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第2部 基本データと政策動向
第7節 ICT研究開発の推進

(2)未来ICT基盤技術

ア 超高周波ICT技術に関する研究開発

総務省及びNICTでは、ミリ波、テラヘルツ波等の未開拓の超高周波帯を用いて、新しい超高速無線通信方式や、センシングシステムの実現を目指した基盤技術の研究開発を実施している。2018年度(平成30年度)は、超高周波領域での通信・計測システムにおいて基準信号を精度よく生成するために必要な高安定光源の研究開発において重要となる、非常に鋭い共振特性を持った共振器の実現に向けて、導波路の微細加工技術の改良によって、低損失化を進め、従来比2倍となる約2×105の共振器内部Q値を達成した。さらに300GHz帯での送信と受信の機能を1つのシリコンチップに統合したワンチップトランシーバの開発に成功し、毎秒80ギガビットの伝送速度を実現した7

イ 量子ICT技術に関する研究開発

NICTでは、計算機では解読不可能な量子暗号技術や、微弱な光信号から情報を取り出す量子信号処理に基づく量子通信技術の研究開発を実施している。 2018年度(平成30年度)は、量子暗号を将来的に既存の光ネットワークに導入していくための取組として、1つの光ファイバー中で量子暗号と光通信を多重化する技術の開発に取り組み、連続量方式量子暗号と100波多重18.3Tbpsの超高速光通信の波長多重同時伝送に成功した。量子通信技術についても、2018年度(平成30年度)は、前年度までに光空間通信テストベッドに実装した物理レイヤ秘密鍵共有システム(信号変調速度10MHz)の高速化に向けて、信号変調速度1GHzの送受信システムを開発し、その基本動作実証に成功した(図表4-7-6-1)。

図表4-7-6-1 量子通信技術と量子暗号技術のイメージ
ウ ナノICT技術に関する研究開発

NICTでは、ナノメートルサイズの微細構造技術と新規材料により、光変調・スイッチングデバイスや光子検出器等の性能を向上させる研究開発を実施している。2018年度(平成30年度)は、スロット底部の高抵抗化プロセスと界面制御による電荷注入抑制技術を用いることにより、小型超高速光変調器の変調動作確認に成功した。また、狭ピッチ光フェーズドアレイを設計・試作し、最大偏向角22.5度、100kHz高速動作を実証した。超伝導単一光子検出器(SSPD)の大規模SSPDアレイの実現に向けて、SFQ極低温信号処理による64ピクセルSSPDアレイの機械式冷凍機中での完全動作を世界で初めて実証し、光子計数感度を持つイメージングセンサの実現に向けて大きく前進した。

エ 脳ICT技術に関する研究開発

NICTでは、人の認知、行動等の機能解明を通じて、高齢者や障害者の能力回復、健常者の能力向上、脳科学に基づいた製品、サービス等の新しい評価方法の構築等に貢献する脳型情報処理技術、高精度な脳活動計測や脳情報に係るデータの統合・共有・分析を実現する技術等を研究開発している。

2018年度(平成30年度)は、脳型情報処理技術では、脳活動データを用いた人工脳モデル構築を介し、MRIによる脳活動計測及び人工脳を用いた予測脳活動からの知覚内容推定を行う技術を開発し、当該技術の技術移転により、商用サービスの広範化に貢献した。更に、英語リスニング時の脳波を解析し、英語習熟度レベルを反映する脳波指標を決定し、脳波を利用した語学力評価の基盤を構築した。また、脳活動計測技術では、特殊な撮像法と画像再構成法を開発し、0.6ミリ角のfMRI計測に世界で初めて成功した。



7 NICTプレスリリース(2019年(平成31年)2月19日):https://www.nict.go.jp/press/2019/02/19-1.html別ウィンドウで開きます

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