昭和51年版 通信白書

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5 同軸ケーブル情報システム(CCIS)

 CATVは,その構成要素である同軸ケーブルが現在の技術でもテレビジョン換算30回線近くの極めて多量の情報を伝送する能力があり,テレビジョン放送の再送信以外に多種多様な情報の伝送を可能とするところから,今後住民の生活に必要な情報を提供するコミュニティネットワークとしてふさわしい情報メディアであるCCIS(Coaxial Cable Information System,同軸ケーブル情報システム)に発展する可能性を有するものとして一般の期待と注目を集めている。CCISの利用形態としては,放送の再送信,自主製作番組の提供等の放送型のサービスのほかに,システムに双方向伝送機能を持たせることにより,加入者からの要求に基づき情報を提供する個別情報サービス,電気,ガス,水道等の自動検針,防災,防犯のための警報を発するような集配信サービス等多種多様なサービスを行うことが考えられている。
 CCISについての研究開発は,米国,フランスにおいてパイロットシステムによる実験が行われているが,我が国においても関係機器メーカ等においてここ数年行われてきており,一部のシステム機器については既に実用の段階に達しているものがある。
 しかしながら,現実にCCISが普及発展し,社会的に機能していくためには低廉なシステムの開発等解決すべき多くの問題がある。
 そこで,この社会的に有用なCCISの普及発展を図るため,郵政省,通商産業省等において,CCISの研究開発等が進められている。現在,多能型のCCISとしては,郵政省の生活情報システムと通商産業省の映像情報システムの二つのシステムの研究開発が具体的に推進されている。
(1) 生活情報システムの開発
 郵政省では,CATVの多角的利用の可能性を検討するため,46年にCCIS調査会を設置し,調査研究を行ったが,更にその調査結果等を受けて東京都下多摩ニュータウンにおいて,CCISを利用した生活情報システムの開発実験を行うこととした。実験はCATVの利活用に資するため,テレビジョンの再送信,通常の自主放送のほか,CCISにより実現可能な各種のサービスのうち住民のニーズが強く,実現が比較的容易と思われる各種のサービスを実際に住民に提供することにより,住民のニーズ,経営上の諸問題,技術上の諸問題,コミュニティにおけるCCISの役割等を解明することをねらいとするものである。
 実験調査に必要な設備等の開発は48年度から開始され,50年度末までに実験の準備が整えられて,51年1月から実験が約250戸を対象にして開始された。実験では,テレビジョン放送の再送信及び自主放送に加えて,新しく開発した機器を用いて,自動反復,有料テレビ,放送応答,静止画,ファクシミリ新聞,フラッシュ・インフォメーションの6種類のサービスを提供している。また,これらのサービスに対する利用実態調査等を行い住民ニーズ等のは握に努めている。
 実験は51年度も引き続ぎ行われ,メモコピー及び親子テレビの二つのサービスを追加するための準備を進めている。
(2) 映像情報システムの開発
 通商産業省では,国民生活面への電子計算機を適用して,生活の情報化,高度化を図ることにより国民福祉の向上に資する観点から映像情報システムの開発実験を行うこととした。この映像情報システムは,映像関連技術,CATV回路網による伝送技術及び電子計算機技術を基礎とし,家庭にいる利用者からの要求に応えて,望む情報を映像で提供する,いわゆる双方向の情報処理システムである。サービスとしては,端末機からのリクエストに応えて各種のデータやテレビ番組を提供するデータリクエスト,テレビリクエスト,生涯教育を可能とするCAI,コミュニティの形成に有効なテレボード,自主放送,防災,防犯,保健・福祉サービス,生活の利便を増進するテレビショッピング,各種予約,キャッシュレス等の多くのサービスが予定されている。実験は,このような大規模な社会システムの実験に適した奈良県の東生駒地区において行われる。
 この映像情報システムの開発は47年度からの8ヵ年計画で進められており,既に基礎調査,概念設計,システム設計,機器の試作等が実施された。51年度からは,本格的に機器,システムの製造に着手し,53年度から実験を開始する予定である。
 

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