昭和48年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第4章 データ通信

第1節 概  況

 電子計算機等を電気通信回線に接続して行うデータ通信は,我が国では昭和39年ごろから始まった。
 その後,大型電子計算機の開発と企業間の提携強化の必要に促され,企業グループ等がオンラインで電子計算機を共同で設置したり,また,計算センター,情報センター等がオンラインで計算業務や検索業務を行う傾向が強くなってきた。しかし,公衆電気通信法は,専用線の共同使用・他人使用を厳しく制限しており,また,加入電話又は加入電信の回線に電子計算機を接続すること-いわゆる公衆通信回線の開放-も認めず,経済界・産業界等のこうした傾向に即応し得ない状態にあった。
 そこで,通信回線の利用制限を緩和して欲しいという各界の要望が漸次強まってきた。
 郵政省は,諸般の情勢にかんがみ慎重に検討した結果,電子計算機に接続するデータ通信回線の利用制度を現実的,段階的に整備していく方針を固め,44年秋,郵政審議会の答申を得て,
[1] 企業グループ等がデータ通信回線を共同利用できる制度
[2] 計算業務や検索業務のために不特定多数者がデータ通信回線を利用することができる制度
を新設する方針をたてた。
 そこで,第63回特別国会に公衆電気通信法の一部改正案を提出することとし,改正法案を策定したが,関係方面との調整が進まず,特別国会への提出は見合わせた。
 その後,公衆電気通信回線への電子計算機の接続については,市内通話料に時分制を採用し,併せて公衆通信回線の増設・改造を行えば,公衆通信回線に電子計算機の接続を認めても,一般公衆電気通信業務には支障がないとの結論に達した。
 45年9月,郵政省は,電電公社が加入電話網を利用した新たなデータ通信サービスを試行的に実施することを認可したが,その際,民間企業が公衆通信回線を利用してデータ通信を行うことも認める方向で法律改正の準備を進めることとした旨表明した。
 46年2月,新たな構想のもとに,電信・電話の料金及び制度の改正並びにデータ通信に関する制度の法定を内容とする公衆電気通信法の一部改正法案を策定し,第65回通常国会に提出した。同法案は同年5月成立,公布された。
 主な改正事項は次のとおりである。
 ・広域時分制の実施
 ・データ通信のための電気通信回線の利用制度の法定
 ・電電公社又は国際電電が設置するデータ通信設備利用制度の法定
 広域時分制は,47年11月12日から地域別に順次実施され,48年8月末までには全国で実施されることとなった。
 データ通信のための電気通信回線の利用制度は,特定通信回線の利用については46年9月1日から,公衆通信回線の利用については47年11月12日から電話料金の広域時分制の実施とともに逐次実施されている。
 電電公社の提供するデータ通信は,従来,試行役務として実施されてきたが,この法改正によりその利用制度が法定され,46年9月1日から実施されている。
 国際電電も48年3月からデータ通言サービスの提供を開始した。また,データ通信のための電気通信回線の利用制度の法定により,電電公社,国際電電以外の者が情報通信事業(オンラインにより情報処理サービス,情報提供サービスを行う事業)を営むことができることとなった。その結果,民間情報通信事業者の新規参入が46年9月以降相次ぎ,新しい情報通信事業の誕生をみるに至った。
 情報通信事業は,ますます復雑,多様化する企業の情報処理の高度化・迅速化に対処し,並びに顧客の求めに応じてする情報提供等のために不可欠な事業であり,情報化社会における中核産業の一つである。しかしながら,我が国の情報通信事業は,それ自身の成立がいまだ新しいこともあり,その発展のまえには幾多の問題を抱えている。その第一は公正競争の確保である。現在の我が国のデータ通信事業は,電電公社,国際電電というコモンキャリア側からの進出とノン・コモンキャリアからの進出,外資系企業からの進出と国内資本系企業からの進出,メーカー系企業からの進出と非メーカー系企業からの進出,というように種々異なる背景をもつ企業が併存している。
 こうしたなかで,各企業が技術とサービスによってのみ競いうる市場環境の整備が必要である。その第二は外国特に米国との格差是正である。50年12月には電子計算機の製造・販売・賃貸業の,51年4月には情報処理産業のそれぞれ100%資本自由化(48年4月27田閣議決定)を控えているにもかかわらず,我が国と米国との格差は依然として大きい。データ通信の普及状況を示す指標の一つであるオンライン化率は,英国の12%(1970年9月),米国の16%(1970年末)に比べ,我が国は46年度末で3.6%,47年度末でも3.9%にとどまっている。しかも,データ通信システム全体に使われている国産機対外国機比は,47年度末現在53.2%対46.8%と国産機がわずかに優位にあるが,自営システムについてみると,国産機49.4%対外国機50.6%と両者の割合は逆転し,更に政府,地方公共団体及び国立大学を除いた民間企業等のシステムにおいては39.5%対60.5%と外国機が優位にある(第3-4-5表及び第3-4-6表参照)。
 このほかに,データ通信専門技術者の養成,端末機器の改善,普及,低廉化,情報に対する価値の意識の定着と保護,国によるビッグプロジェクトの発注,情報通信事業に対する補助と融資,データ通信制度の研究・改善等解決を要する問題は多く,新たな行政需要を生みだすに至っている。

 

 

6 無線従事者の養成課程の実施状況 に戻る 第3部第4章第2節1 データ通信システムの設置状況 に進む