第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第2章 グリーンICTによる環境負荷軽減と地域活性化

(1)米国


ア グリーン・ニューディール政策

●国家をあげた環境ビジネスへの大規模投資により、環境負荷低減と雇用創出の両立を推進

 グリーン・ニューディール政策は、米国が世界最大の温室効果ガス排出国である現状認識の下、環境負荷を低減させるとともに、その取組を産業の活性化につなげる構想に基づいた政策プログラムである。2009年1月には、再生可能エネルギーへの1,500億ドル(約13兆5,000億円)の投資(10年間)や500万人のグリーン雇用の創出を公約に掲げ、さらに2010年末には 、公共施設の省エネルギー化に伴う250万人の雇用創出策を打ち出している。このように政府が先導し環境ビジネスで雇用創出につなげるために、多額の資金注入を表明したという事実が画期的であるため、世界中から大きな注目を集めている。

イ スマートグリッド構想

●ICTを活用した次世代電力網の構築を官民あげて推進

 米国では既存の電力網の老朽化が進んでいる現状をうけて、ICTの積極的な活用、送電網の運用やリソースの最適化、電気自動車などの高度な電力貯蔵技術の導入、消費者への電力情報の適時提供および電力管理機能の提供などにより、信頼性が高く安全かつ効率的でクリーンな次世代電力網「スマートグリッド」を構築することを目指している。米国のスマートグリッド構想は、2007年12月の「エネルギー自給・安全保障法」ではじめて提唱され、2009年2月に成立した「米国経済再生法」では110億ドル(約9,900億円)がスマートグリッド関連プロジェクトなどに割り当てられている。
 さらに、オバマ大統領は2009年10月に約34億ドル(約3,060億円)の補助金を、電力会社や市などによる100件のスマートグリッドプロジェクトに割り当てると発表した。具体的には、電力会社の送配電管理を支援するスマート変圧器20万個以上、送電網センサー850個、700の自動変電所システムの設置に加え、家庭内での電力使用を管理するスマートメーター 1,800万個、家庭内ディスプレイ100万個、スマートサーモスタット(温度調節器)17万個、その他負荷コントロール機器17万5,000個の導入を助成する予定である。本プロジェクトについては、米国における約200の企業およびコミュニティが関与していることから、万単位の雇用が創出される見込みである8

ウ Save Energy Now(in Data Centers)

●米国産業全体を見据えつつ、データセンターの省エネルギー化を幅広く支援

 Save Energy Now は米国環境保護庁(EPA)の施策であり、連邦政府、企業、州政府、公的団体、大学等と連携し、各種の企業が生産性の向上とエネルギー消費用削減を可能とする技術を採用あるいは実践することを支援している。
 Save Energy Nowは、データセンターが米国経済において高成長を示す一方、エネルギー消費量が極めて大きくエネルギー効率の改善が重要であるという認識の下、Save Energy in Data Centersと称する各種の支援策を展開している。具体的には、消費電力測定ツールの無償提供、消費電力削減の成功事例の提供、消費電力削減量が大きいデータセンターの表彰、本施策を支援する州政府に対する助成金の支給、データセンター専門家の認定制度(Data Center Certified Energy Practitioner Program)の実施などが存在する。

 特に最後にあげたデータセンター専門家の認定制度は、専門家としてのレベルを「レベル1 データセンターで利用するICT機器、空調等運営に必要な知識を持つ人材」と「レベル2 ソフトウェアを使いこなし、参加企業に具体的な解決策の提案を行える人材」の2段階に設定しているなど、他に例のないきめ細かな施策となっている。
 EPAはこれらの支援策により、2011年までに米国のデータセンターの年間消費電力を100億kWh削減することを目標に掲げている。

エ Energy Star

●販売業者への奨励金助成、購入者への税額控除といった特典がある、米国の省エネルギー製品認定制度

 ICT関連の消費財の消費電力量を削減することを目的として、消費電力量に関して一定の基準をみたした消費財に、Energy Starと呼ばれるシールの使用を認める規格である。前掲のSave Energy Now同様に、米国環境保護庁(EPA)が推進しており、Energy Star適用製品を販売している企業への奨励金の支給、Energy Star適用製品を購入する消費者に最大1,500ドル(約13万5,000円)の税額控除、積極的に導入している企業の表彰、認知向上のための広報活動といった個別の施策を合わせて展開している。


8 株式会社NTTデータ「Digital Government 米国マンスリーニュース 2010年3月号 米国におけるスマートグリッド構想の動向」(http://e-public.nttdata.co.jp/f/repo/685_u1003/u1003.aspx)を参照
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