昭和48年版 通信白書

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7 電気・ガス・水道事業用

(1) 電気事業用通信
ア.現   状
 電気事業は.国民生活に直接的な関係をもっており,この事業が円滑に遂行されるためには,発電所,変電所等の各種施設の制御,監視を常に迅速に行う必要があり,このため通信回線が不可欠のものとなっている。
 通信回線は,本社,支社,発・変電所等の間に設けられ,発・変電所等の制御,監視を集中管理するため,中央(本社)又は系統(支社)給電指令所にこれらの回線を収容し,能率的かつ経済的な管理を行っている。このほか各電力会社が協力し,日本全土の電力の需給調整を図るため,中央電力協議会があり,各電力会社の回線は同協議会の給電連絡指令所に収容されている。これらの回線は原則として自営とし,無線通信回線等が利用されているが,幹線系についてはマイクロ回線となっている。また,水力発電所ではダムの放水を住民に警報する放流警報無線,気象観測用テレメータ回線がある。47年度末現在の主要電力会社別事業所別無線化状況は,第3-3-15表のとおりである。
 通信回線としては無線のほか,有線によるものがある。電話,テレメータ,テレコントロール,テレタイプ,データ伝送等の各種端末機器が総計9万9,326台,線路こう長は約15万8,700kmに及んでいる。
 企業別にみると東京電力(端末機器2万6,918台,線路こう長3万5,500km)を筆頭に,以下関西電力(端末機器1万6,296台),中部電力(同1万3,927台),九州電力(同1万3,065台)の順となっている(47年12月末現在)。
 電気事業は,電力会社以外では地方公共団体においても行われ,事業運営及びそれに必要な通信回線の構成も小規模ではあるが,電力会社と類似の形態となっている。
イ.動   向
 最近の電力総需要量は,毎年10%の伸び率を示しているので,各社とも電力資源の開発は,水力から火力,原子力に移行するすう勢にある。またその設備の大規模化,発電地の遠隔化等から電力輸送設備は超々高圧(50万ボルト)となる予定である。
 このような電力設備の大規模化に対処するため,電力系統の安定かつ効率的な運用を確保する通信設備,特に無線設備の整備が次の諸点に重点をおいて行われるとみられる。
[1] 電気事業の広域化に伴い,電力系統の事故を他地域へ波及,拡大させないため,事故区間を高速しゃ断する必要があり,キャリヤリレー(送電線の保護装置)の使用により高信頼化を図る。
[2] 電力系統設備の運転管理の合理化,自動化,集中管理制御化を図る。
[3] 変動する負荷に対して常時,安定した電力を供給するため,電子計算機を導入し,各設備を有機的に連係する給電,運用の総合的自動化を推進する。
 このため通信回線は,災害に強く,高信頼度を有し,かつ多量の情報を高速伝送する必要があり,本社,支社,基幹電力系統の各電気所間の多重無線回線の増設,既設回線を利用するう回ルートによる多ルート化,有線回線と無線回線の併設による多ルート化が行われ,かつデータ通信への移行が図られるものとみられる。
(2) ガス事業用通信
ア.現   状
 都市ガスの需要は,近年急速に増大しているため,幹線のガス導管は中圧管から高圧管,超高圧管に移行しつつある。このようなガス圧の増大等に伴って,導管事故によるガス災害が大規模化するおそれが増大している。このためガスの流量,圧力,各設備の動作状況等を常時監視,制御を行い,また,生産量の調節を行うため,本社と整圧所,工場等の間にテレメータ回線及び指令回線が設置されている。これらの回線は有線・無線回線であるが,主要各社はこれらの回線を本社の中央供給操作所に収容し集中管理を行うとともに,電子計算機を導入して情報処理にあたり,かつガス需要の動向を常時は握し,適切な需給調整を行っている。このため回線に対する高信頼度が要求されるので,無線回線が使用され,かつ本社,整圧所,工場間の幹線は多重回線となっている。
イ.動   向
 ガス利用は近年著しく増大し,都市ガスの需要に拍車をかけ,毎年約8%以上の伸び率を示しており,また,供給区域は毎年2%以上の伸び率で広域化している。これらの需要の変動に対応して,事業の拡大合理化等のため,機能の総合自動化が推進されるものとみられ,特に導管事故によるガス災害の大規模化の防止,事故復旧対策に重点をおいたガス施設の監視,制御,連絡体制が強化されていくものとみられる。このため通信回線の需要はますます増大するとともに,自動化に伴うデータ通信の採用,広域運営のための中央集中化に伴う通信システムの統一等から,高信頼度回線の要求等による無線回線化の需要が増大するものとみられる。
(3) 水道事業用通信
 水道事業は,健康で文化的な生活を支えるばかりでなく,あらゆる産業活動又は都市機能を維持していく上に必要不可欠の事業である。近年産業経済界の発展と相まって急激な都市化現象が現れ,都市周辺の人口は急速に増加し水需要の増大をきたしている。したがって,水道事業は取水場,浄水池,配水池等の水道各施設の新増設等施設の整備拡大とともに,合理的,能率的な管理維持を図るため,電子計算機を使用した集中管理方式を導入する等種々の対策も講ぜられている。
 また,水道事業は関係地域がその事業の特殊性から広範囲に及ぶので,各事業所と本部との間に不断の連絡を必要とするものである。特に浄水及び給水設備に事故が発生した場合には事故現場と本部間に緊密な連絡を図る必要がある。このため自営の無線通信回線が必要とされ,地方公共団体が設置する水道事業用無線通信回線は,固定系,移動系とも逐年増加の傾向にある。

第3-3-15表 主要電力会社別事業所別無線化状況(47年度末現在)

 

 

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