昭和48年版 通信白書

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第6章 周波数の監理

第1節 概   況

 電波利用の歴史は,1888年(明治21年)ヘルツによる電磁波の発見の後,1901年(明治34年)にマルコー二が大西洋横断無線電信の実験に成功したときから始まったといえよう。以来,今日までわずか70年余の間に,電子通信技術の驚異的な進歩を背景として,電波の利用は社会経済活動のほとんどすべての分野に及び,各々重要な役割を果たしており,また,身近な日常生活の上にも無くてはならないものとなっている。
 このような電波利用の拡大に伴い,周波数の需要は我が国をはじめとする電波先進国はもとより,いわゆる開発途上国においても逐年著しい増加を示しており,既に一部周波数帯については国際的な不足が深刻な問題となってきている。
 特に我が国の場合,最近の周波数需要の傾向として特徴的なことは,周波数の「量」ばかりではなく「質」に対する要求が高まってきていることである。これは,社会活動の複雑化,スピード化等の進展に伴い通信もまたこれに適応するよう改善を迫られ,このための通信技術も開発されつつあるということの現れであろう。
 通信の質の改善は,「信頼性」,「迅速性」,「便利さ」等いくつかの観点からとらえることができる。例えば,便利さということでは電信よりも電話が,電話の中でも単信より複信が要求され,信頼性についてはフェージングによる瞬断すら許容されない高品質の回線が要求される場合もある。更に,回線のネット化等による災害に強い回線の設定を今後一層推進していくことも必要であろう。
 また,社会活動の進展は従来と異なる新しい型の通信需要を生み出している。データ通信,公害対策用通信などのほか,移動中にいつでもどこでも利用できる通信系として,既に一部に実施されている列車無線,沿岸無線電話,ポケットベル等を含め今後多彩な要求が生じてくるものと思われる。
 一方,電波は「周波数スペクトラム」として時間的,空間的に占有性を有する一種の有限な資源である。
 すなわち,電磁波のスペクトラムは第3-6-1図に示すように,可視光線の領域を越えて宇宙線の領域に至るまで非常に広範囲にわたっている。しかし,このうち,「電波」として無線通信に使用可能な周波数スペクトラムは,最近の技術でもおおむね10kHzから数10GHzの範囲に限られている。
 また,「電波に国境なし」といわれるように電波は地球を取り巻く宇宙空間を自由に伝搬するので,電波を利用する者が無秩序に周波数を使用するならば,国内はもとより国際間においても相互に混信妨害を生ずることとなる。
 このような電波の有限性及び伝搬特性のため周波数スぺクトラムの有効利用を図り,また世界的な無線通信業務を円滑に行う必要から,周波数については1906年(明治39年)ベルリンにおいて無線通信に関し初めて開催された国際会議以来,古くから国際的にち密な管理が行われ,電波秩序が維持されている。
 我が国における周波数の監理は,電波法及び関連法令の規定に基づいて,電波主管庁である郵政省において行われているが,特に次のような事項を考慮して適切な監理を行うよう努めている。
[1] 国際電気通信条約及び同附属無線通信規則,国際民間航空条約,海上人命安全条約等の周波数に関する国際的な規律に従うとともに国際協調を図ること。
[2] 周波数需要の動向をは握し,周波数の計画的な使用を図ること。
[3] 円滑な無線通信業務を維持し,かつ周波数スぺクトラムを有効に利用するため,適切な技術的基礎に基づいた周波数の使用を図ること。
[4] 周波数スペクトラムの開発及び有効利用に関する技術の調査研究を推進すること。

第3-6-1図 電磁波のスペクトラム

 

 

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