平成2年版 通信白書

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第2章 国際交流の進展と情報通信

(2)アジア・太平洋情報圏に対する我が国の対応

 ア 通信・放送分野の国際交流アジア・太平洋地域における通信・放送分野の国際交流として、放送番組の交流、通信・放送分野における国際会議等が行われている。
 (ア) テレビ放送番組交流
 放送番組交流は大別するとドラマ、ドキュメンタリーアニメーション等の教養・娯楽番組の交流とニュース番組の交流とに分けられる。
 (教養・娯楽番組の交流)
 アジア諸国への番組提供及びアジア諸国からの番組受入れの実績は、番組の提供、受入れとも年々増加しているが、1986年から1988年の間に東京のテレビジョン放送事業者5社が提供した番組数は362本、受け入れた番組数は37本と、我が国からの大きな出超となっている。
 また、NHKの番組国際交流状況をみると、世界に対するアジア地域向け番組の提供と受入れの比率は、1978年は提供が20.6%、受入れはないが、1988年は提供が33.6%、受入れが16.1%となっており、提供、受入れとも交流量を増やしている。
 (ニュース番組の交流)
 ニュース番組の交流システムとして、ABU(アジア太平洋放送連合)の運営するニュース交換システムであるアジアビジョンがある。
 主に通信衛星(インテルサット)を用いて、各国の放送事業者が毎日一定時間ニュースを送出し、受信した放送事業者は必要に応じて利用するというものである。ABU加盟機関のうち14か国15機関が参加している。
 アジアビジョン以外では、NHKが英語ニュース番組「TODAY′SJAPAN」を米国、カナダ、タイに対して提供しているほか、放送事業者間の個別のニュース交換も行われている。
 (イ) 国際会議、フォーラム等による交流
 アジア・太平洋地域の経済的発展と交流の増加に伴い、地域内に生ずる諸問題を調整・解決するため、従来の地域国際機関によるほか、近年、政府間、民間を問わず多くの国際会議、フォーラム等が開催されている。(アジア・太平洋経済協力閣僚会議の開催)
 1989年11月、オーストラリアのキャンベラで第1回アジア・太平洋経済協力閣僚会議(APEC)が開催された。
 同会議には、アジア・太平洋地域の12か国(日本、アセアン6か国、韓国、米国、カナダ、オーストラリア及びニュー・ジーランド)から外務大臣、貿易・産業大臣等が出席して同地域の経済協力の在り方等について討議がなされた。
 この会議では、通信については日本及び米国の代表から「域内経済の発展にとって通信等のインフラストラクチャーの整備は不可欠である」との発言がなされ、この分野での協力の重要性が指摘・確認されたほか、技術移転及び人材育成等について討議を行っていくこととなった。
 (アジア放送交流促進フォーラムの開催)
 1989年11月、東京においてアジア放送交流促進フォーラムが郵政省、外務省及びアジア近隣諸国放送番組交流促進協議会の共催により、日本、韓国、アセアン6か国の放送関係省庁及び放送事業者等の参加を得て開催された。
 同フォーラムでは、「21世紀に向けたアジア地域における放送分野の国際協調」をテーマに放送番組の提供、受入れ及び共同制作といった放送番組の国際交流について討議が行われた。討議では、放送番組の国際交流が、アジア地域の放送の発展と各国間の相互理解の促進のために重要であるとの認識で一致し、現在、アジア地域において、放送番組の流れに不均衡が存在するが、こうした流れは拡大的に均衡させていくことが重要であること、番組交流に際しては、受入れ国側の文化や習慣、国民感情、さらには政治的・社会的な特殊事情になお一層の注意を払うべきことなど放送番組の交流の促進のため、今後さらに各国間の協力を強化していくことが確認された。各国間の協力の課題は以下のとおりである。
[1] 放送関係機関の国際交流の活性化
[2] 番組交流促進のための体制・機構の整備
[3] 国際的な共同制作の推進
[4] 番組交流の阻害要因の克服
 なお、本フォーラムは継続開催されることになっている。
 (コミュニケーション・フォーラムの後援)
 1990年3月、シンガポールにおいて(財)情報通信学会、国連大学及びAMICとの共催によるコミュニケーション・フォーラムが開催された。日本及び開催地のシンガポールを初め10か国が参加して、電気通信、情報処理及びマスコミの三分野の専門家により国際コミュニケーションにおけるバランスとインバランスについて討議が行われ、今後とも毎年継続してフォーラムを開催し、専門家の交流と問題の解決に努力することで合意した。
 イ 通信分野における国際協力
 我が国では、開発途上国の自助努力を支援し、その経済・社会の発展及び国民福祉の向上と安定に寄与するため、開発途上国に対して、技術面・資金面の協力を行っている。以下では、我が国が通信分野で行っているアジア・太平洋地域への国際協力について述べる。
 (ア)技術協力の現状
 (研修員の受入れ及び専門家の派遣等)
 1989年度はデジタル交換技術コースや衛星通信技術コースなど32のコースに研修員503人を受け入れ、データ通信技術や電波監視技術等の専門家137人を開発途上国に派遣したが、そのうちアジア・太平洋地域から受け入れた研修員は233人、派遣した専門家は61人であった。1980年度から1989年度までの研修員の受入人数と専門家の派遣人数の推移を示したのが第2-2-13図である。
 それによると、過去10年間にアジア・太平洋地域からの研修員の受入人数は約3割増加したが、専門家の派遣人数はほとんど変化していない。
 研修員の受入れ、専門家の派遣、機材の供与等を総合的に行うプロジェクト方式の技術協力については1988年4月から5年計画で協力を開始したタイの「モンクット王工科大学ラカバン拡充プロジェクト」等、現在9件を実施している。
 (開発調査団の派遣)
 1989年度は10件延べ121人を8か国に派遣した。1985年度から5年間に延べ46件、581人を派遣した。
 (イ)資金協力の現状
 1989年度の通信分野の資金協力は、有償資金協力(円借款)としては、5件について654億8干3百万円、無償資金協力としては、10件について120億3百万円であった。そのうち同地域に対する有償資金協力は、タイの「電話網拡充事業(地方ケーブル網)」等2件、370億7干万円、無償資金協力はパキスタンの「教育テレビチャンネル設立計画(テレビセンタービルの建設、放送関連機材及び地上再送信設備を供与する)」等4件、72億3千4百万円で、円借款の56.6%、無償資金協力の60.3%を占めている。
 1980年度から1989年度までの資金協力額の推移をみたのが、第2-2-14図である。総額及びアジア・太平洋地域の額ともに増加傾向にあるが、伸びはアジア・太平洋地域の方が大きい。1980年度から1982年度まではアジア・太平洋地域の協力額は、ほかの地域も含めた全資金協力額の5割以下であったが、1983年度以降はほぼ6割から9割を占めており、同地域との密接な協力関係を示している。
 また、第2-2-15図は、1989年度までにアジア・太平洋地域に対し実施された資金協力額の国別内訳を円借款、無償資金協力別に示したものである。アセアン諸国を含む東アジアでは円借款が多く、南西アジア及び南太平洋島しょ国は無償資金援助が多くなっている。
 アジア・太平洋情報圏におけるヒト、モノ、カネ、情報の我が国との交流は順調に進展しているが、これまでみたように、同情報圏の情報通信基盤の整備に関しては、各国の間で通信・放送ネットワークに依然として大きな格差があること、それぞれの国の中においても基盤の整備は大都市に限られており、地方都市、農村等においては大きく遅れていることなど様々な問題を抱えている。

第2-2-13図 研修員の受入れ及び専門家の派遣人数推移

第2-2-14図 通信分野の資金協力額の推移

第2-2-15図 アジア・太平洋情報圏向け資金協力額国別内訳

 

 

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