平成2年版 通信白書

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第2章 国際交流の進展と情報通信

(3)放送等による交流の推進

 我が国は、相互理解と信頼関係を促進させるために情報通信分野においても国際放送の充実、放送番組の国際交流等による交流を積極的に行ってきているが、まだ十分とはいえない状況にあり、今後、より一層の充実が求められている。
 そのための課題として、次の点が挙げられる。
 ア 国際放送の一層の充実
 今後、我が国が、諸外国との間で相互理解と信頼関係の促進を図っていくためには、諸外国の国民が直接聴取できる国際放送の一層の充実が大きな課題である。
 我が国は、元年度、全世界に向け、21言語により、1日延べ43時間、短波による国際放送を行っているが、我が国の国際放送は、欧米諸国と比較し、放送時間、放送体制等においてまだ不十分である。
 今後、国際放送の充実のためには、従来から行っている送信設備の充実・強化、海外中継局の拡充といった方策のほか、放送メディアの多様化、例えば、海外におけるFMやCATVなど短波以外のメディアによる中継放送の実施や周回衛星を利用した国際放送の実施などについて検討を行っていく必要がある。また、映像が中心となりつつある時代の中にあっては、映像メディアにより国際放送を実施する方策についても検討していく必要がある。なお、そのため必要となる資金の確保等についても併せて検討を行っていくことが必要である。
 イ 放送番組の国際交流の促進
 映像による国際交流は国際間の相互理解を進展させる上で、有効な手段であり、テレビジョン放送番組を中心とした国際番組交流の促進は大きな課題となっている。
 我が国と諸外国との間では、テレビジョン放送番組を中心として番組交流が行われているが、NHKの番組交流状況等を見ても、我が国と欧米諸国との間では、我が国の圧倒的な入超であるといった状況にあるが、一方、アジアとの番組交流については、我が国の受入れが少ない状況にある。
 我が国と諸外国との番組交流に当たっては、著作権処理の問題、外国向けに番組を改編する作業とコストの負担、各国の国内番組基準の相違への対応など解決しなければならない問題があり、今後、番組交流を進展させていくためには、これらの問題を解決していくことが必要である。
 また、アジアからの受入れが少ない理由としては、相手国側の番組制作能力の不足等があることから、我が国の放送機関との番組の共同制作や技術協力を通じて、アジア諸国の技術レベルの向上を図ること等により、我が国とアジア諸国との番組交流を促進させることが期待されている。
 ウ データベースの充実による交流の推進
 我が国が、諸外国との間で情報交流を活発にするためには、相互が容易に検索できるデータベースの充実が重要である。
 現在、我が国のデータベースは日本語で登録されているものがほとんどであり、諸外国からの検索が難しい状況にある。
 従って、我が国のデータベースについては英語でも作成するとともに、海外からのアクセスを容易にするため、各種の国内のデータベースとの接続を可能とする機能を持つクリアリング・ハウスの構築が必要である。
 なお、学術情報については、世界各国ができる限リデータベース化し、世界各国が自由に検索できるようにすることが開発途上国への円滑な技術移転と世界的な技術レベルの向上を図る上で有効である。
 エ 自動翻訳電話の開発
 国際交流を進展させていく上で、外国語の習熟が一つの重要な要件であるが、我が国の言語の孤立性は日本人による外国語の習得や外国人の日本語の習得を困難にしており、それが、我が国の国際交流を進展させていく上で、大きな障害となっている。今後、国際交流を進展させていくためには、我が国の言語と諸外国の言語を自動翻訳できるシステムを確立していくことが重要である。
 特に、諸外国との最も基本的な情報通信基盤である国際電話において、電話における会話の内容を双方の国の言語に自動的に翻訳する「自動翻訳電話システム」を構築することは、国際交流を進展させる上で非常に有効であり、現在、(株)エイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所を中心として、自動翻訳電話システムの開発に取り組んでいるところである。
 オ 情報通信技術に関する交流の促進
 我が国に対しては、情報通信分野の研究開発における国際的貢献が求められており、現在、開発途上国との間では研究開発力の向上を図るために、先進国との間では研究開発の相互啓発のために、情報通信技術に関する交流を促進させることが課題となっている。
 諸外国から我が国へ来る研究者は諸外国へ行く研究者に比べ極端に少ないことから、住居の問題、子弟の教育問題等を解決し、諸外国の研究者が長期にわたって安心して共同研究を行える環境を整備する必要がある。また、情報通信に関する国際的な研究集会を積極的に開催することも発表の場を提供し、情報交換を活発にさせることになり、情報通信技術に関する交流の推進に役立つことになる。

国際放送の模様

放送番組の国際交流

 

 

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