昭和48年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

4 公害対策と通信

 近年における我が国の高度経済成長は,国民に物質的な豊かさをもたらしたが,反面,生産,消費の大規模化が進むことによって,さまざまな公害問題や都市問題を深刻化させてきた。そして,国民の関心は物質的な豊かさから,住みよい環境や生きがい等より質的,精神的豊かさへと移行しつつある。
 経済社会基本計画においても,「経済活動のあり方については,これまでの狭義の経済効率を追求したものから,公害の防除,自然環境の保全,無秩序な大都市集中の防止などを前提としたものにあらためる必要がある。」として,公害防除を経済活動の基本的な条件としている。
 公害問題の処理の上で,公害発生の状況のは握,データの収集,分析はそのスタートであり,公害知識の浸透,公害発生源の根絶は,そのゴールであるといえよう。
 これらをいかに効果的,機動的に行い得るかは極めて重要な問題であるが,この面でも通信手段の利活用が期待されている。
(1)公害監視と通信
 公害監視システムにおいて,観測データの迅速なは握,公害情報の一般への周知徹底,公害発生源への警告・規制等に当たっては,これらを迅速かつ能率的に行うとともに,その省力化が図られなければならないが,この面からも,テレメータ,データ伝送,データ通信等の電気通信技術が各方面で活用されている。
47年度末現在,東京,大阪,川崎をはじめ全国の主要15地域に国設大気測定局が設置されている。これらの測定局には,硫黄酸化物,浮遊粉じん,オキシダント,一酸化炭素等の各種自動計測機,粉じん採集器及び測定データを自動的に集計記録するためのデータ処理装置が設置されており,このデータをもとに大気汚染要因の解析,究明が行われている。
 また,地方における大気汚染の監視測定は,大気汚染防止法に基づき,常時監視義務を有する都道府県及び市において行われている。これらの地方公共団体の大気汚染監視網は標準的なテレメータシステムを導入して整備されており,測定データの収集等はすべて自動化され,遠隔操作により行われている。
 一方,水質汚濁に関しては,その監視体制を強化するため機器による水質測定の自動化を目ざし,都道府県は環境庁の援助を受けて,47年度末現在全国で13か所の水質自動監視測定機器を設置している。
 また,瀬戸内海,有明海,伊勢三河湾の関係各府県は,水産庁の援助を受けて,増養殖漁場を中心とした漁場環境の管理のため,9か所(48年度以降継続事業)に水質自動観測装置を設置している。
 更に,建設省においては,河川管理者の立場から,一級河川について47年度末現在32水系,57か所に水質監視測定機器を設置している。また,多摩川など4水系の一部について水質の集中監視を行うため,テレメータ装置を設置している。
(2)公害対策の広域化
 首都圏地域,阪神地域等大都市圏においては,当該地域全般に影響を及ぼす広範囲汚染の発生する場合が多く,このような場合には関係自治体が相互に大気汚染に関する情報を常時交換し,広域圏全般にわたる汚染状況を相互には握し,これに対処する緊急措置を関係都道府県が同時に講ずることが必要である。このために,首都圏地域(東京,埼玉,千葉,神奈川)及び阪神地域(大阪,兵庫)において,テレメータシステムによる情報交換システムが整備されており,広域的大気汚染の防止に効果をあげている。
 将来においては,更にシステムの広域化が進展し,公害総合データバンクとしての広域公害情報センターの構想も具体化してこよう。
 環境汚染,公害の原因には,多くの要因が複雑にからみあっており,その現象の解明と対策のためには,自然科学の分野のみならず,社会科学の分野をも含め,各分野間の研究成果の相互流通を十分に行うことが肝要である。更に環境保全に関する汚染監視測定や,気象,水象などの測定データ,あるいは経済データや人口データなどの社会データを利用しやすいように一元的に取り扱えるような情報処理体制の整備も必要となろう。このためにも電気通信の果たす役割は,ますます重要な意味を持ってくるものと思われる。

 

 

3 老人福祉と通信 に戻る 5 防災と通信 に進む