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第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第3節 ICTの新たな潮流

(4)考えられる今後の先行き

デジタル・プラットフォーマーは、今後どのようになっていくのだろうか。前述したとおり、デジタル・プラットフォーマーは、デジタル経済そのものを機能させる舞台であるとともに、雪だるま式に成長する仕組みを備えている。他方、サイバー空間とリアルの世界の融合が進む中で、リアルの世界における動向も重要となっていくと考えられる。将来を予想することは極めて難しいが、いくつかの考えられるシナリオについて述べる。

まず、GAFAやBATをはじめとする巨大なデジタル・プラットフォーマーがリアルの世界での影響力を強めていくというシナリオが考えられる。既にAmazonがAIを利用した無人のコンビニのAmazon Goを米国で展開していることにみられるように、デジタル・プラットフォーマーのリアルの世界への進出が、更なるデジタル・ディスラプション(第2章第1節参照)を引き起こしつつ、拡大していく可能性はあるだろう。

次に、巨大なデジタル・プラットフォーマー同士が争うことにより、集約していくというシナリオが考えられる。特に、ネットワーク効果は、互換性や相互運用性が確保されない限り、最終的には一の事業者による独占的な提供を指向していく。このような現象は、かつてブラウザやOSにおいてみられたことである。もっとも、OECD(2019)は、GAFAとBATの米中連携の可能性にも言及しており26、有力なデジタル・プラットフォーマー同士の連携による住み分けも考えられるだろう。

これらとは逆に、現在のデジタル・プラットフォーマーが存在感を薄めるというシナリオも考えられる。米国のICT市場においては、かつてコンピューターという製品を通じて圧倒的な存在感を持っていたIBMが、OSを押さえたMicrosoftにその立場を取って代わられ、Googleが検索サービスにより更に取って代わるというように、より上位のレイヤーに参入した新たなプレイヤーが従来の市場支配的な事業者の存在感を薄めていくという歴史を繰り返してきた。

このことからすれば、今後リアルの世界でのプレイヤーが、デジタル・プラットフォーマーの存在感を相対的に低下させていくことがあるかもしれない。前述のようなルール整備が、デジタル・プラットフォーマーの更なる拡大を制約することとなれば、リアルの世界での動向がより重要となる可能性がある。ただし、前述の米国の例において、新たなプレイヤーもやはりネットワーク効果を生かして拡大してきたという点は重要であり、デジタルの特質に適した何らかの成長メカニズムが必要となると考えられる。その意味では、このような主体の候補となり得るのは、デジタル・トランスフォーメーション(第2章第1節参照)を実現したリアルの世界のプレイヤーということになるだろう。

最もドラスチックな変化のシナリオは、デジタル・プラットフォーマーとは全く異なる原理の新たな世界が生まれることである。例えば、非中央集権的とされるブロックチェーンの仕組みは、中央集権化しているといわれるデジタル・プラットフォーマーの対抗軸となり得るとの見方がある27。デジタル・プラットフォーマーは、デジタル経済そのものを機能させる舞台である点に大きな意義を有しているが、その舞台自体を新たなものに変えてしまうということであろう。



26 OECD(2019)は、既に米中連携が行われている例として、GoogleがテンセントのeコマースにおけるパートナーであるJD.comに出資していること、GoogleがテンセントのWeChat上でゲームを立ち上げたこと、バイドゥがAmazonと中国におけるKindle事業において提携したこと等に言及している。

27 例として、ジョージ・ギルダー(2019)『グーグルが消える日 Life after Google』がある。

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