委員会(CCIR)の最終会議(SG11)が、1989年10月に開催され、HDTV番組制作規格の勧告案等についての審議が行われた。
 インテルサットにおいては、第15回通常締約国総会が、1989年10月に開催され、オライオン・システムに見られるような大規模な大洋横断型の非インテルサット系システムの参入に関して、非インテルサット系システム認定のためのガイドラインの作成について審議が行われた。
 インマルサットについては、臨時総会が、1989年1月に開催され、インマルサットが陸上移動衛星通信も提供できるよう条約及び運用協定が改正され、この条約改正の発効により、1989年10月より業務の提供が可能となった航空衛星通信とともに、陸海空すべての移動衛星通信業務の提供が可能となる。
 また、UPUの第20回大会議が、1989年11月に開催され、国際郵便の品質改善・サービスの向上を図るための多くの議案が採択された。
 イ 開発途上国への協力
 現在、先進国と開発途上国間には、情報通信基盤の整備について著しい格差が存在している。円滑なコミュニケーションを行うためには、送受信双方で同レベルの情報通信施設が確保されることが必要であり、国際通信のための基盤の整備と並んで各国の国内通信基盤の整備が重要である。
 また、情報通信基盤の整備は、開発途上国の社会・経済の発展のための基盤として不可欠なものであり、その整備・拡充は、開発途上国にとって重要な課題となっている。
 我が国は、優れた技術力と経済力を有しており、開発途上国から我が国の協力について期待が寄せられている。郵政省としては、アジア・太平洋地域の一員としての立場から、同地域への協力を中心に、情報通信分野における国際協力を今後更に積極的に推進していくこととしている。
 また、昨年秋以来、民主化が進められている東欧諸国にとっても、今後、市場経済の導入により経済発展を図っていく上で、国内の情報通信基盤を早急に整備していくことが必要となっており、この分野への我が国の協力に期待が寄せられている。我が国としても、東欧諸国の民主化と経済発展を支援するため、欧米諸国と連携を取りつつ、東欧諸国に対して国際協力を積極的に行っていくことが、今後の重要な課題となっている。
 政府ベースの国際協力である政府開発援助(ODA)には、資金協力及び技術協力からなる二国間協力と国際機関への出資・拠出等の多国間協力とがあり、その概略は第2-2-3表のとおりである。
 二国間の資金協力には、無償資金協力(返済義務を課さない資金供与)と有償資金協力(円借款:資金を長期・低利で融資するもの)がある(第2-2-4図参照)。
 二国間の技術協力は、開発途上国に対して、技術の普及又は技術水準の向上を目的として実施するものであり、主に人的交流、技術移転の側面を持つ。政府ベースの技術協力は、主として国際協力事業団(JICA)を通じて実施されている。
 国際機関を通じた技術協力としては、APT、ITU等の要請に応じ、専門家の派遣、各種セミナーへの寄与、研修員の受入れ等を行っており、加盟開発途上国の技術水準の向上に貢献している。
 ウ 先進諸国との協調
 情報通信分野の世界的な発展のためには、日本、米国、カナダ及び西欧諸国といった情報通信分野の先進国が協調して政策の推進や諸問題の解決に当たっていく必要がある。我が国は、これらの先進諸国と二国間定期政策協議を開催するなど、機会をとらえて意見交換、情報交換を行っており、協調関係の構築に努めている。
 また、情報通信は、社会・経済の基盤としての重要性に加えて、一つの有望な産業分野として、社会・経済発展の原動力となってきたため、OECD等の場において、情報通信サービスの円滑な越境取引きを実現するための方策の検討が行われるなど、多国間協議の場において、先進諸国間による情報通信分野の社会的・経済的側面からの政策調整等が図られている。
 エ 民間レベルでの対応
 情報通信分野では、政府間の国際協調・協力のほかにも、民間、学界等を含めた幅広いレベルでの交流が数多く行われており、例えば、NTTやKDDは、海外の電気通信事業体との間で技術協力等の面からヒトの交流を進めてきている。
 このほか、各国を代表する機関により構成される国際標準機関である国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)、アジア・太平洋諸国の放送機関による国際組織であるアジア・太平洋放送連合(ABU)等の非政府機関も、活発な活動を行っている。
 郵政省は、これらの民間ベースの活動に対しても積極的な支援・参画を行っているところである。一例として、太平洋地域における電気通信分野の協力の推進、学術研究の促進・発達の場の提供を目的として1980年に設立された太平洋電気通信協議会(PTC・本部は米国ハワイ州ホノルル)に対して、設立当初から積極的に支援している。

第2-2-1図 情報通信に関連する国際機関等の枠組み

ITU全権委員会議

第2-2-2表 情報通信に関連する国際機関の概要(1)

第2-2-2表 情報通信に関連する国際機関の概要(2)

第2-2-3表 情報通信分野における政府開発援助(ODA)の分類

第2-2-4図 資金協力に占める通信分野の割合の推移

 

 

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