 第1部 総論
 第1節 昭和55年度の通信の動向
 第2節 情報化の動向
 第3節 諸外国における情報通信の動向
 第1節 災害対策の重要性と通信の役割
 第2節 災害時における通信の役割
 第3節 通信分野における災害対策
 第4節 新しい通信システムの開発と今後の課題
 第2部 各論
 第1章 郵便
 第2節 郵便事業の現状
 第2章 公衆電気通信
 第2節 国内公衆電気通信の現状
 第3節 国際公衆電気通信の現状
 第4節 事業経営状況
 第3章 自営電気通信
 第1節 概況
 第2節 分野別利用状況
 第4章 データ通信
 第2節 データ通信回線の利用状況
 第3節 データ通信システム
 第4節 情報通信事業
 第5章 放送及び有線放送
 第6章 周波数の監理及び無線従事者
 第1節 周波数の監理
 第2節 電波監視等
 第7章 技術及びシステムの研究開発
 第2節 基礎技術
 第3節 宇宙通信システム
 第4節 電磁波有効利用技術
 第6節 データ通信システム
 第8節 その他の技術
 第8章 国際機関及び国際協力
 第1節 国際機関
 第2節 国際協力
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2 航空保安用
(1)航空交通管制用通信
ア.航空移動業務
航空機が航行中,地上の航空管制官又は航空管制通信官との間に行う空地通信である。国内を航行する航空機に対しては,札幌,東京,福岡及び那覇の各航空交通管制部並びに各空港の管制機関及び管制通信機関が,また,洋上を航行する航空機に対しては,新東京国際空港及び那覇空港の各管制通信機関がそれぞれの通信責任分担空域において,無線電話による航空交通管制通信を実施している。
この業務に使用されている電波は,短波帯とVHF帯であるが,短波帯はITUで分配された2,850kHz〜17,970kHzの周波数帯を,VHF帯は118MHz〜136MHzの周波数帯を使用し,通信は無線電話によって行われている。
55年度においては,航空交通管制業務用航空局が,札幌(釧路),帯広,札幌(秋田),新秋田,東京(三河),東京(串本),下地島に開設された。
イ.航空固定業務
(ア)航空固定電話
航空機を管制する地上局が,自己の管制空域を離れて,隣接する空域へ航行する航空機の管制を,隣接の管制機関へ移管するための隣接管制区管制機関相互間の直通無線電話通信である。
国内を航行する航空機の管制移管のために,札幌,東京,福岡,那覇相互間に,また,国際線就航便のために,東京とアンカレッジ,ホノルル及び大邸との間,福岡と大邸との間,那覇と台北,ホノルル,大邸,マニラ及び上海との間,並びに札幌とハバロフスクとの間に,それぞれ有線,衛星,マイクロウェーブ又は短波による直通電話回線が設定されている。
(イ)航空固定電信
航空機が飛行前にあらかじめ,飛行経路上及び目的空港に関する航行の安全上必要な情報並びに航空管制上必要なデータを交換するために行われる電信通信(国際通信網としては,航空固定電気通信網(AFTN回線))である。
国内を航行する航空機の航空交通業務通報(ノータム・捜索救難に関する通報等)は,各空港及び管制部を接続する国内テレタイプ通信網により,また,国際線就航機のための通報は,東京AFTN通信局とモスクワ,ハバロフスク,カンサスシティ,香港,ソウル及び北京間並びに那覇AFTN通信局と台北間に設定されているAFTN回線により取り扱われており,ケーブル,衛星,マイクロウェーブ又は短波が使用されている。
(2)航空無線航行用通信
現在,航空機は,パイロットの目視によるほか,地上の航空保安無線施設及びこれに対応して機能する機上の無線航行装置を利用して飛行を行っている。
機上の装置には,空地通信のためVHF帯及び短波帯を使用する通信設備のほかに,航行装置としてADF(自動方向探知機),VOR受信装置,ILS受信装置,電波高度計,気象レーダ,ATCトランスポンダ,DME機上装置,ドップラレーダ,オメガ受信装置等がある。
地上においては,55年度末現在第2-3-12表に示すような各種の航空保安無線施設が設置されており,航空機は,これらの航空保安無線施設及び機上の装置を利用することにより自機の針路,位置,速度,高度等を確認し安全運行を行っている。
地上の航空保安無線施設のうち,無線標識局(NDB)については,第1地域(ヨーロッパ(ソ連を含む。)及びアフリカ)の長中波放送用周波数割当計画の凍結解除に伴い,我が国の一部のNDBの周波数を変更するとともに,今後の対策を立てるための調査を実施している。
55年度には新帯広空港の開設に伴い,ILS及びVOR/DMEが同空港に設置されたほか,ILSが宇部に,VOR/DMEが札幌,花巻,高知,徳之島に,VORTACが奄美,久米島に,ARSR/SSRが三河にそれぞれ設置された。
(3)飛行場情報提供用通信
飛行場情報提供用通信は,航空機が特定の空港で離着陸する際に必要な風速,風向,視程,飛行場の状態,航空保安施設の運用状況,使用滑走路の情報等を連続して提供するものである。この業務は,飛行場情報自動通報業務(ATIS)といい,これまで運輸省が,東京国際(羽田),新東京国際(成田),大阪国際,名古屋,福岡,宮崎,鹿児島,那覇の各空港に対空送信施設を設置・運用しているが,55年度には,千歳空港に新たに設置した。
(4)航空路情報提供用通信
航空路情報提供用通信は,飛行場周辺以外の空域を飛行するすべての航空機に対して,その航行の安全に必要な情報を対空送受信及び対空送信(放送)により提供し,並びに機長報告等航行の安全に関する空地通信を実施するものである。この業務は,航空路情報提供業務(AEIS)といい,札幌,東京,福岡及び那覇航空交通管制部のAEISセンターからVHF帯の遠隔対空通信施設を使用して運用するものであり,運輸省では,これまで石狩,仙台,河和,土佐清水,岩国,沖永良部に対空送信施設,帯広,横津岳,上品山,新潟,成田,岩国,三国山,河和,土佐清水,三郡山,加世田,奄美,八重岳に対空送受信施設を設置・運用しているが,55年度においては,箱根,三河に対空送受信施設を新たに設置し,既設河和の同施設を廃止した。
(5)将来の動向
航空需要の増大に対処し,かつ,航空交通の一層の安全性と能率の向上を図るため,新技術の導入,航空保安施設の整備拡充等種々の計画が行われている。
ア.マイクロ波着陸方式(MLS)
従来のILS方式に比べて,より精密かつ多様な進入経路の設定が可能であるMLSは,その実用化に向けて着実に前進しており,1981年のICAOの通信部会において,その技術基準が作成され,ICAO付属書に標準勧告方式として採用することが勧告されるとともに,将来に向けて4期(1989年まで,1990年〜1994年,1995年〜1999年,2000年以降)に分けての移行計画が作成された。
国内では,現在,その実用化のための研究・開発・実験が行われている。
イ.衝突防止装置(CAS)
航空機の衝突防止装置については,現在,我が国を含む世界各国において実用化のための研究が続けられている。
ウ.長距離運航管理通信
1978年の航空移動(R)業務に関する世界無線通信主管庁会議で,ワールドワイドの運航管理通信用の短波帯周波数が区域分配され,その周波数帯により1982年2月18日及び1983年2月1日からその使用が可能となるので,この周波数の使用について検討がなされている。

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