昭和51年版 通信白書

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2 我が国の情報流通の特徴

(1) 情報流通メディアと情報流通
 我が国の情報流通は,第1-1-20図に示すとおり,供給,消費の両面においてテレビジョン放送,ラジオ放送等放送系メディアによる情報流通がその大部分を占めている。特に供給については全情報流通量の97%を占め,我が国の情報流通量の動向は,放送系メディアによる情報流通量にかかっているといえよう。
 しかし,郵便,電話等のパーソナル系メディア,新聞,雑誌等の記録系マスメディア及びデータ通信等比較的新しい情報流通メディアは,情報流通量の全体に占める割合が放送系メディアに比べはるかに小さいものの,その社会的機能,影響の大きさについては単純な量的比較を超えるものがある。特に,最近における電話普及の拡大,データ通信の急速な発展等の動きが,我が国情報流通の中でいかなる特徴を示しているかは,我が国の情報化の動向をみる上で重要な指標となろう。以下これらメディアについてその動向を分析することとする。
 第1-1-21図は,パーソナル系情報流通メディアのうち郵便,電話,電報による情報流通量の推移を示したものである。45年度を100とすると50年度は112となり,全情報メディアによる情報流通量の動きと比べその伸びは鈍い。
 郵便(ダイレクトメールを除く第一種及び第二種)による情報流通量は毎年若干増加しているが,上記メディアの中に占める割合は,45年度の35%から50年度の32%と下降傾向を示している。電話による情報流通量は着実な伸びを示しており,これらに占める割合も45年度の65%から50年度の68%へと増えている。なお,電話を公社電話,自営電話,有線放送電話に分けてみると,公社電話の占める割合が増加している。有線放送電話は施設数の減少傾向を反映して情報流通量も減ってきている。
 また,電報による情報流通量は減少を続けており,電話,郵便に比べその占める割合もごく小さい。
 第1-1-22図は,データ通信及び加入電信による情報流通量の推移を示したものである。45年度を100とすると50年度は858と急上昇している。これは,データ通信による情報流通量の伸びが45年度に比べ50年度が約10倍と著しいことによる。これに比べ加入電信による情報流通量は毎年ほとんど変化していない。
 第1-1-23図は,放送系メディアによる供給情報量及び消費情報量の推移を示したものである。45年度の放送系メディアによる供給量を100とすると,48年度が139.9,49年度が157.4,50年度が173.8と急激に増加している。消費についても,同じく45年度を100とすると,48年度が124.9,49年度が135.0,50年度が145.1と大きな伸びを示している。しかし,供給量の伸びの方が大きいので,消費率は45年度の7.0%から50年度の5.9%へと減少している。
 放送系メディアによる供給量は全メディアによる供給量の97%を占めているが,その中でもテレビジョン放送による割合が圧倒的に大きい。テレビジョン放送の情報消費率は50年度で7.8%であるが,消費量は毎年放送系メディアの消費量全体の約96%を占めている。ラジオ放送の供給量は,50年度が45年度に比べ69.7%増加しているが,放送系メディアの中で占める割合はほぼ毎年11%前後と横ばいである。消費量についても,全体の中で占める割合が1%前後で変化はない。また,消費率は,50年度において0.7%とテレビジョン放送のそれと比べ低い。
 有線ラジオ放送及び有線テレビジョン放送(CATV)による供給量及び消費量は,それぞれ放送系メディア全体の中で占める割合は小さいが,ともに45年度に比べ約2倍の伸びを示している。
 第1-1-24図は,新聞,雑誌等記録系マスメディアによる供給情報量及び消費情報量の推移を示したものである。50年度の供給量は45年度に比べ19.2%の増,消費情報量は14.9%の増と共に漸増の傾向を示しているが,放送系メディアによる情報量の伸びに比べると,その伸びは小さい。消費率は記録系マスメディア全体で毎年約8%弱と変化なく,新聞の消費率がほぼこれと同率となっている。この結果,記録系マスメディアの供給量及び消費量は毎年ほぼ同じ傾向を示しており,安定した状態にあると言えよう。
(2) 情報流通のコスト
 情報を流通させるために要した総経費を推計してみると,郵便,電話,放送,新聞等主要な情報流通メディア全体で,50年度において約4兆7,300億円となっている。これは,50年度の名目国民総生産の約5%に相当し,国民1人1日につき情報流通のために118円負担していることになる。
 第1-1-25図は,主な情報流通メディアにつき,縦軸に各メディアの情報流通量にその平均流通距離を乗じた情報流通距離量,横軸に各メディアによって情報を流通させるために要したコストをそのメディアの情報流通距離量で除した単位流通コストをとってみたものである。これによると,情報流通距離量と単位流通コストとは極めて強い相関があることがわかる。すなわち,単位流通コストの低いメディアほど多く利用されていることである。
 情報流通距離量が大きく単位流通コストが低いのは,テレビジョン放送,ラジオ放送の放送系メディアと新聞,書籍,及び雑誌の記録系マスメディアである。特にテレビジョン放送による情報は全メディアの中で最も情報流通距離量が大きく,かつ単位流通コストが低い。
 その反対に単位流通コストが高く情報流通距離量も小さいのは,電報,手交文書等記録系パーソナルメディアである。
 このほか,基幹的なメディアについてみると,公社電話は情報流通距離量に比べ単位流通経費は比較的高いメディアであり,手紙及びはがきに代表される郵便は,情報流通距離,単位流通経費ともに全メディアの中でほぼ中間に位置している。近年,情報流通量の伸びが著しいファクシミリ通信については,いまだに情報流通距離量の割に単位流通コストが高い値を示しているが,今後,普及の拡大に伴い情報流通量が増大し,単位流通コストも低くなって行くものと思われる。
(3) 情報流通からみた情報化の動向
 我が国の情報流通量は,前述のように拡大の一途をたどっており,情報化は量的な面では着実に進展しているといえよう。しかし,その内容をみると,情報流通量の増大は,そのほとんどがいわゆるマスメディアによる増加に依存しており,情報流通量の増大という面からみた情報化の進展は,あくまでマスメディア主導型となっている。
 一方,情報流通メディアの多様化も近年急速に進んでいるが,現在のところ,データ通信,ファクシミリ通信等新しいメディアは,主として業務用通信の分野での利用に限られており,情報流通量自体も全体に占める割合が比較にならないほど小さい。しかし,その情報流通量の伸び率の高さからみて,今後ますます発展し,個人利用の分野にまで広がって行く可能性の大きいことがうかがわれる。メディアの多様化が即情報化に結び付くものではないが,将来の発展性をみるとき,情報化への基盤造りが着実に進んでいるということは言えよう。

第1-1-20図 50年度の我が国の情報流通量

第1-1-21図 郵便・電話・電報の情報量の推移

第1-1-22図 データ通信及び加入電信の情報量の推移

第1-1-23図 放送系メディアの情報流通量の推移

第1-1-24図 記録系マスメディアの情報量の推移

第1-1-25図 情報流通距離量と単位流通コスト
 

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