昭和48年版 通信白書

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6 CCISに関する技術開発

CATVは,その構成要素である同軸ケーブルが極めて多量の情報を伝送できるという性質をもっているところから,単なるテレビの再送信メディアにとどまらず,多種多様な情報サービスを提供するCCIS (Coaxial Cable Imformation System 同軸ケーブル情報システム)へと発展する可能性を有するものとして一般の注目と期待を集めてきた。
 既に述べたように,現在のCATVのうち,テレビの再送信以外のサービスをも併せ行うものはわずか数施設にすぎないが,このようなCATVの大容量性を活用し,可能とされるサービスを実用化するため,各方面でシステムや機器の開発が進められている。
(1) システムの開発
 さまざまなサービスを行う同軸ケーブルシステムの開発,研究は政府やCATV機器メーカーなどにおいて,ここ数年活発に行われてきている。
ア.生活情報システムの開発
 郵政省では,CATVの多角的利用の可能性を検討するため,46年9月にCCIS調査会を設置するとともに,この調査会の調査,研究と並行して,東京都下多摩ニュータウンにおいて,CCISを利用した生活情報システムの開発実験を行うこととした(実験対象世帯2,000)。 実験は,在来型CATVの利活用に資するため,テレビの再送信のほか,地域ニュースサービス,案内サービス,放送応答サービスなど住民のニーズが特に強く,実現が比較的容易と思われる各種の生活情報サービスを提供することにより,CCISに関する需要,経済性,技術上の問題点などを解明することをねらいとする。49年度末までにシステム及び所要機器の開発,施設の建設を終わり,50年春ごろから実験が開始される予定である。
イ.映像情報システムの開発
 通商産業省では,映像産業の振興という観点から,46年度から地域情報化システム調査委員会及びビデオ調査委員会を発足させ,映像産業の 実態調査,需要予測等を行ってきているが,更に,これと関連して実験タウンに実地に施設を作り,映像情報システムの開発を行うこととした。この映像情報システムは,CATV回線網と電子計算機とを結合させた双方向の情報システムであり,将来の多彩な情報需要にも応ずることができる,いわばモデルシステムともいうべき高度なものである。したがって,CATVにより提供することが可能といわれる多くのサービスが実験されることになっている。実験の場所は,奈良県生駒市の東生駒地区に決定している(実験対象世帯300)。50年度末までにシステム及び所要機器の開発,施設の設置を終わり,51年度から53年度まで実験を行うことが予定されている。
ウ.教育用ケーブルシステムの設置
 文部省は,視聴覚教育の手段として,テレビやフィルムなどのビデオ機器の活用を進めているが,そのモデルシステムの設置のため,46年度に千葉県館山市く教育委員会)に対し,教育用映像伝送システムの設置に対する補助金5,000万円を支出した。同市では,これに基づき46年度内に施設の設置を終え,47年9月からサービスを開始した。
 このシステムでは教育放送センターと市内の幼稚園,小学校,中学校,公民館とが同軸ケーブルで結ばれ,教育用の音声つき映像情報が伝送されている(テレビの再送信は行われていない。)。この同軸ケーブル網では映像情報で下り11回線,上り4回線まで伝送することが可能であるが,現在使用されているのは下り3回線と上り1回線の計4回線である。
 なお,同軸ケーブル網のほかに,ペアケーブル音声回線があり,放送内容に対する質疑応答ができるようになっている。
エ.防火防犯システムの開発
 火災や,住居の不法侵入などの異常事態が発生した場合,その発生場所から監視センターなど特定の場所まで自動的に警報信号を伝え,監視センター等から各家庭にいっせい緊急連絡を行う防火防犯サービスは,CCISによる実現が比較的容易なものとして注目されている。
 CATVを利用した防火防犯システムについては,CATV機器メーカーや防災機器メーカーなどにおいて研究開発が進められてきたが,最近新設団地などでその実用化が行われた。
オ.その他
 上記以外の省庁においても,それぞれの所管行政との関連で,CATVを利用した新しい情報システムの研究が進められている。
 経済企画庁では,CATVを利用して山村地域向けの教育,医療,生産物情報の提供を目的とした山村情報センターの設置構想をたて検討を行っている。
 農林省は,47年6月農産物流通情報化システム研究会を設置し,農産物の流通情報を提供するCCISの開発研究を行っている。
 厚生省では,CATVを利用した医療情報システムの開発構想をたて,システム開発を行うことを目的とした法人の設立などを検討している。
 自治省においては,同省が企画しているモデルコミュニティ計画の一環として,CATVを利用したモデルコミュニティ情報網建設の可能性について検討を行っている。
 以上のほか,民間においてもCATV機器メーカーやケーブルメーカーなどを中心にシステム開発が進められている模様である。
(2) 機器の開発
 機器の開発は,前項に述べたシステムの開発などに関連して主として民間において進められている。
 テレビの再送信用の機器については,製作技術に関する経験も十分であるところから,信頼度の高いものが使用されるようになっている。自主放送に必要なスタジオ機器も一応満足すべきものが入手できる段階に至っているとみてよい。
 双方向伝送用の増幅器については,下り10ch,上り数ch程度のものが既に開発され,館山市の教育用ケーブルシステムで実用化されることとなった。
 ニュース,お知らせ,スポーツの結果などを繰り返し連続的に提洪する自動反復サービス及び各家庭から放送センターに対し,放送内容に関する質問や回答を行い,センターでこれを自動的に処理する放送応答サービスは,CCISによる実用化が有望なものとして期待されているが,これに必要な機器は既に開発を完了している。
 近年,電子機器メーカー等の間で熱心に開発研究が行われているものに,静止画サービス用の機器がある。静止画サービスは,CCISに固有のものではなく,我が国ではNHKなどにおいて,無線を利用した放送型のサービスとして研究されていたのであるが,CCISへの適用が可能であり,また効果的でもあるところから,CCISによる新しいサービスとしても注目されるようになったものである。静止画サービスに用いられる機器のうち主要なものは,センター設備としての静止画蓄積装置と端末装置としてのフレームメモリである。静止画蓄積装置には,ビデオテープや磁気ディスク,蓄積管,マイクロフィッシュを使ったものなどが試作されている。また,フレームメモリは,磁気ディスクや磁気シートを使ったものなどが開発されている。
 防火防犯システム用の煙感知器,熱感知器,警報信号などの端末器は開発を終え,前述の団地内のCATVシステムで使用されている。
 自動検針用の端末器についても研究が進められているが,技術的な問題もあまりないので,実用化し得る程度のものの開発も間近いと見られる。
 予約サービス,CAIなど電子計算機を利用する未来指向型のサービスに必要な信頼度の高いデータ端末,モデムなどについても各メーカーで開発研究が行われている。
 以上,機器開発に関する状況を概観したが,これらの機器はその価格が概してかなり高く,その大幅な低下を図ることが,これらの機器の普及のかぎであると言われている。

 

 

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