昭和56年版 通信白書

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3 実験用放送衛星の運用

 実験用中型放送衛星(BS「ゆり」)は,教育,難視聴対策等の放送需要に対処するため,実用放送衛星システムの導入に必要な技術を開発し,技術基準の確立を図ること等を目的として開発が進められてきたものである。
 BSは,53年4月に静止軌道上に打ち上げられ,同年7月20日から郵政省がNHK及び宇宙開発事業団の協力を得て,各種の実験を行ってきた。
 主な実験項目は,[1]衛星放送システムの基本技術に関する実験,[2]衛星管制技術及び衛星放送システムの運用技術に関する実験,[3]放送衛星電波の受信に関する実験等で約2年半にわたりこれらの実験を実施し,放送衛星の実用化のために極めて有効な各種のデータが得られている。
 実験の結果,衛星放送システムの基本技術に関する実験では,全国各地において予定した直径のアンテナでほぼ予想どおりの良好な結果が得られている。
 また,将来の新しい放送システム及び放送技術を開発するため,高品位テレビ信号の伝送実験,静止画放送信号の伝送実験,高品質ステレオ音声信号の伝送実験等の特殊伝送方式の衛星回線への適合性を検討するための実験を行い,いずれも良好な結果が得られている。
 降雨,降雪等の気象条件下における衛星電波(準ミリ波)の伝搬特性については,全国の各受信局において気象データとともに連続自動記録によってデータを取得しており,アンテナへの着雪による受信への影響などに関する貴重なデータも蓄積され,逐次解析が進められている。
 衛星放送システムの運用技術に関する実験では,全国の2か所以上の地球局からテレビ信号を順次送出した場合,テレビ信号の切替えが円滑に行えるかの試験を行い,スムーズな切替えが可能であることが実証された。
 また,放送衛星電波の受信に関する実験では,日本全国各地において,BSからのカラーテレビ信号を簡易受信装置を用いて受信し,受信の状況,難視聴解消効果,受信電界強度及び受信の技術条件などについて調査を行い,衛星放送による難視聴地域解消に関して,極めて有効なデータが得られている。また,太陽雑音の影響及び構造物,樹木,航空機等による受信への影響についてもデータの取得を行った。
 BSによる実験は,順調に続けられてきたが,テレビジョン信号を伝送するためのトランスポンダの機能が55年6月17日に停止した。
 その原因については,宇宙開発委員会における調査の結果,高出力進行波管増幅器の高圧電源部の絶縁体に経年変化等によるき裂が生じ,その部分に放電が起こり高出力進行波管増幅器が作動しなくなったものと推定されている。
 したがって,その後は衛星の軌道位置,姿勢の制御,衛星各部の動作特性の確認等の衛星の運用管制技術に関する実験等を継続して実施している。

 

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