 第1部 総論
 第1節 昭和55年度の通信の動向
 第2節 情報化の動向
 第3節 諸外国における情報通信の動向
 第1節 災害対策の重要性と通信の役割
 第2節 災害時における通信の役割
 第3節 通信分野における災害対策
 第4節 新しい通信システムの開発と今後の課題
 第2部 各論
 第1章 郵便
 第2節 郵便事業の現状
 第2章 公衆電気通信
 第2節 国内公衆電気通信の現状
 第3節 国際公衆電気通信の現状
 第4節 事業経営状況
 第3章 自営電気通信
 第1節 概況
 第2節 分野別利用状況
 第4章 データ通信
 第2節 データ通信回線の利用状況
 第3節 データ通信システム
 第4節 情報通信事業
 第5章 放送及び有線放送
 第6章 周波数の監理及び無線従事者
 第1節 周波数の監理
 第2節 電波監視等
 第7章 技術及びシステムの研究開発
 第2節 基礎技術
 第3節 宇宙通信システム
 第4節 電磁波有効利用技術
 第6節 データ通信システム
 第8節 その他の技術
 第8章 国際機関及び国際協力
 第1節 国際機関
 第2節 国際協力
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第3節 諸外国における情報通信の動向
1 通信政策及び事業運営を巡る動向
(1) 米国通信法改正の動向
米国議会における通信法改正の動きは,1976年の「消費者通信改革法案」を契機として,近年急速な高まりを見せている。通信法改正案は,これまで上院,下院合せて7回提出されているが,いずれも審議未了により廃案となっている。
下院では,公衆通信事業者に関する項目の改正を目的として提出された,80年通信法案が,1980年7月,商務委員会で可決されたものの,司法委員会は,係争中の司法省・AT&T間での反トラスト訴訟に影響することを懸念して,これに強く反対し,結局本会議に上程されなかった。
一方,上院では,二つの通信法改正案が,通信小委員会で審議された結果,1980年6月,一本化された通信法案に取りまとめられた。しかし,この法案による連邦通信委員会(FCC)の権限強化について,AT&Tをはじめ公衆通信事業者から反対が起こり,審議は事実上中断され,法案は廃案となった。
その後,1980年11月の総選挙の結果,共和党のレーガン政権が誕生するとともに,上院では共和党が多数党となり,上・下院の各種委員会委員長も大幅に入れ替わった。1981年3月,下院通信小委員会ワース新委員長は,80年通信法案を基盤とした新しい法案作成の準備を進めている旨明らかにしており,近く議会に上程されるものとみられる。
上院では,1981年4月,上院商務委員会パックウッド委員長らが中心となり,81年通信法案を議会に提出し,同年7月に上院商務委員会で可決された。法案は,国内通信事業者の競争促進と規制緩和を目的とし,AT&Tが子会社を介して高度通信サービス等の提供ができるよう1956年の同意審決な修正すること,FCCに対しAT&Tの機構改革に関する権限を与えないことなどを規定している。
また,放送関係の通信法改正案は,1981年1月(ラジオ関係)及び同年3月(テレビ関係),上院に提出され,これらの法案のうち免許制度の改正項目については,予算法案に含められ,上院を通過した。
その後,両院協議会が開かれ,予算法案の項目及び内容を一部修正の上合意がみられた。その結果,同法案は1981年7月,上・下両院において採択され成立し,通信法は改正された。
今回改正された通信法の主な内容は,次のとおりである。
[1] テレビ局の免許期間を3年から5年に,ラジオ局の免許期間を3年から7年に延長すること
[2] 最初の免許において,複数の免許申請がなされた場合には,従来の比較検討方式を改め,ランダム・セレクション(抽選)方式を採用すること(その具体的な方式は,この法律の発効日(8月13日)以降180日以内にFCCが規則で定める。)
(2)FCC第2次コンピュータ調査最終決定の修正
米国の連邦通信委員会(FCC)は,1980年5月,第2次コンピュータ調査に関する最終決定の告示を行った。最終決定は,仮決定の内容をさらに明確にしたものであったが,AT&Tをはじめ多くの関係者から多数の再審査請求及びコメントがFCCに提出され,これに並行して裁判所に対しても再審査請求の提訴が行われ,いくつかの問題点が明らかになった。これに対し,FCCは部内検討した結果,1980年12月,第2次コンピュータ調査の最終修正の告示を行った。しかし,今回の最終修正においても未解決の事項,ゼネラル電話電子工業会社(GTE)とテレネット社の合併条件に関する問題,プロトコル変換及びコード変換のサービス分類に関する問題,AT&TのCCSIIサービス(Custom Calling II Service)に対する特別措置の問題等について,FCCは引き続き調査検討することとしている。また,FCCは,最終修正に対する再々審査のコメントを関係者に求めており,これを巡って関係者間でかなりの論議を呼ぶものとみられ,今後の動向が注目される。
なお,最終修正された主な点は,次のとおりである。
[1] GTEに対し,高度サービス及び宅内機器の提供について,分離子会社によることを要求しない。したがって,高度サービス,宅内機器の提供に当たって分離子会社によることを要求される通信事業者は,AT&Tのみとする。
[2] 1982年3月1渭以降,すべての公衆通信事業者は,宅内機器を通信サービスから分離し,同日以降提供される新しい宅内機器及びFCCにより規制されている宅内機器(過電圧保護装置,宅内配線設備,公衆電話,多重化装置を除く。)は非規制とする。複合料金宅内機器は,非規制の実施方法,時期について別途検討する。
[3] AT&Tの分離子会社に伝送施設の所有を禁止する項目については,同一営業区域の複数局所間におけるサービス提供のために子会社が施設を所有することを認める。
(3)英国郵便電気通信公社分離問題等の動向
英国では,1979年5月,労働党から保守党へ政権交替が行われた。保守党は,1977年7月に提出された郵電公社調査委員会(カーター委員会)の勧告について,政権をとればその主要項目を実施することを表明してきた。1979年9月,政府は,英国郵便電気通信公社(BPO)の経営効率化を図るため,郵便部門と電気通信部門とを分離すること,及びBPOに機器を独占的に提供してきた国産メーカの国際競争力を強化するため端末機器を自由化することを内容とした「郵便及び電気通信事業改善の政府案」を発表した。また,1980年7月,産業大臣は,BPOの分離及び端末機器の自由化を進める意向を明らかにし,この問題は,急速に具体化し始めた。
政府は,1980年11月,BPOの分離及び端末機器の自由化を骨子とした英国電気通信公社法案」を議会に提出し,法案は,1981年7月に成立した。同法では,[1]電気通信業務を担当する事業体を英国電気通信公社(British Telecommunications),郵便・振替業務を担当する事業体を郵便公社(the Post Office)とすること,[2]産業大臣が両事業体の監督権限を持つこと,[3]本電話機を除く端末機器を自由化すること,[4]産業大臣が民間企業の付加価値通信網サービスの設定について許可を与えることなどが規定されており,大幅な権限が産業大臣に与えられている。
また,同法の成立に伴い,産業省の情報技術担当大臣は,1981年1月に提出されたビースレイ報告書の勧告に基づき,民間企業による付加価値通信網サービスの提供等,段階的に国内の電気通信回線網の自由化を推進することを明らかにしている。
(4)カナダ郵便事業の公社化の動向
カナダでは,郵政大臣から郵便事業の経営形態の見直しについて,調査検討を委託された調査機関が,1969年11月,郵便事業の公社化を勧告する報告書を提出した。その後,この問題は,一時中断されていたが,政府は,1980年7月,郵便事業の経営主体を郵政省から郵便公社に変更する「カナダ郵便公社法案」を議会に提出した。法案は,1981年4月,議会を通過し,今秋にもカナダ郵便公社が誕生するものとみられる。今回の組織改正は,郵便事業運営の自律性強化,財務手続の簡素化,労使関係の円滑化等による効率的な事業運営を行うことを目的としており,カナダの政府機関が公社形態に移行する最初のケースとなる。また,同法では,公社の設立,設立目的,組織と権限,財務手続,料金の制定等が規定されている。
(5)英国放送事業に関する動向
英国における商業放送法改正法案は,1980年2月,議会に提出され,同年11月に成立した。新放送法の主な内容は,[1]インデペンデント放送協会(IBA)の存続期間の15年間延長,[2]ウェールズ語テレビ放送の実施,[3]放送苦情処理委員会の新設,[4]第4テレビジョン・サービスの実施等である。
同法は,公開放送協会(OBA)に第4テレビジョンを運営させるというアナン委員会や労働党の提案を退けたものの,テレビジョンの性格及び番組について,アナン委員会の勧告の多くを取り入れている。
同法では,第4テレビジョンは,[1]IBAを運営主体とし,IBAはその子会社に実施をゆだねること,[2]番組の提供を,従来の番組製作会社のほか独立プロダクションから受けること,[3]必要経費は,番組製作会社が負担し,これらの会社は,その費用を広告収入でまかなうこと,[4]放送内容については,英国放送協会(BBC)及びインデペンデント・テレビジョン(ITV)と競合せず,教育的性格を持つ番組の編成,番組内容及び形態の実験的試みを実施することなどを規定している。IBAは,1982年秋の放送開始を目途に,現在その準備を進めている。
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