昭和56年版 通信白書

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第4節 新しい通信システムの開発と今後の課題

1 災害対策を目的とした新しい通信システムの開発

 これまで紹介してきたように,各通信・放送事業体及び防災関係機関等は通信に関する様々な災害対策を講じてきている。こうした各種の対策に加えて,最近では,衛星通信,放送等の分野における技術革新の成果を踏まえて,災害対策を目的とした新しい通信システムの開発が進められており,災害対策を更に高度なものに発展させようとしている。
(1)災害対策用衛星通信システム
 衛星通信はその特徴として,地理的な条件に左右されない回線設定が可能であること,極めて広い区域を対象としたサービスが可能であることなどの利点を持っているが,さらに,地上災害の影響を受けにくいため,災害対策上極めて有効なシステムであると考えられている。
 このため,郵政省では,54年度から国土庁,警察庁,海上保安庁,建設省,消防庁と協力し,災害対策用衛星通信システムに関する調査を実施しており,56年3月には,CS応用実験として実験用中容量静止通信衛星(CS「さくら」)を利用し,災害対策用共通チャネルを設定した場合の回線設定及び切替技術に関する実験を実施し,成果を収めている(第1-2-24図参照)。また,国土庁の主宰する総合防災訓練に合わせて,54年度においては,電電公社及びNHKの協力を得て,実験用中容量静止通信衛星(CS「さくら」)及び実験用中型放送衛星(BS「ゆり」)を用いて,また55年度は電電公社及び警察庁の協力を得て実験用中容量静止通信衛星(CS「さくら」)を用いて,非常災害時における通信の確保及び被災情報の伝達等の実験を行った。
 57年度に打上げが予定されている実用の通信衛星2号(CS-2)では,離島及び辺地との通信回線確保のほか,これらの実験の成果を踏まえて,災害対策のための用途として,[1]災害時等に備えた重要回線のバックアップ回線の確保,[2]災害時等における被災現場等との連絡回線の設定等を行うこととしている。
 また,このための地上設備としては,機動性を発揮するように可搬型のものとして,小型アンテナと組み合わせた非常用の電話装置,テレビ画像,ファクシミリ伝送装置が開発されつつある。
(2)緊急放送システム
 災害時における予報・警報等の緊急情報を迅速,正確に住民に周知する手段としては放送が最も効果的である。しかしながら,放送の場合,深夜等ラジオ・テレビ受信機のスイッチが入っていない時には受信されないという欠点がある。
 この問題を解決するため,緊急放送システムの開発が郵政省と放送事業体等の協力で進められている。
 このシステムは,テレビやラジオの放送電波に特定の信号(緊急警報信号)を重ねて発信することにより,受信者の備えるアダプター(緊急警報信号受信機)を用いてテレビやラジオのスイッチを自動的に入れ,警報音の発生と情報の伝達を行うというものである。
 郵政省では55年1月,郵政省,NHK,民放事業者等を構成員とする「緊急放送システム技術懇談会」を設置し,緊急放送システムについて予想される利用形態,望ましい信号方式等について予備的検討を行った。さらに,55年3月電波技術審議会に「放送電波に重畳する緊急警報信号に関する技術的条件」について諮問を行い,56年3月,同審議会からその一部である「緊急警報信号方式の基本について」の答申を得た。同審議会は,56年度から技術基準の審議を行い,できるだけ早期に完結答申することを予定している。

第1-2-24図 災害対策用共通チャンネル使用の実験システム概念図

 

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