昭和48年版 通信白書

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3 老人福祉と通信

 老人福祉の実現は,我が国の当面している重要な課題の一つである。人口の老齢化,戦後の扶養意識の変化,核家族化の進行に伴い,孤独な老人の生活が多くみられるようになっている。心身の機能の低下,社会的役割を終えたという生きがいの喪失,対人接触の機会の減少,経済的不安など老人問題は,国民だれもが達する老齢期の問題として深刻化している。このような老人の孤立化,心身の故障や機能の低下に対して,通信連絡手段を確保して,これを補っていくことが必要である。このため,各種の老人福祉の施策とともに,電気通信を活用した老人福祉対策がとられている。
 第一に,老人福祉電話の設置がある。一人暮らし老人に対し電電公社の加入電話を国及び地方公共団体の補助により設置し,市などの老人電話相談センターや親族をはじめ,医師,保健婦,老人家庭奉仕員,介護人,老人クラブ会員,婦人会会員等との間の通信ができることにより,老人の日常生活に安心と生きがいを与えようとするものである。47年度末で,福岡市,豊橋市,東京都文京区,新潟市が実施している。また,第二に,このような老人福祉電話を設置する場合には,電電公社では,市などの名義の電話として取扱い優先的に設置を図るとともに,電信電話債券の引受免除の措置を講じている。第三に,地方公共団体や福祉法人がインターホンを設置し,一人暮らし老人と家庭奉仕員,介護人等との通信ができるようにしており,その数は47年度末で2,403施設になっている。更に,第四には,農山漁村に普及している有線放送電話を利用して,老人相手の放送や個別の安否通信などを行い,好評を博している。
 このように通信の活用による各種の一人暮らし老人対策が進められているが,人口5万人以上の都市に居住する満65歳以上の一人暮らし老人の通信手段の保有状況などを郵政省調査によりみると,電話,インターホン,ベル等の通信連絡手段を保有する老人は,公社電話の34.7%を含め45.4%となっているが,寝たきり及び寝たり起きたりの老人の58.6%は,通信連絡手段を保有していない。また,電話を保有する者の43.6%が一人暮らしになってから取り付けており,そのうち68.4%が老人自身で取付料金を支払っている。
 今後,更に通信連絡手段の確保を図るとともに,老人,特に寝たきり老人に適した機能をもつ電話の開発を行うなど通信の活用に配慮していくことが期待されている。

 

 

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