平成2年版 通信白書

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第2章 国際交流の進展と情報通信

(2)各国の国内情報通信基盤における地域的な偏在と国際交流

 今後、我が国が国際交流を進展させるためには、我が国だけではなく、 交流を行う相手国の国内情報通信基盤の整備も必要である。
 昭和60年末における世界全体の加入電話契約数は、約3億6千万契約 となっており、人口1千人当たり75契約と、我が国の約5分の1の普及 状況となっている。
 地域別に見ると、人口では世界の約20%を占めるにすぎないヨーロッ パ及び北米が加入電話契約数では、世界の約70%を占めている(第2- 1-25図参照)。さらに1千人当たりの普及状況で見ると、最も普及して いる北米は最も普及の遅れているアフリカの約27倍と、各国の国内電気 通信ネットワークは地域により大きな格差がある。
 昭和45年からの1千人当たりの加入電話の普及状況の推移を地域別 に見たのが第2-1-26図である。
 15年前に比べ、アジアは2.8倍、ヨーロッパは2.7倍と、世界平均の伸 び(1.8倍)を大きく上回っており、これらの地域での国内電気通信ネッ トワークの整備が進んできていることを示している。一方、北米の伸び (15年前の1.4倍)は低いが、これは、1千人当たり約450契約と、ほぼ各 家庭に電話が行き渡ったことが大きな要因である。
 さらに、ヨーロッパ、北米、オセアニア及びアジアの一部の先進諸国 では、ISDNの導入を積極的に進めており、地域による格差は量的の みならず、質的にも生じてきている。
 また、テレビジョン受信機の昭和61年末における1千人当たりの普及状 況を見ると、最も普及の進んでいる北米は最も普及の遅れているアフリ カの約31倍となっており、マス・メディアである放送においても地域間 格差が顕著である(第2-1-27図参照)。
 既に見た情報の国際交流の進展状況と情報通信基盤との関係を見る と、北米、ヨーロッパ、アジアなど我が国と情報の国際交流の盛んな地 域は、国内の情報通信基盤が整備されているか、あるいは現在急速に整 備されてきている地域である。一方、情報通信基盤の整備が遅れている 中南米及びアフリカとは、交流量が全体的に少なく、あまり進展もして いない地域であり、各国の情報通信基盤の地域間格差は、情報における 国際交流の地域的偏在を生む要因となっている。
 このように、我が国が世界各国との情報の交流を盛んにしていくため には、国内の情報通信基盤の整備はもとより、国際間の情報通信基盤の 整備とともに、交流相手国の国内情報通信基盤の整備が不可欠である。
 また、情報通信基盤の整備は、文化、習慣等の情報交流を促進させる と同時に、ヒト、モノ、カネに関する情報交流の進展を通じ、ヒト、モ ノ、カネの国際交流をも進展させる。 既にふれたように、国際金融市場の24時間為替取引きを可能としたの は国際専用線ネットワークである。
 国境を越えたテレビ電波を通じ、西側の豊かさを国民が知り得たこと が、東欧の民主化の動きに大きな影響を与えたことは記憶に新しい。誰 もが予期しえなかった東西ドイツの統一問題もスケジュールに挙がって いる。このようにダイナミックに展開された運動の背景には、高度な情 報通信技術に支えられた活発な情報交流があった。 また、情報通信ネットワークは、世界各都市の航空会社の支店から即 座に世界の航空会社の座席予約を行うことを可能にし、ヒトの交流を支 えている。海外旅行者の旅行先での代金決済等のシステムを支えている のは世界100か国以上を結ぶカード会社の情報通信ネットワークである。
 このように、情報通信基盤の整備は、情報の交流はもとより、ヒト、 モノ、カネの交流をも含め、あらゆる国際交流を支えている。今後、我 が国を含め、全世界的に国際交流を進展させ、相互理解と信頼関係を構 築していくためには、全世界的に情報通信基盤を整備していくことが重 要であり、我が国は情報通信分野における国際協力、国際協調等に積極 的に取り組み、その責任を果たしていかねばならない。
 第2節では、国際交流促進に向けての情報通信分野における我が国の 対応について見ることとする。

第2-1-25図 昭和60年における地域別加入電話契約数及び人口の構成比

第2-1-26図 地域別加入電話普及率の推移

第2-1-27図 地域別テレビジョン受信機普及率の推移

 

 

第2章第1節2(1)国際交流の進展と我が国の情報通信基盤 に戻る 第2章第2節 国際交流促進に向けての情報通信分野における我が国の対応 に進む