昭和51年版 通信白書

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3 電離層観測衛星の開発

 電離層観測衛星(ISS)は,電離層の臨界周波数及び電波雑音の世界的分布の観測,電離層上部の空間におけるプラズマ特性の測定及び正イオン組成の測定を定常的に行い,その結果を短波通信の効率的運用に必要な電波予報等に利用することを目的とした我が国初の実用衛星として50年度末の打上げを目標に計画が進められてきた。
 ISSの開発については,宇宙開発事業団がロケット,衛星等の製作及び打上げを担当し,また,電波研究所は,これと併行し鹿島支所におけるISS観測用地上設備,本所における観測データの評価,処理及び解析に必要な諸施設の整備を行うとともに,オペレーションプランの作成等,宇宙開発事業団との緊密な打合せを行い準備に万全を期した。
 51年2月29日12時30分(日本標準時),ISSは種子島宇宙センタ大崎射場からNロケットを用いて打上げられ,正確に予定軌道(高度約1,000kmの円軌道,軌道傾斜角69.7°,周期約105分)に投入され,“うめ”(国際標識1976-019A)と命名された。
 その後,特に重視されていたテープレコーダの動作,センサブームの展開,長短2組の観測用アンテナの伸展等何れも計画通りに成功し,打上げ後,約1ヵ月間のミッション機器等の動作チェックが逐次実施され,各動作が正常であることが確認された。この間,電波研究所鹿島支所の管制センタでは,ISSからのデータを受信し,ハウスキーピングデー夕の監視を行い,衛星データの磁気テープ記録と同時に本所に伝送し,監視を行った。
 約1ヵ月間の初期運用期間中に76パスの運用が行われたが,ISSは定常観測への移行を目前にした4月2日不具合の発生により,電波の送信は全面的に停止となったが,初期運用期間中に得られた観測データ特に電離層臨界周波数の観測からは,これまでカナダの衛星Alouette,ISIS(国際電離層研究衛星)の観測でも得られなかった赤道をはさむ南北非対称などの現象が発見された。予定通りの運用が続けられたならば,きめ細かい観測データを基にしてより精度の高い電波予報を行うことが可能であったと考えられ,ISS予備機の打上げが期待されている。
 

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