 第1部 総論
 第1節 昭和55年度の通信の動向
 第2節 情報化の動向
 第3節 諸外国における情報通信の動向
 第1節 災害対策の重要性と通信の役割
 第2節 災害時における通信の役割
 第3節 通信分野における災害対策
 第4節 新しい通信システムの開発と今後の課題
 第2部 各論
 第1章 郵便
 第2節 郵便事業の現状
 第2章 公衆電気通信
 第2節 国内公衆電気通信の現状
 第3節 国際公衆電気通信の現状
 第4節 事業経営状況
 第3章 自営電気通信
 第1節 概況
 第2節 分野別利用状況
 第4章 データ通信
 第2節 データ通信回線の利用状況
 第3節 データ通信システム
 第4節 情報通信事業
 第5章 放送及び有線放送
 第6章 周波数の監理及び無線従事者
 第1節 周波数の監理
 第2節 電波監視等
 第7章 技術及びシステムの研究開発
 第2節 基礎技術
 第3節 宇宙通信システム
 第4節 電磁波有効利用技術
 第6節 データ通信システム
 第8節 その他の技術
 第8章 国際機関及び国際協力
 第1節 国際機関
 第2節 国際協力
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12 鉄道事業用
(1)国 鉄
ア.現 状
(ア)国鉄の業務と通信
鉄道は,他の輸送手段に比べて安全性,大量輸送,エネルギー効率等の面で優れており,国鉄は,社会経済活動の発展と国民生活の向上に伴って増加する旅客・貨物輸送の需要に対応し,我が国の基幹的輸送機関として,54年度には旅客69億3,100万人,貨物1億3,600万トンの輸送実績を有し,運輸事業の中心的な役割を果たしている。
このような国鉄の安全で円滑な輸送業務を確保するためには,関係者間における適切な指令及び緊密な情報連絡が重要であり,電気通信はこのために使用されており,本社,鉄道管理局,駅,通信区等,すべての機関が電気通信回線で接続されている。
(イ)伝送路の構成
列車の安全運行,操車場における貨車の分解,組成,座席予約システム等輸送に関するあらゆる指令,情報連絡のため伝送路が設定され,これは本社と鉄道管理局との間及び鉄道管理局相互間を結ぶ長距離伝送路と鉄道管理局と現業機関との間及び現業機関相互間を結ぶ中近距離伝送路に区分され,長距離伝送路は無線(SHF),中距離伝送路は有線及び無線(VHF,UHF)で構成されている。
これらの伝送路には,次のような回線が含まれている。
A 電話回線
(A)交換電話回線
列車の運行,営業等に関する業務を遂行するため,組織内のいずれの機関とでも交換機を介して結ぶ通話に使用している。
(B)直通指令電話回線
列車の運行状況をは握し,必要な指揮命令(列車指令,旅客指令,貨物指令等)を行う際の通話等を確保するため,交換電話とは別に,指令と指令を受ける者との間を直通で結び使用している。
(C)直通区間電話回線
列車の運行状況の間合せ,応答等のため,駅相互間,電力区,通信区等の事務所相互間を直通で結び使用している。
(D)構内電話回線
駅及び操車場構内における業務連絡,一斉情報伝達等のため駅長室を中心に改札,ホーム,貨物扱所,信号扱所等相互間を結び使用している。
B 電信回線
(A)交換電信回線
列車の運行,営業等に関する情報を記録通信(印刷電信及び模写電信)により確実に伝送するため,交換機を介して結び,各種業務連絡用として使用している。
(B)直通電信回線
駅相互間等特定の区間を結ぶ電信回線であり,次のような用途に使用している。
[1] 列車の遅延時間を駅から指令室に伝達すること。
[2] 貨物列車の分解,組成のため,到着列車の組成内容,その後の組成予定を操車場事務室から構内関係先に一斉に伝送すること。
[3] その他図表,文書等を伝送すること。
C データ通信回線
情報を処理し,又は情報を伝送するため,データ情報の入力装置と電子計算機を結ぶ回線であり,次のような用途に使用している。
(A)列車の座席予約用として,みどりの窓口の端末装置と国立市にある中央情報処理装置間におけるデータ伝送
(B)新幹線における設備管理,資材管理,経理事務等の集中管理用として,新幹線総局と関係機関との間におけるデータ伝送
(C)その他,貨物列車貨車組成用,地域間急行貨物用等のデータ伝送
(ウ)主要な無線設備
55年度末の無線局数は,42,913局で,固定無線の伝送路の長さは6,766kmに達し,無線伝送路の占める比率(チャンネル・キロメートル)は約65%となっており,使用している無線設備の概要は次のとおりであり,設備状況は,第2-3-20表,第2-3-21表及び第2-3-22表のとおりである。
A 固定業務
本社と鉄道管理局との間及び鉄道管理局相互間を結ぶSHF多重無線回線(7GHz帯及び12GHz帯)と鉄道管理局と主要駅との間及び主要駅相互間を結ぶUHF多重無線回線(400MHz帯及び2GHz帯)とがあり,指令電話,CTCの制御,各種データ伝送等の回線として使用している。
B 移動業務
(A)東海道・山陽新幹線用列車無線(400MHz)
列車の運転に必要な運転指令,旅客営業に関する旅客指令,公衆通信等を行うため指令と乗務員,乗務員と駅等の関係機関,乗客とその家庭等との間を結び使用するものであり,新幹線の運行にとって必要不可欠なものとなっている。
(B)乗務員無線(400MHz帯)
列車の運転,保安等に関する情報連絡のため,運転士と車掌との間及び乗務員と駅との間の通信に使用するものである。
(C)構内無線(400MHz帯)
操車場等において,貨物列車の貨車の分解,組成を行う際,構内作業員相互間の業務連絡に使用するものである。
(D)自動車無線(150MHz帯)
鉄道に関する事故,災害等の際,その現場から関係機関への情報連絡に使用し,通常は公安業務,保線作業等の連絡用として使用するものであり,交換電話にも接続することができる。
(E)防護無線(150MHz帯)
線路等に異常が発生した場合に,車上,踏切又は携帯用の装置から電波を発射し,対向,続行列車を停止させるために使用するものであり,新幹線の全線,常磐線の一部で使用している。
(F)その他
上記のほか無線設備としては,船舶無線,列車無線,公安無線,作業連絡用無線,レーダースピードメータ,列車接近警報用無線等がある。
イ.動 向
国鉄が安全で円滑な輸送業務を遂行する上で,電気通信の果たす役割は大きく,特に最近における列車ダイヤの過密化,列車の高速化に伴い,列車集中制御,電力系統の集中管理等,電子計算機による情報処理及びこれに基づく制御の自動化等が逐次進行しているが,今後はデータ通信の需要が増大し,通信回線に対する期待が高まるとともに,その信頼度の向上が要求され,無線系の伝送路は増大する傾向にある。
最近における無線関係の主な動きは次のとおりである。
(ア)東北・上越新幹線用列車無線
57年春に開業する予定の東北・上越新幹線用の列車無線については,その機能は東海道・山陽新幹線のものと同様であるが,その方式は,漏えい同軸ケーブル方式を採用し,より安定した通信が行われることとたる。
この新幹線の開業に先立って行われる列車の走行訓練時から列車無線を運用し得るように,これに係る基地局及び陸上移動局の一部については,既に免許を付与している。
(イ)在来線用列車無線
山手線,京浜東北線,赤羽線においては,安全な輸送の確保と輸送力の増強を図るためATC化工事を行っており,これに併せて必要になる列車無線に係る基地局及び陸上移動局について,免許を付与している。
この列車無線は,各指令と乗務員間において直接指示連絡を随時行うことを目的とし,多チャンネルを使用し,列車を個別に呼び出し,常時同時通話を行うことができるものである。
このATC関連方式は,56年度中に運用を開始する予定であり,現在,乗務員の訓練を行っているところである。
(ウ)衛星通信システムに関する実験
国鉄の伝送路が大規模地震等の災害により被害を受けた場合の通信回線の確保等に通信衛星を利用する場合の技術的要件,運用要件を明確にするとともに,このようなシステムの技術基準の策定に資することを目的として,国分寺市の鉄道技術研究所を常置場所とする実験局を開設し,実験用中容量静止通信衛星(CS)を介し,郵政省電波研究所の実験局との間で,電話,ファクシミリ,データ等の伝送に関する各種実験を実施している。
(2)民営鉄道
大都市を起点とした路線を有する民営鉄道においては,増加する輸送需要に対処して,列車の増発,車両編成増等を行っており,列車の安全運行を確保するための運転指令等,事故発生時における運転指令と乗務員間,近接列車相互間の緊急連絡用,踏切り事故発生の際に列車の二重衝突等の事故を避けるための警報用,操車場での列車入替作業連絡用等に無線が利用されており,その主なものは次のとおりである。
[1] 運転指令,電力指令,一般業務用・・・ 12GHz帯(固定系)
7GHz帯( 〃 )
2GHz帯( 〃 )
[2] 列車無線(指令所-基地局間用)・・・・400MHz帯(固定系)
150MHz帯( 〃 )
60MHz帯( 〃 )
[3] 列車無線(指令所-列車用)・・・・・・・・150MHz帯(移動系)
[4] 列車接近管報用無線・・・・・・・・・・・・・・ 26MHz帯(移動系)
[5] 保線作業用無線・・・・・・・・・・・・・・・・・・150MHz帯(移動系)
そのほか事故が発生した場合,又は列車接近時に踏切道上に障害物を発見した場合,走行中の列車等に警報信号を発するための防護警報用の無線局が設置される傾向にあり,この種無線局は,今後増加するものと予測される。



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