総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和元年版 > 改革において共通する課題は何か
第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第3節 Society 5.0が真価を発揮するためにはどのような改革が必要か

4 改革において共通する課題は何か

人を活かすための改革

前述の1から3までの改革に共通する課題として、人を巡る問題がある。例えば、ICTの位置付けの転換を行うに当たっては、ユーザー企業側でのICT人材の充実が必要となってくるが、その処遇やキャリアパスについて、人材の企業間の移動という流動性の中で確立していくという観点も踏まえつつ対応する必要がある。また、これまでの大企業による自前主義も、自社の人的リソース活用の優先という観点が関係している。そして、働き方改革は人そのものを巡る政策課題である。

したがって、1から3までで述べたような改革を進めていく上では、このような人を巡る問題に適切に対応していく必要があり、いわば人を活かすための改革が併せて必要となる。例えば、ユーザー企業がICT人材を雇用する場合においては、他の従業員とは異なる報酬体系や、専門性を生かしたキャリアアップが可能な仕組みを用意するといったことが必要になるだろう。

ただし、各企業において対応できることには限界がある可能性がある。デジタル経済の進化が進む中で、個人自らの意思によるものと、社会・経済環境によるものとの両面から、人材の流動性が更に高まっていく、あるいは高めていかざるを得ないことが想定される。政府や社会全体で、この流動性の問題に対応していく必要がある。

大学はニーズにあったカリキュラムを提供できるか

人材の流動性が高まっていく中で、新たな仕事のためのスキルを習得することが可能となる機会が求められ、その一つが社会人の学び直しというリカレント教育である。このリカレント教育については、誰がどのように行うべきかという論点がある。

この点について、平成30年版経済財政白書においては、我が国では大学等の教育機関で学び直しを行っている人の割合が他国と比べて少ないことを指摘している。その背景の一つとして、学び直しに対応した授業科目の開設を行っている大学が少ないことを挙げている。また、大学等が重視するカリキュラムと、社会人・企業が期待するカリキュラムに乖離があることも指摘している。例えば、これまでICTに関するスキルとの関係が大きな論点とはなっていない法科大学院においても、日米では図表2-3-4-1のような違いがある。米国においては、大学等の研究の場と、企業・プロフェッショナルファームや政府等の実務の場の双方で経験をもつ教員が少なくないことも、このようなカリキュラムの提供を支えていると考えられる。

図表2-3-4-1 法科大学院における知的財産・テクノロジー関係科目の日米比較
(出典)東京大学Webサイト・カリフォルニア大学バークレー校Webサイトを基に作成

また、同白書では、学び直しが処遇等により適切に評価されない企業も多いことを指摘している。前述の大学等が重視するカリキュラムと企業が期待するカリキュラムの乖離により、企業は大学での学び直しを評価せず、そのことが社会人の学び直しを消極的なものにするという悪循環となっている可能性がある。大学等のカリキュラムがより社会人・企業のニーズにあったものへと変革することとともに、伝統的な教育機関ではない主体がインターネットの活用等によりリカレント教育の場を提供していくことも重要であろう。更に、AIが雇用に及ぼす影響が議論されている中で、リカレント教育の重要性は、高技能の人材に限定されるものではなく、あらゆる人々にとって当てはまるものであることに留意する必要がある。

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