昭和48年版 通信白書

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3 国際化の進展と国際電気通信ネットワークの拡充

 47年度の我が国の輸出入総額は前年度の24%増となり,また,海外への旅行者数も47年は前年の45%増とますます増大しており,国際化が着実に進展していることがうかがえる。
 これに伴い,国際通信,特に国際電気通信の発展は目ざましいものがある。国際電話及び国際加入電信の47年度の取扱数はどちらも41年度の約6倍にまでなっており,前年度に比べてもそれぞれ45%,36%と著しい増加を示している。38年,初めての放送で不幸にもケネディ米大統領の暗殺を伝えた衛星中継によるテレビ放送も,今や日常茶飯事となっており,世界の出来事が時をおかずそのまま茶の間に送られている。一方,情報化の進展に伴う通信需要の多様化を反映し,国際通信にも,45年度以降,高速通信用専用線,国際デーテル,国際ファクシミリ電報,国際オートメックス等の新規サービスが加えられている。
 このような国際通信の量質両面にわたる急激な発展は,通信衛星,海底同軸ケーブル等の大容量,高品質で安定度の高い広帯域通信幹線の拡充によりもたらされた。かつては,国際通信回線の大部分が短波回線で占められ,回線数も少なく,しかも1日のうちある時間帯しか通信できないという状態であったのが,広帯域通信幹線の建設により,大量の電話を疎通し,テレビ放送を中継し,また,データ通信を行うようにもなっている。
 国際化の進展に伴う通信量の増加傾向は今後も続くとともに,世界的規模で進展する情報化に伴う高度な通信需要は一層高まるとみられる。このため,国際通信ネットワークの整備とサービスの一層の向上が必要となっている。
(1) 国際通信ネットワークの整備
 国際通信需要の増大と多様化に対処するには,海底ケーブル,通信衛星等による広帯域直通回線の設定,伝送ルートの多様化を推進し,高品質回線を潤沢に確保することが必要である。我が国が使用する国際通信幹線としては現在,インテルサット衛星経由回線のほか,太平洋ケーブル,日本海ケーブル及び日韓間対流圏散乱波(OH)通信回線があり,今後建設が予定されているものとして第2太平洋ケーブル,日中間海底ケーブル等がある。
 太平洋海域における既存の海底ケーブルは,いずれも既に容量の限度まで使用されているため,最近の回線増設はほとんどが通信衛星施設に依存せざるを得ない状況にある。したがって,このまま推移すると通信衛星施設の使用比率がますます増大することとなって,障害が発生した場合等に国際通信の信頼性,継続性を確保する上に支障が生ずることが予想されるところから,日本,米国,オーストラリアの通信事業者間で沖縄・グアム・ハワイ間第2太平洋ケーブル及びハワイ・米本土間第3ハワイケーブルの建設計画が作成され,50年11月の完成を目途に諸準備が進められている。
 51年には日中間の海底ケーブルの建設が完了することも見込まれている。このケーブルは,日中両国間の通信のほか,他の諸国との間の通信にも積極的に使用することとされている。
 我が国はかねてから東南アジアケーブル建設計画を提唱し,関係諸国と折衝して計画の推進に努力している。この計画が実現すれば東南アジア地域にも通信衛星,海底ケーブルを相互補完的に総合した国際通信ネットワークが整備されることとなる。
 一方,インテルサット衛星システムについても,諸外国における地球局の建設の進展に伴い我が国衛星通信対地の拡張が進められている。殊に,短波通信を利用している対地については,近時,短波帯周波数の使用がふくそうし混信が避けられない状況もあるので,その対地に地球局が建設されるのを待って衛星経由の直通回線を設定し,短波回線の置換吸収を図る方策が積極的に講じられている。
 そのほか,単一の広帯域通信幹線のみでは直通回線を設定できない対地については,通信衛星,海底ケーブル,地域マイクロ波ネットワーク等の各広帯域通信幹線を直列に接続することによって,第三国経由の直通回線を設定する方法もとられている。
(2) 国際電話の自動化
 我が国に発着する国際電話は,39年の太平洋ケーブルの開通を契機に急増し,その後,インテルサット衛星の登場,対流圏散乱波通信方式による日韓通信幹線の完成,日本海ケーブルの開通等によって更に拍車がかかり,最近は年率30〜50%の増加を続けている。このように急増する国際電話の円滑な疎通を図るため,国際電話の自動化の必要性が高まっている。
 欧州の大陸内諸国間では国際電話の自動化は早くから実施されていたが,長距離海底ケーブルや通信衛星を経由する国際電話の自動化が実現したのはごく最近である。すなわち,45年3月ニューヨーク・ロンドン間で国際電話の自動化が開始され,その後,北米と欧州諸国との間の国際電話が順次自動化されていった。我が国との関係では46年中にニューヨーク,西独の主要都市,ベルギー全土及びスイスの主要都市から日本着信の国際電話の自動化が開始された。我が国からの発信については,48年3月から国際電話の加入者ダイヤル発信サービスが東京,名古屋,大阪の各一部地域を手初めに開始された。当面は,設備の関係で一部地域の加入者に限られ,また,自動化対地も米国,欧州の一部地域だけとなっているが,国際電話需要の増大に伴い,自動化の範囲をできる限り早期に拡大することが今後の重要な課題である。
(3) 高度化する通信需要への対応
 近時,我が国における企業活動の国際化とともに,外国との間で送受を要する情報が多量化し,高速度通信の需要が高まっている。これに伴い,45年8月から200〜2,400b/sの国際高速度専用回線サービスが,また,46年9月から,加入者相互間で最高1,200b/sのデータ伝送のほかファクシミリ等に利用できる国際デーテルサービスが開始された。
 一方,46年の公衆電気通信法の一部改正は国際データ通信サービスを可能とし,48年3月,国際電電の電子計算機により国際専用線利用者の通信を自動交換する国際オートメックスサービスが開始されたほか,米国にある電子計算機を日本のユーザが使用する商用タイムシェアリングサービスも民間事業者により開始されている。
 更に,国際電電において航空会社間の通信を自動交換するサービスを開始する計画,電電公社が提供している販売在庫管理システムを利用して同種のサービスを海外へ発展させる計画等が検討されており,国際データ通信は情報化の進展とともにますます充実されようとしている。

第2-2-1図 伝送路別国際回線の推移

 

 

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