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第2部 基本データと政策動向
第6節 ICT利活用の推進

(3)テレワークの推進

テレワークは、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方である。子育て世代やシニア世代、障害のある方も含め、国民一人一人のライフステージや生活スタイルに合った柔軟な働き方を実現するものであり、「働き方改革」の切り札ともいえるものである。また地方にいながら都市部の仕事もでき地域活性化にも寄与するものである。総務省では、テレワーク導入の課題に対応する形で様々な施策を展開している(図表4-6-2-5)。

図表4-6-2-5 テレワーク推進施策の概要

まず、導入の課題として「テレワークに適した課題がない」等があるが、テレワークは特別なものではないという意識の変革や、先進事例の参照等で課題を解決できるよう、また、このような働き方を全国的に普及展開する周知広報施策として、「総務省 働き方改革セミナー −『働く、が変わる』テレワーク−」と題して、企業等を対象としたセミナーを開催している。2018年度(平成30年度)には、全国10か所で各道県と共催で開催した。プログラムは、テレワークの最新動向、労務管理上の留意点、情報セキュリティ上の留意点のほか、テレワーク導入企業の事例紹介などから構成されている。

また、テレワーク導入のICT面での課題としてあげられる、企業等がテレワークを実施する際の情報セキュリティ上の不安を払拭し、安心してテレワークを導入・活用する手引きとなる指針として、「テレワークセキュリティガイドライン」を策定・公表している。2017年度(平成29年度)には、最近の社会や技術の変化(クラウドサービスやSNSの普及等)、新たなセキュリティ上の脅威(無線LANの脆弱性、ランサムウェアや標的型攻撃の登場等)などを踏まえ、本ガイドラインの改定を行い、「テレワークセキュリティガイドライン第4版」として周知を行っている。

さらに、テレワークをこれから導入しようとする企業等に対して、「テレワークマネージャー」として専門家を派遣し、テレワークシステム、情報セキュリティ等、主にICT面でテレワークの導入に関するアドバイスを実施している。2018年度(平成30年度)には計117回の派遣を実施した。併せて、自社内及び他社にテレワークの導入支援ができる専門人材を育成し、テレワークの裾野拡大を図るため、2018年度(平成30年度)には専門的知見を集めたテキストブック更新・公開を行い、講習会を東京で3回、大阪で1回開催した。

企業等にとってテレワーク導入のインセンティブとなるよう、総務省は、2015年度(平成27年度)から、テレワークの導入・活用を進めている企業・団体を「テレワーク先駆者」とし、その中から十分な実績を持つ企業等を「テレワーク先駆者百選」として公表している。また、2016年度(平成28年度)には「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を創設し、「テレワーク先駆者百選」の中から特に優れた取組を表彰している(図表4-6-2-6)。2018年度(平成30年度)の総務大臣賞は初めて中小企業が2社受賞しており、今後中小企業への裾野拡大も期待される。

図表4-6-2-6 テレワーク先駆者百選及び総務大臣表彰の概要

テレワークは、働き方改革の切り札として期待されているとともに、都心部の交通混雑緩和にも寄与するものとして積極的導入が求められている。そこで、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房及び内閣府は、東京都及び関係団体と連携し、2020年(令和2年)までの毎年、東京オリンピックの開会式が予定されている7月24日を「テレワーク・デイ」と位置付け、大会期間中のテレワーク活用による交通混雑緩和と全国的なテレワークの定着を目的とし、企業等による全国一斉のテレワーク実施を呼びかけている(図表4-6-2-7)。

第2回目となった2018年(平成30年)には7月23日から27日の期間中に、7月24日プラスその他の日の合計2日間以上テレワークを実施する「テレワーク・デイズ」として規模を拡大し、参加を呼びかけたところ、1,682団体、延べ30万人以上が参加した。

3年目となる2019年度(令和元年度)は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会前の本番テストとして、7月22日(月)から9月6日(金)の約1ヶ月間を実施期間とする「テレワーク・デイズ2019」として、更に規模を拡大して実施する。

図表4-6-2-7 「テレワーク・デイズ」の概要

2018年(平成30年)のテレワーク・デイズ期間中は、東京23区への通勤者が延べ41万人減少し、エリア別での通勤者減少量は、丸ノ内、豊洲、品川の順となった(図表4-6-2-8)。また、東京メトロ豊洲駅では、朝の通勤ピーク時間帯(8時台)の通勤量が1年前と比べて7.7%の減少となったほか、オフィス費用削減の観点からは事務用紙等の使用量が約14%減少、残業時間が約45%減少するなど、交通混雑の緩和や業務効率化に大きな効果が見られた。

図表4-6-2-8 テレワーク・デイズの主な効果(交通混雑の緩和)
出典:KDDI×コロプラ「Location Trends」

テレワークの普及促進に向けて、政府のみならず産学官一体となった取組も進めている。テレワーク推進フォーラム(総務省、厚生労働省、経済産業省及び国土交通省の呼びかけにより2005年(平成17年)11月に設立された産学官のテレワーク推進団体)では、2015年(平成27年)から11月を「テレワーク月間」として、テレワークの普及促進に向けた広報等を集中的に実施している。

2018年度(平成30年度)のテレワーク月間においては、周知ポスター(図表4-6-2-9)やPR動画を作成し、公共交通機関やイベント会場等でPR活動を行った。

図表4-6-2-9 テレワーク月間の周知ポスター

テレワーク月間サイトに登録された活動数は1,506件となり、2017年度(平成29年度)(821件)から約1.8倍増加した。

テレワーク月間中に政府としても、セミナーやイベント等を集中的に開催するとともに、月間サイトに登録した各企業においても、セミナー・イベントや社内でのテレワーク実施を呼びかける等、テレワーク月間を契機に社内外での普及啓発活動を行った。

「ふるさとテレワーク」とは、地方のサテライトオフィス等においてテレワークにより都市部の仕事を行う働き方のことである。ふるさとテレワークの推進により、都市部から地方への人や仕事の流れを創出し、地方創生の実現に貢献するとともに、地方における時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方を促進し、働き方改革の実現にも貢献するものである(図表4-6-2-10)。

図表4-6-2-10 「ふるさとテレワーク」の概要

総務省では、2015年度(平成27年度)に地域の実情や企業ニーズに応じたふるさとテレワークのモデルを実証し、2016年度(平成28年度)から2018年度(平成30年度)まで、地方自治体や民間企業等に対し、テレワーク環境を整備するための費用の一部(例:ICT機器購入費用)を補助する事業を行ってきた3図表4-6-2-11)。

図表4-6-2-11 「ふるさとテレワーク」実証事業及び補助事業の実施地域

テレワークの普及促進に関するこれまでの取組が、各企業の導入を支援する「点」やふるさとテレワークの推進という都市部と地方を結ぶ「線」が中心であり、今後は「面」としてのテレワーク導入支援が必要であるという観点から、2018年度(平成30年度)には、「まちごとテレワーク」調査事業を実施した。全国で12か所の「まち」(市町村、商工会議所等の地域の経済団体等)を公募により選定し、「まち」ごとのテレワーク導入に関する現状や課題の分析、有効な方策(例:地域推進協議会、周知広報イベント等の開催、コワーキングスペースの設置、企業の施設等の第三者開放による活用)の検討等を行うことにより、「まち」のテレワーク推進計画の策定等を後押しした(図表4-6-2-12)。

図表4-6-2-12 「まちごとテレワーク」調査事業の実施地域

総務省では、2019年度(令和元年度)より、地域課題解決に資するテレワーク環境のためのサテライトオフィス整備等への補助を、「地域IoT実装総合支援施策」の中で実施する(図表4-6-2-13)。

図表4-6-2-13 令和元年度 地域IoT実装推進事業(要件B:テレワーク)


3 ふるさとテレワークポータルサイト https://telework.soumu.go.jp/PDF

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