 第1部 総論
 第1節 昭和55年度の通信の動向
 第2節 情報化の動向
 第3節 諸外国における情報通信の動向
 第1節 災害対策の重要性と通信の役割
 第2節 災害時における通信の役割
 第3節 通信分野における災害対策
 第4節 新しい通信システムの開発と今後の課題
 第2部 各論
 第1章 郵便
 第2節 郵便事業の現状
 第2章 公衆電気通信
 第2節 国内公衆電気通信の現状
 第3節 国際公衆電気通信の現状
 第4節 事業経営状況
 第3章 自営電気通信
 第1節 概況
 第2節 分野別利用状況
 第4章 データ通信
 第2節 データ通信回線の利用状況
 第3節 データ通信システム
 第4節 情報通信事業
 第5章 放送及び有線放送
 第6章 周波数の監理及び無線従事者
 第1節 周波数の監理
 第2節 電波監視等
 第7章 技術及びシステムの研究開発
 第2節 基礎技術
 第3節 宇宙通信システム
 第4節 電磁波有効利用技術
 第6節 データ通信システム
 第8節 その他の技術
 第8章 国際機関及び国際協力
 第1節 国際機関
 第2節 国際協力
|
5 防 災 用
(1)水防道路用通信
第1部第2章でも触れたとおり,建設省は,河川,ダム及び道路整備事務の円滑な遂行を図るため,水防道路用無線局を開設し,災害の予報,復旧,維持管理等に関するデータの収集,状況連絡,指示等の情報伝達用として活用している。その回線構成は,中央から末端現場に至るまでの状況が十分は握でき,確実な指令伝達が行われるよう第2-3-14図のとおりの系統となっている。
マイクロウェーブによる多重無線通信回線網は,建設本省から各地方建設局(8か所),北海道開発局及び沖縄総合事務局に至る一級回線,各地方建設局から各工事事務所又は各ダム管理所等(約220か所)に至る準一級回線,各工事事務所から各出張所(約680か所)に至る二級回線で構成されている。
第1部第2章に記述のとおり,一級回線は,2ルート化(う回路を含む。)を完成しているが,更に準一級回線等についても2ルート化を進めている。また,洪水予報,水防警報,ダム管理等に必要な資料をテレメータ回線等により水位,雨量情報等を伝送,収集するとともに,ダムの放流警報を通報するための回線としてVHF帯による無線回線が整備されている。
さらに,広範な降雨状況を観測するための雨量レーダ(現在,赤城山,三ツ峠,釈迦岳,深山に設置)の整備を行っているところである。
一方,移動通信系は,河川,道路における危険箇所の早期発見,応急処理又は災害時における情報収集,伝達を行うため,工事事務所,出張所等を基地局として,VHF帯又はUHF帯で通信網を構成している。
(2)中央防災用通信
ア.現 状
最近,大都市における建造物等の構造や住民の生活様式については,各方画から防災対策上多くの問題点が指摘されており,特に首都圏において大地震等非常災害が発生した場合,その被害は極めて大きくなると予想されることから,国や地方公共団体等関係機関では,防災のための各種対策を講じている。
第1部第2章でも触れたとおり,国土庁では,これら防災対策の一環として,平素における災害関係事務の調整,非常災害時における災害情報の収集,伝達のため,防災関係の指定行政機関及び指定公共機関等相互を多重無線回線で結び,電話,ファクシミリ等の情報伝送を行う中央防災無線網の整備を進めており,53年度には,国土庁,内閣官房(総理官邸),警察庁,気象庁,建設省及び消防庁を相互に結ぶ無線網を暫定的に整備し,53年9月1日(防災の日)から運用を開始した。引き続き55年度には,総理府,防衛庁,科学技術庁,沖縄開発庁,外務省,厚生省,農林水産省,通商産業省,運輸省,海上保安庁及び郵政省の11省庁について,無線網の整備を行い,現在,17省庁相互間を結ぶ暫定中央防災無線網を第2-3-15図のとおり回線構成し,運用している。
なお,現在までの暫定無線網におけるシステム構成は,建設省に設置した自動交換機を介して,各省庁に設置したファクシミリ及び電話機相互でダイヤル自動即時通話が可能となっており,また,自動交換機と端末装置を結ぶ回線は,同一庁舎内等の近距離回線を有線とするほかは,無線化されている。
イ.動 向
55年度暫定中央防災無線網の整備に当たっては,将来の画像伝送等情報の多様化に適応できるPCM回線を導入することとし,UHF帯(2GHz帯)及びEHF帯(40GHz帯)で回線構成を行った。
特に,このEHF帯回線は,実用回線としては我が国最初のものであり,また,ループ状に回線構成を行い,一区間の回線障害に対して,方路変更により救済できることとしている。
なお,56年度の衆議院,参議院,大蔵省ほか7省庁の無線網の整備に当たっても,EHF帯でループ状に回線構成を行う予定である。
(3)防災行政用等通信
ア.防災行政用無線局
防災行政用無線局は,都道府県,政令指定都市又は市町村が,災害対策基本法,水防法,消防組織法,災害救助法,気象業務法等の諸法令に基づき,それぞれの地域における防災,応急救助,災害復旧に関する業務を遂行するために使用することを主たる目的としている。
その概要は,第1部第2章に記述のとおりであり,東海沖地震発生の可能性が指摘され,また,集中豪雨,豪雪等毎年多発する自然災害や大規模な人為災害に対処するため,都道府県では防災行政用無線網の整備を推進しており,北海道では道庁から稚内等を結ぶ道北回線の建設に着手するが,この回線が整備されれば全道を結ぶ無線通信網が完成される。また,栃木県,滋賀県,福岡県等で一部運用に入っている(第2-3-16表参照)。
市町村防災行政用無線の整備も促進されていることに伴い,移動通信回線用の周波数が不足しているが,当該無線局のもつ重要性にかんがみ周波数の増波な行い,併せて,自治省,農林水産省等が国庫補助金を交付して促進を図っていることから,今後,市町村防災行政用無線局は一層整備されるものと期待される。
イ.消防防災用通信
消防防災用無線は,国と地方公共団体との間で情報を収集伝達する媒体として,また,特に,大規模地震対策特別措置法とこれに基づき地震防災対策強化地域が指定され,予知情報の伝達体制を確立する上でますます重要視されてきている。
その概要は,第1部第2章に記述のとおりである。
(4)消防・救急通信
ア.現 状
地方公共団体は,消防・救急活動の充実,強化を図るため,消防の常備化を進める一方,石油コンビナート火災,海上火災等の特殊火災に備えるとともに,交通事故の多発化,急病人の増加による救急出動の増大に対処するため,広域消防・救急体制の整備,強化を図っている。
このように,常備化,広域化される消防・救急活動を円滑に遂行するため,消防本部,消防署等には基地局及び固定局が,消防車,救急車,ヘリコプター等には陸上移動局及び携帯局が開設されている。
また,消防法施行令によって延べ面積1,000m2以上の地下街に設置が義務付けられている無線通信補助設備として,漏えい同軸ケーブルを展張する方式の空中線等の使用が東京,横浜,福岡等の地下街で導入され,火災時等における地下街と地上の消防隊員相互の連絡が十分に確保されることとなっている。
イ.動 向
火災現場における命令の伝達,情報の交換に万全を期すため,無線通信施設の整備,充実が図られており,東京都の消防・救急通信においては,消防署所活動系の陸上移動局が火災現場の消防・救急活動に活躍しているが,これに使用している400MHz帯の周波数が不足してきたことから,55年度に増波な行い,さらにこれらの周波数を東京都の消防・救急通信のみならず,全国的にも使用できるように対策を講じている。




|