昭和48年版 通信白書

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1 企業活動に果たす通信の役割

 最近,企業活動に果たすデータ通信の役割が脚光を浴びているが,なお日常の企業活動における郵便,電信,電話といった基幹メディアの役割も大きな比重をもっている。昭和47年度に差し出された郵便物数は,100億通(年賀,選挙関係を除く。)を超えたが,そのうち何らかの形で企業活動に関係する業務用通信は,80%以上を占めているものと推定される。加入電話についても住宅用電話の普及が著しいとはいえ,利用度数は,事務用が圧倒的に多く,住宅用の約5.5倍となっており,電話が日常の企業活動に果たしている役割の大きさがうかがわれる。また,国際電話は,近年の企業活動の国際化とともに著しく伸び,その約65%が企業用通信である。
 電報の利用通数は,国内の場合38年度をピークにその後減少の一途をたどっており,最近における電報の役割は,慶祝,弔慰等を内容とする儀礼的な通信といわれるが,商品取引,市況連絡等業務用通信が占める割合は依然として42%あり,儀礼用の40%を上回っている。国際電報については,その96%が企業によって発信されている。
 また,従来電報を利用していた企業も情報量が増大するに従い,端末装置を自社に置く加入電信を利用する方が効率性,経済性の面で得策であることから,加入電信の需要が年々増大している。47年度末における加入数は,国内加入電信が5万9,000,国際加入電信が3,500に達し,これは米国の10万,西独の9万に次ぐ世界第3位の規模であり,企業間通信としての比重を高めている。
 更に,電話,電報,加入電信等の公衆通信系のほか,企業内情報流通量の増大に伴い,専用回線を利用する傾向が強まっている。その利用形態も,単なる電話,テレタイプから,データ通信,更には高速模写伝送,映像伝送まで極めて多彩になっている。専用回線は年々増加しており,47年度末で22万回線(国際回線を含む。)を超え,今後データ通信の普及につれてますます需要が増大するものと思われる。
 このように,通信メディアと企業活動との関係は極めて深いが,通信メディアの役割は単に情報の伝達にとどまらない。特に,距離と時間を克服する電気通信と迅速かつ高度な情報処理機能を結合することによって出現したデータ通信は,企業活動に大きなインパクトを与えた。企業における業務量の増大,活動の多様化,労働力需給のひっ迫といった経済社会環境の変化に対処するため,電子計算組織を導入する企業が増大しており,電子計算機の伸びは,毎年40%前後と高い率を示している。
 データ通信は,この電子計算機の利用を更に高度化させたものといえる。
 データ通信システムを最初に企業活動に導入したのは,39年に開始された国鉄の「みどりの窓口」と日本航空の座席予約システムである。これら座席予約業務は,座席台帳ファイルを中央の電子計算機に集中し,全国に配置された端末から通信回線を通じてファイルにアクセスすることによって,20〜30秒で座席指定券の発行を可能にした。その結果,顧客サービスを向上させるとともに事務処理を効率化し,増大する業務量の処理を可能にした。
 データ通信は,単に個々の企業内における業務の効率化,顧客サービスの向上のみならず,全国銀行データ通信システムにみられるように,全国87にものぼる異なる銀行間における為替業務通信を可能にした。現在,電電公社により提供されている科学技術計算サービスや販売在庫管理サービスは、大型の電子計算機を共同利用することによって,一社だけで電子計算機を設置するほどの業務量あるいは資金力を持たない企業,商店,事業所における電子計算機利用を可能にし,業務の効率化,経営の高度化を促進している。
 このようにデータ通信は,顧客サービスの向上,事務処理の効率化,経営の高度化に効果を発揮したのみならず,電子計算機のコスト・パフォーマンスを高めている。
 今日データ通信の適用業務は,政府,地方公共団体から金融,製造,運輸,電力,ガス,卸小売業など社会全般に及び,47年度末におけるシステム数は485に達している。

 

 

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