昭和56年版 通信白書

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第4節 電磁波有効利用技術

1 陸上移動業務の狭帯域化通信方式

 近年,我が国における社会活動の多様化,広域化に伴い陸上移動通信の需要は,増加の一途をたどり,特に,VHF帯及びUHF帯陸上移動業務用周波数の需要の増大は著しく,当該周波数帯における需給の関係はひっ迫してきている。このような状況に対処するため従来セルコール方式の導入,集中基地方式の採用等により周波数の有効利用を図ってきたところであるが,さらに,今後の需要増に備えた新たな狭帯域化通信方式の開発等,周波数の一層の有効利用を図る必要に迫られている。
 このため,51年3月電波技術審議会に対し,「VHF,UHF帯における狭帯域化通信方式」について諮問がなされた。同審議会は,51年度から4年間にわたり主として,400MHz帯における狭帯域FM通信方式について審議を行い,チャンネル間隔を現行の25kHzから12.5kHzに縮小した狭帯域化方式に関する技術的条件について結論が得られたので,55年3月一部答申を行った。
 55年度は,その他の狭帯域化通信方式について継続審議を行い,そのうちリンコンペックスによるSSB通信方式に関しては,耐フェージング特性,耐雑音妨害特性及び近接波干渉等を対象として,室内シミュレーションにより種々の条件の下でのオピニオン評価試験等を行うとともに,室内実験結果を確認するための野外実験を実施し,その技術的条件について,結論が得られた。これにより狭帯域化通信方式に関する諮問に対しては,すべての審議事項について,結論が得られたので56年3月完結答申がなされた。
 同答申のうち,リンコンペックスによるSSB通信方式の概要は次のとおりである。リンコンペックスは,元来短波無線電話におけるSSB通信方式の品質改善を目的として,開発されたものであるが,諸実験の結果,VHF帯においてもフェージングに強く,かつ,低受信電界時の雑音特性に優れるなどの利点を有していることが確認され,VHF,UHF帯におけるSSB通信方式の改良方式として最も実用レベルに近く,狭帯域FM通信方式に次ぐ有望な狭帯域通信方式として,その実用化が期待されるところである。次に主な技術特性等について述べる。
(1)送信部
 ア.適用周波数帯
 UHF帯については,周波数安定度などの点から,適用は難しく,60MHz帯,150MHz帯等VHF帯が適当である。
 イ.周波数間隔
 室内及び野外伝搬による干渉特性などの実験結果により,周波数間隔は約7kHzが適当である。
 ウ.変調方式
 陸上移動無線特有の深くて早いフェージングにおける自動制御機能を考慮し,低減搬送波方式とする。
 エ.周波数安定度
 60MHz帯で±3.5×10-6,150MHz帯で±1.5×10-6程度とするのが適当である。
 オ.占有周波数帯幅
 音声の自然性や選択信号などの十分な伝送を考慮し,3.6kHz程度とするのが適当である。
 力.隣接チャンネルへの漏えい電力
 隣接チャンネル周波数における希望波の電力減衰量を60dBとするのが適当である。
(2)受信部
 ア.局部発振器の周波数安定度
 60MHz帯で±3.5×10-6,150MHz帯で±1.5×10-6程度とするのが適当である。
 イ.感度
 2μV(12dB SINAD法)とするのが適当である。
 ウ.通過帯域幅
 3dB低下幅とし,3.8kHzとするのが適当である。
 エ.隣接チャンネル選択度
 60dBとするのが適当である。
(3)リンコンペックス部
 ア.振幅制限レベル
 基準入力レベルより10dB高い値とするのが適当である。
 イ.音声チャンネル圧縮範囲
 振幅制限レベルから40dBの範囲とするのが適当である。
 ウ.制御チャンネルの周波数偏移の範囲
 無変調時の周波数から低域側に160Hzとするのが適当である。
 エ.周波数利用効率
 周波数利用効率に大きな影響を与える同一チャンネル干渉比及び隣接チャンネル干渉比は,現行FM通信方式と同程度以上得られることから,周波数間隔の縮小分をそのまま周波数利用効率の向上に役立てることができる。例えば,60MHz帯及び150MHz帯における現行FM通信方式の周波数間隔をそれぞれ2分割,3分割して本方式を適用することは十分可能である。
 

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