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第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第3節 Society 5.0が真価を発揮するためにはどのような改革が必要か

6 デジタル経済の進化の中での地方のチャンス

デジタル経済の進化の中で、地方はどのようになっていくのだろうか。地方には、ピンチとチャンスの両面があると考えられる。

地方のピンチとして、第1節で述べたデジタル・ディスラプションが挙げられる。ICTによりコスト構造が変革している中で、都市・地方を問わず、従来のビジネスモデルは継続できない可能性がある。また、ICTにより集積のメリットが高まっていることについて指摘する考え方もある34。すなわち、ICTの発展・普及は、当初想定されていたように分散型モデルを有利にするのではなく、むしろ集積のメリットを発揮することで都市部の方に便益をもたらしているというものである。事実、人口の点で見れば、近時東京を始めとする大都市に集中する傾向があり35、デジタル経済の進化は、むしろ特定地域への集積を進めているようにも思われる。

それでは、地方にどのようなチャンスがあるのだろうか。重要な視点の一つは、第2節で述べたとおり、ICTのもたらす真の効果はまだ十分に出て来ておらず、むしろこれから出現するとともに、かつ急激な変化となる可能性があるということである。したがって、大都市への集中という現象は、あくまでも一時的なものであるのかもしれない。そしてもう一つ重要な視点は、その変化は様々な活動から時間・場所・規模の制約を取り払うとともに、様々な主体間の関係の再構築をもたらすものであるということである。

既に、地方を取り巻く既存の様々な関係にはゆらぎが生じている。例えば、地方には東京の大企業からの下請として事業を行う企業は少なくないが、インターネットにより、東京を経由せず世界とつながって事業を行うケースが出て来ている。また、地方の個人がクラウドソーシングにより、遠隔地から直接仕事を受注する形も出て来ている。このほか、AIロボットの活用等により、人手不足を機械の力で補うことも可能となっている。

このように、既にデジタルに即した新たな関係が再構築されてきており、今後これらは深化し、細粒化し、そして複合化することが見込まれる。その行き着く姿がどのようなものとなるかは、現時点では具体的に予測できない面はあるが、このような既存の関係の再構築が進む流れをチャンスと捉えた上で、取組を行っていくことが重要であろう(図表2-3-6-1)。

図表2-3-6-1 デジタル経済の中での地方のチャンス
(出典)各種公表資料より総務省作成


34 例として、今川拓郎(2001)「ITが都市や交通に与えるインパクト −知識経済化の流れの中で」がある。 http://www.osipp.osaka-u.ac.jp/archives/DP/2001/DP2001J001.pdfPDF

35 総務省「住民基本台帳人口移動報告 平成30年(2018年)結果」によれば、都道府県別でみた場合、転入超過となっているのは東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、福岡県、大阪府及び滋賀県の8都府県である。他方、転出超過となっているのは茨城県、福島県、新潟県、長崎県等39道府県である。市町村別でみれば、転入超過は全市町村の27.9%、転出超過は全市町村の72.1%となっている。また、東京圏は23年連続の転入超過となっている。

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