昭和48年版 通信白書

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5 その他の国際機関

(1) 政府間海事協議機関(IMCO)
 海上における人命の安全を確保し,船舶の航行の能率化を図るために無線通信が重要な役割を果たしていることは周知のことである。最近,無線通信技術の著しい発展に伴い海上移動通信の改善を図り,またこの通信に宇宙通信技術を導入することが国際的な課題となっており,海上を航行する船舶の安全のための国際協力を図ることを目的とする政府間海事協議機関(IMCO)がこの問題について検討を続けている。
 IMCOは,47年度中に2回にわたり海上安全委員会の補助機関である無線通信小委員会を開催し,海上遭難制度のさしむきの改善方向として,海上における人命の安全のための国際条約(1960年,ロンドン)が適用される全船舶に2MHzの無線電話送受信機及び非常用位置指示無線標識(SOSブイ)の備付けを勧告すること等を打ち出している。
 一方,海上移動通信に宇宙通信技術を導入することについては,海事衛星専門家パネルを設けて,47年度中に2回の会合をもち,海事衛星システムの運営組織,運用要件,技術基準等について検討を進めている。
 我が国は上記の会合にそれぞれ代表を送り,必要に応じ寄与文書を提出して意見の反映に努めている。
(2) 国際民間航空機関(ICAO)
 現在の航空は,通信にあるいは航行援助のために各種の電波を駆使して行われている。
 この分野における電気通信の国際的な課題は,電子技術を十分に活用して通信の自動化を図ること,VOR,ILS等の航行援助施設の性能を向上させること,宇宙通信技術を導入すること等である。
 国際民間航空が安全にかつ整然と発達するように国際協力を図ることを目的とする国際民間航空機関(ICAO)は,航空交通の安全かつ効率的な運航を確保するために必要な航法システム,通信システム,地上航行援助施設及び航空機とう載機器に関する最新の技術について世界共通の基準を採択することを目的として,1972年4月5日から同28日までカナダのモントリオールにおいて第7回航空会議を開催した。この会議において,航空移動業務におけるVHFのチャンネル間隔を1977年以降25kHzとすること,衛星システムの導入を[1]評価開発 [2]試験運用 [3]運用業務の3段階に分け,試験運用を1980年以降とすること等が定められた。
 我が国は,関係省から6名の代表を送り意見の反映に努めた。
(3) 国際連合アジア極東経済委員会(ECAFE)
 ECAFEは,域内各国の経済社会開発のための協力をはじめ,それに関する調査,研究,情報収集等を行っている。現在の加盟国は,域内国25,域外国5,準加盟国6の計36か国で,我が国は1952年に準加盟し,1954年に正式加盟国となった。ECAFEには三つの常設委員会があり,その一つに運輸通信委員会がある。また,運輸通信委員会の下部機構として電気通信小委員会があり,域内の電気通信の開発に関する技術及び経済関係諸問題を専門家レベルにおいて討議し,その実施状況を検討する等の諸活動を行っている。
 現在,ECAFEの電気通信分野における大きな目標は,[1]「第2次国連開発の10年」にあたる70年代半ばまでに,各国が国内総生産(GNP)10万米ドル当たり電話機数を4個,70年代末には8個までに引き上げること,[2]域内12か国を対象とした「アジア地域電気通信網計画」の早期実現を図ることであるが,この目標達成のために関係各国はそれぞれ大きな資金を必要としており,多国間援助はもちろん2国間援助も併せてこの面での我が国の協力が強く期待されている。
(4) 経済協力開発機構(OECD)
 OECDは加盟国の経済成長を国際的な平衡を失わずに行われるよう,情報や意見の交換を行う場として,1961年に発足した国際的な組織で,我が国は1964年に加盟,現在24か国がこれに参加している。
 経済発展の基調となる科学技術の問題については,科学技術政策委員会(CSTP)が設けられており,最近においては技術革新の進展によって科学技術の重要性が社会の各分野で増しているところから,CSTPの活動も活発化している。
 CSTPのもとには,いくつかの専門家グループがテーマ別に設けられている。その一つ「電子計算機利用グループ(CUG Computer Utility Group)」は,電子計算機利用に関する諸々の問題をパネルを設けて討議している。
 「データ・バンク・パネル」,「電子計算機要員教育パネル」及び「データ通信パネル」などがそれである。この「データ通信パネル」は,正式名称を「電子計算機と電気通信の相互作用の政策課題に関するパネル」といい,1970年6月に発足し会合を重ねてきている。1972年6月には,それまでの研究成果をまとめた報告書である「電子計算機と電気通信―経済的,技術的及び制度的諸問題」が検討された。この報告書は,加盟先進各国からの資料を用いて,データ通信に関する政策レベルの問題を分析した注目すべき書である。
 また,1972年11月には,CUG主催の「電子計算機/通信に関するセミナー」が開かれ,社会の各分野におけるデータ通信システムの果たす役割について,各国政府の関係者が出席し討議した。
 このように,OECDにおいては,通信の重要性がクローズアップされてきており,通信に関し,高い技術水準を有する我が国の積極的参加が期待されている。また,最近巨大科学における国際協力の必要性が大きく取り上げられ,既に天文学分野の専門家会合が行われているが,そのなかで電波天文の部門では電波研究所の貢献が今後期待されるところである。
(5) 国際無線障害特別委員会(CISPR)
 CISPRは国際電気標準会議(IEC)の特別委員会で,当初はラジオ,テレビに対する受信障害の排除と,電気機器の国際貿易の促進を目的としたが,最近は無線通信全般にわたる受信障害防止も手がけており,CCIRとの連携のもとに研究を行っている。
 我が国においてはCISPRで扱う電気機器等の人工雑音の許容値,測定法,測定器の規格等について,電波技術審議会が郵政大臣の諮問を受けて関係文書の審議を行い,重要なものについてIECの国内委員会である日本工業標準調査会を通じ意見等をCISPRに回答することによりその活動に寄与している。
 47年度は同審議会で42件の文書の審議を行い3件の答申を得た。これは人工雑音の統計的特性,10〜150kHz妨害波測定器の規格及びけい光照明器具に関するものである。
 なお,48年度はCISPRの総会(3年ごとに開催される)の年に当たるので,関係文書及び継続している研究問題43件,勧告32件及び報告20件について審議が行われる予定で,これに対処するため準備を進めている。

 

 

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