昭和48年版 通信白書

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1 住宅用電話の増加とその利用動向

 電話の加入状況をみると,近年,住宅用電話の増加がめざましい。第2-1-1図は,昭和40年度以降における電話加入数(住宅用,事務用)の推移を示したものであるが,住宅用電話の増加の伸びが特に著しく,40年度及び47年度の両年度について年度末の加入数を比較すると,住宅用電話の場合47年度は40年度の約6、0倍となり,事務用電話の約1.8倍を大きく上回っている。また,こうした住宅用電話の増勢を反映して,住宅用電話の一般加入電話加入数に占める割合も年々増加しており,40年度末の25.3%から46年度末には49.8%となり,住宅用電話と事務用電話の加入数がほぼ等しくなった。更に47年度末においては,加入数2,098万のうち住宅用電話が54.2%に当たる1,137万を占めることにより,事務用電話をはじめて若干上回る結果となった。
 住宅用電話がこのように飛躍的な増加を示したのは,40年代に入って住宅用電話に対する需要が急速に高まったことによるが,その背景には,電話網の整備,とりわけダイヤル自動即時網の全国的普及によって通話サービスが一段と改善され,電話が非常に便利になったことのほかに,国民の所得水準の上昇とこれに伴う生活利便の確保に対する欲求の増大によって,電話は必需品であるとする認識が国民の間に定着してきたことなどの諸事情の変化があげられる。この傾向は,最近における生活行動圏の拡大,核家族化の進展等国民の生活態様の変化と相まって,今後とも一層促進されよう。
 このような電話の加入構造の変化は,これまでのビジネス中心の電話の利用から,シビルミニマムとして市民生活の上でも多くの人が電話を利用するようになってきていることを意味している。
(1) 発信者及び通話相手の構成
 郵政省総合情報流通調査会が47年度に行った実態調査によれば,電話(事務用電話を含む。)の発信者別利用状況は,第2-1-2図のとおりである。すなわち,性別にみると1日1人当たり男性は約6分であるのに対し,女性は約1.4倍の8.5分であり,年代別では20代及び30代が圧倒的に多い。また,職業別にみると,自営業,自由業,事務職が多く,農林水産業が少ない。次に住宅用電話について,電電公社が47年度に行った「住宅用電話利用実態調査」により発信者,通話相手の構成をみると,次のとおりである。
発信者のなかで電話を最も使うのは主婦である。最も多く電話をかけたものは主婦であると答えた世帯が全体の55%で最も多く,次いで世帯主,子供となっている(第2-1-3図参照)。ちなみに,46年度調査(東京,大阪両生活圏について実施)においても,主婦が発着信通話量全体のほぼ50%を占めており,主婦が住宅用電話の利用の中心となっている。
更に,最も多くかけている通話相手をみると,「市内通話」と「市外通話」とでは,その通話相手にかなりの違いがある。すなわち,「市内通話」の場合,「友人・知人」に最も多くかけたとする世帯が全体の46%を占め最も多いのに対し, 「市外通話」の場合,通話相手として「親せき」をあげる世帯が全体の51%と最も多い。また,これを地域別にみると,「市内通話」の場合,「友人・知人」とする世帯が「3大都市」, 「圏内大都市」及び「圏内その他」の3大生活圏において過半数を占め,「地方都市」,「その他」に比べて高い比率を示している。 これに対して「市外通話」の場合,「親せき」とする世帯の比率が上記3大生活圏よりも「地方都市」,「その他」において高く,「市内通話」の場合と対照的で,電話利用の地域的特性がみられる(第2-1-4図及び第2-1-5図参照)。
(2) 通話内容
 最もよくかけた通話内容は,「市内通話」の場合,「レジャー・趣味・雑談」をあげた世帯が全体の27%と最も多いが,「3大都市」においては34%,「その他」では21%と地域によりかなりの差がある(第2-1-6図参照)。一方,「市外通話」の場合は「近況報告」をあげた世帯が全体の41%で最も多い(第2-1-7図参照)。また,通話内容を勤務先・取引先との連絡,出前・修理の依碩・買物,冠婚葬祭・突発事故など「義務的必需的性格の強い通話」と,レジャー・趣味・雑談,近況報告,勉強・教育など「自発的任意的性格の強い通話」に大別すると,「市内通話」の場合38対51,「市外通話」の場合19対55で,いずれも後者をあげる世帯が多い。
 次に,発信者と通話内容との関連(「市内通話」の場合)をみると,世帯主が最多発信者であるとする層では「勤務先・取引先との連絡]をあげる世帯の比率が,また,子供が最多発信者であるとする層では「勉強・教育」,「レジャー・趣味・雑談」をあげる世帯の比率が他の層よりきわだって多くなっている。また,主婦が最多発信者であるとする層では「買物」,「レジャー・趣味・雑談」及び「近況報告」をあげる世帯が多いが,しかしながら他の最多発発信者の場合と比較してさほど顕著ではない。これは,主婦の通話内容が広く分散しているためと考えられる。
 電話の利用実態は以上みたとおりであるが,住宅用電話における主婦の中心的存在,友人・知人・親せきとのひんぱんな通話,子供による勉強,雑談等の通話,そして通話内容のレジャー・趣味など自発的任意的通話の比重が高いことは,市民生活の豊かさとこれに伴うコミュニケーション活動の活発化を示すものといえよう。
 電話は今後とも,市民生活とのかかわりあいをますます深めていくものと考えられるが,他方,電話に対する需要も年々増大している。我が国の住宅用電話の普及水準は,40年代に入っての大幅な架設によってかなり改善されたものの,一方,47年度末現在における住宅用電話の積滞数も約184万個にのぼっており,この数は,同年度末住宅用加入総数約1,137万の16.2%に相当する。また,国際的にみても,我が国の住宅用電話の普及水準は48年1月現在の普及率(人口100人当たりの住宅用電話機数)で,米国の45.7個,スウェーデンの41.6個,カナダの35.5個などに対して,日本は12.5個となっており,欧米先進諸国に比べて必ずしも高いとはいえない(日本の電話機数は,47年度末現在のもの。)。
 近年,生活圏の広域化,全国的な都市化のすう勢などによって,電話需要もまた,これまでの東京,大阪,名古屋といった大都市から大都市周辺,地方都市へと移行しつつあり,電話の全国的規模での積滞解消が当面する大きな課題となっている。

第2-1-1図 電話加入数の推移

第2-1-2図 電話の発信者別利用状況

第2-1-3図 住宅用電話の最多発信者別世帯割合(1)

第2-1-3図 住宅用電話の最多発信者別世帯割合(2)

第2-1-4図 住宅用電話の最多通話相手別世帯割合(市内)

第2-1-5図 住宅用電話の最多通話相手別世帯割合(市外)

第2-1-6図 住宅用電話の最多通話内容別世帯割合(市内)

第2-1-7図 住宅用電話の最多通話内容別世帯割合(市外)

 

 

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