昭和56年版 通信白書

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6 宇宙通信の実用化の促進

 我が国の宇宙開発は,基礎固めを重点とした段階を終え,今後は,実利用の多様な計画を推進すべき時期に至っている。52年12月に実験用中容量静止通信衛星(CS)が,また,53年4月に実験用中型放送衛星(BS)が打ち上げられ,各種の実験が実施されてきたが,その成果を踏まえるとともに,通信,放送分野における衛星の実利用に対する強いニーズにかんがみ,実用通信衛星及び実用放送衛星の開発が推進されている。
(1)通信衛星2号(CS-2)計画
 通信衛星は,[1]地上の災害の影響を受けにくいこと,[2]地理的障害に左右されず遠距離,広域通信が可能であること,[3]通信量の時間的及び場所的変動に対する適応性に富むことなどの特徴を有する。このため,通信衛星は,非常災害時における通信の確保,離島,辺地等との通信回線の設定等に有効であり,また,将来は衛星の大型化に伴い,回報通信及び統合ディジタル通信等の新たな分野への利用が考えられる。
 通信衛星2号(CS-2)は,我が国初の実用通信衛星であり,57年度に本機(CS-2a)を,58年度に予備機(CS-2b)を打ち上げることとしている。CS-2は,基本的には,CSと同規模,同性能の衛星であるが,CSの開発成果を活用するとともに,N-IIロケットに適合させること,寿命を5年目標とすること,WARC(世界無線通信主管庁会議)において決定された技術基準に適合させることなど所要の改修を行いながら開発が進められている。CS-2は,非常災害時における通信の確保,離島との通信回線の設定及び臨時回線の設定等を目的として,電電公社の公衆通信及び行政機関等の公共業務用通信に利用することとしている。
(2)放送衛星2号(BS-2)計画
 放送衛星は,1個の衛星により高仰角で広い地域をカバーできるという特徴を有することから,テレビジョン放送の難視聴解消等に有効であり,また,将来は,医療,教育等の専門放送や高品位テレビジョン放送等への利用が考えられる。
 放送衛星2号(BS-2)は,我が国が開発する初の実用放送衛星であり,58年度に本機(BS-2a)を,60年度に予備機(BS-2b)を打ち上げることとしている。BS-2は,基本的には,BSと同規模,同性能の衛星であるが,BSの開発成果を活用するとともに,N-IIロケットに適合させること,寿命は5年を目標とすること,WARCにおいて決定された技術基準に適合させることなど所要の改修を行いながら開発が進められている。BS-2は,辺地や離島におけるNHKテレビジョン放送の難視聴解消に利用することとしているほか,非常災害時における放送の確保のための利用も期待されている。
(3)第二世代の実用通信衛星及び実用放送衛星
 60年代の前半には,CS-2及びBS-2の寿命を考慮すると,第二世代の実用衛星として,通信衛星3号(CS-3)及び放送衛星3号(BS-3)の打上げが必要となる。このため,郵政省は,CS-3及びBS-3の利用の在り方に関する基本的な考え方についての調査研究を行うことを目的として,55年6月,電波利用開発調査研究会の下に学識経験者から成る実用衛星部会を設置した。実用衛星部会では,CS-3及びBS-3について,利用の促進を図るべき分野及び促進を図るための方策についての調査研究が進められている。
(4)通信・放送衛星機構
 実用通信衛星及び実用放送衛星の利用の推進に当たっては,静止軌道及び宇宙通信用周波数の有効利用,資金及び技術力の集約化並びに実用衛星の管理,運用等を一元的かつ効率的に行う機関を設立する必要があることから,54年8月,通信・放送衛星機構法に基づき,郵政大臣の認可を得て通信・放送衛星機構が発足した。
 機構の主要業務は,[1]通信衛星及び放送衛星を他に委託して打ち上げること,[2]通信衛星及び放送衛星の位置,姿勢等を制御すること,[3]通信衛星及び放送衛星にとう載された無線設備を,これを用いて無線局を開設する者に利用させることである。
 機構の資本金は,55年度末現在で18億円であるが,58年度までに約68億円に増資される計画であり,衛星管制センターの建設に充当される予定である。この資本金は,政府及び政府以外の者が50%づつの割合で出資しており,政府以外の出資者は,電電公社,NHK及び国際電電となっている。
 衛星管制センターの建設については,54年度に取得した用地の造成,局舎の建設及び通信衛星管制施設の整備に着手した。また,衛星の打上げ委託については,CS-2の打上げについて54年度に宇宙開発事業団に委託したが,55年度は,BS-2の打上げについて委託した。

第2-7-5表 CS-2,BS-2の概要

 

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