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第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第3節 ICTの新たな潮流

(2)デジタル・プラットフォーマーの現状と動向

ア GAFA・BATの事業構造はどのようなものか

一般に、利用者の視点からは、例えばGoogleは検索サービス、FacebookはSNSを中心として様々なサービスを提供するデジタル・プラットフォーマーとして認識されているだろう。他方、これらのサービスは無料で提供されており、売上高や利益を直接生んでいるものではない。売上高・利益からみると、GAFAやBATの事業構造には別の側面が見えてくる。この点を整理したものが図表1-3-1-5である。

図表1-3-1-5 売上高・利益からみたGAFA・BATの事業領域
(出典)総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」各社決算資料を基に作成

より具体的に、GAFAとBATの売上高の内訳を示したものが、図表1-3-1-6である。このように、あくまでも売上高からみると、それぞれの主力事業は、Google、Facebook、バイドゥについては広告、Amazonとアリババについては電子商取引、Appleについてはハードウェアの製造・販売、テンセントについてはサービス(コンテンツを含む。)となっており、GAFAやBATと総称されるものの、事業構造は異なっていることが分かる。

また、これら企業は積極的に新事業に進出する等、一般的に多角的な事業を行っているとの印象を持たれているが、売上高で見る限り、少なくとも現時点では特定の事業に頼る構造となっていることが分かる。

ここでは、デジタル・プラットフォーマーのうち、特に注目を集めているGAFAとBATについて、その現状や動向について主なものを整理する。

なお、利益の事業別の内訳については、7社のうち公表しているのはAmazonとアリババのみであるため、図表1-3-1-6では、他社についてはあくまでも推測である。公表しているAmazonをみると、売上高では約1割を占めるにとどまるクラウドサービス(AWS)が、営業利益においては約6割を占めているといった特徴がある。

図表1-3-1-6 GAFA・BATの売上高の内訳(2018年)
(出典)総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」各社決算資料を基に作成

GAFAとBATの売上高と営業利益の推移は、図表1-3-1-7のとおりである。売上高でみると、Apple、Amazon、Googleの順となっている。他方、営業利益でみると、Apple、Google、Facebookの順となっている。売上高・営業利益ともに、2017年から2018年にかけてAmazonの成長率が高い。

図表1-3-1-7 GAFA・BATの売上高と営業利益の推移
(出典)総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」各社決算資料を基に作成

売上高営業利益率の推移は図表1-3-1-8のとおりであり、2018年でみると、Facebook、テンセント、Appleの順となっている。前述のとおり売上高・営業利益の成長率が高いAmazonは、売上高営業利益率では7社のうち唯一の一桁台となっている。

図表1-3-1-8 GAFA・BATの売上高営業利益率の推移
(出典)総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」各社決算資料を基に作成

GAFAとBATの貸借対照表の構造を示したものが図表1-3-1-9である。Amazon、Apple、テンセント以外の4社は、資産に占める純資産の割合が極めて高いものとなっている。これは、現状では利益率が高いとはいえないAmazonや、既に配当を出すステージに入っているAppleとテンセントを除くと、各社において毎年の利益が内部留保として積み上がり、M&Aの原資等としている状態にあるといえる。

図表1-3-1-9 GAFA・BATの貸借対照表の構造
(出典)総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」各社決算資料を基に作成
イ BATとはどのような存在か

OECD(2019)は、各国の政策当局の関心がGAFAに寄せられている中で、BATを始めとする中国のデジタル・プラットフォーマーに対しても注目することの重要性を指摘している。その上で、中国やBATについて、次のような分析・評価を行っている。

まず、中国における保護主義的な政策を指摘している。具体的には、ブロッキングにより、Facebook、Google検索、YouTube、Instagram、Twitter、Twitch(Amazonのゲーム配信プラットフォーム)へのアクセスが認められていないほか、中国で事業を行う際にはしばしば中国企業との提携を求められるとしている。また、提携相手の中国企業との技術のシェアを強いられ、この中国企業がリバース・エンジニアリングにより同じ商品を作り、競合に至るケースがあることを指摘している。更に、中国での事業を認められた企業の中には、VPNの使用制限や中国のインフラのみの使用等、インターネットのオープン性を損なう中国の規制の運用への寄与を義務付けられている点にも触れている11。その上で、中国企業はOECD加盟国の事業展開が認められていることに照らした不均衡への対応という論点を指摘している。

その一方で、BATが西洋のプラットフォームの模倣であるというイメージを数年前には払拭し、今では多くの点で海外の同種のサービスの先を行っていると評価している。具体的には、イノベーションと統合性に着目している。例えば、バイドゥはGoogleの検索エンジンの中国版であったのが、音声・画像を含めた検索の能力を向上させていることに加え、総合的なコンテンツプラットフォームの百家号(Baijiahao)のような他の国では同等のものがないと思われるサービス12をも生み出していることを指摘している。また、テンセントの提供するSNSプラットフォームであるWeChatは、人々が望むことを何でもモバイル端末で行うことができ、それで一日中過ごせるという「WeChatライフスタイル」ともいうべきものを創り上げているとしている。このほか、アリババのマーケットプレイスでは、2016年の「独身の日」(11月11日)の一日のみで178億ドルの取引が行われ、これはスペインにおける2016年の1年間の電子商取引の売上げに相当するといった規模面についても注目している。

OECD(2019)はまた、BATは現時点では中国国内を主な市場としているとしつつ、その海外展開についても言及している。例えば、テンセントはモバイル決済サービスのWeChatペイを中国外で25か国に展開しているが、これは準備的な位置付けに過ぎず、世界で最大の旅行者層となっている中国からの海外旅行者の財力を生かしてWeChatペイの導入を進めていくだろうとしている。そして、その次の段階として、中国人ではない利用者の拡大を目指していくという道筋を示している(図表1-3-1-10)。

図表1-3-1-10 OECD(2019)によるWeChatペイの海外展開の道筋
(出典)OECD(2019)を基に作成


11 OECD(2019)では、インドにおける電子商取引に関する外資規制等の保護主義についても触れている。

12 百家号の特にイノベーティブな点として、記事、本、アルバム、ビデオ、ライブ配信、AR・VR等の多くのフォーマットに対応しつつ、個人・法人・コンテンツ事業者といった様々な主体が情報を発信してファンを集めることができることを挙げている。

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