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第2部 基本データと政策動向
第3節 電波政策の展開

(2)公共安全LTEの推進

我が国の主な公共機関は、各々の業務に特化した無線システムを個別に整備、運用しているため、機関の枠組みを超えた相互通信ができず、また、そのシステムは割り当て可能な周波数や整備費用の制約等から、音声を中心としたものとなっている。諸外国においては、デジタル移動通信方式であるTETRA6やAPCO P-257等を採用する公共機関もあるが、こちらも音声中心のシステムであり、データ通信を行う場合は数十kbps程度と低速である点が課題となっている。

このような中で、諸外国では消防、警察等、公共安全業務を担う機関において、携帯電話で使用されている通信技術であるLTE(Long Term Evolution)を利用し、音声のほか、画像・映像伝送等の高速データ通信を可能とする共同利用型の移動体通信ネットワークの構築に向けた検討が進められている。このようなLTEを用いた公共安全(Public Safety)のためのネットワークは、「公共安全LTE(PS-LTE)」と呼ばれ、テロや大災害時には、公共安全機関の相互の通信を確保し、より円滑な救助活動に資すると期待されており、また、世界的に標準化された技術を利用することから、規模の経済による機器の低コスト化が可能となる等のメリットがあるとされている。

総務省では2017年(平成29年)11月から開催された「電波有効利用成長戦略懇談会」において、公共用周波数の有効利用の観点から、公共機関が共同で利用できる「公共安全LTE(PS-LTE)」の導入に向けた検討を行ってきた。2018年(平成30年)8月に取りまとめられた同懇談会の報告書を受け、今後、周波数有効利用に資する「公共安全LTE」(PS-LTE)の実現(図表4-3-2-2)に向けて、PS-LTEに求められる技術的要件や運用体制の在り方等の検討を行うこととしている。

図表4-3-2-2 共同利用型の公共安全LTEの創設実現イメージ

その中で、2019年度(令和元年度)においては、特に我が国におけるPS-LTEの実現に最適な周波数の検討や、災害時において迅速に通信カバレッジを補完・拡大する技術としてデバイス間通信技術や可搬型装置によるバックホール回線中継システム等についての検討を行うとともに、関係省庁・関係機関が参画する場を設け、我が国におけるPS-LTEの実現に向けた幅広い検討を進めることとしている。



6 TETRA は欧州で規格化された公共安全用のデジタル移動通信システムであり、世界各国で警察、消防、交通機関、公益業務等に利用。

7 APCO P-25 は米国で規格化されたデジタル移動通信システムであり、北米、オーストラリア等で利用。

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