昭和51年版 通信白書

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第2章 通信と日本経済

第1節 通信事業経営の現状

 1 通信事業の収支状況

 景気の低迷から年度後半には回復基調に転じた50年度経済の下で,通信事業経営は依然として厳しい局面に置かれた。特に,郵便事業,電電公社及びNHKは共に2年連続大幅な赤字となり,不況と物価高のジレンマは通信事業経営に重大な影響を及ぼしている。以下,通信事業体別に50年度の収支状況を概観することとする(第1-2-1表及び第1-2-2図参照)。
 郵便事業については,郵便物数の伸び悩みにもかかわらず,51年1月の料金改定により収入は前年度に比べ18.3%増の4,947億円となったが,支出は6,266億円(前年度比15.4%増)となり,差引き1,319億円の赤字が生じた。
 電電公社については,50年度の収入が2兆1,103億円,支出が2兆3,915億円で差引き2,812億円の大幅な欠損金を生じた。このように収支状況が前年度より更に悪化したのは,収入が利用度の低い住宅用電話の増加,景気低迷の影響等により前年度に比べ2,282億円(12.1%)の増加にとどまったのに対し,経費節減の努力にもかかわらず,支出が主として人件費及び資本費用の増加によって,前年度に比べ3,342億円(16.2%)増加したためである。50年度の欠損金は事業収入の13.5%(49年度9.5%)に当たり,公社経営は一段と深刻な状況に置かれることとなった。
 国際電電については,49年度に大幅な伸びの減少を示した営業収入は,50年度においては,年度半ばからの輸出の好転等による通信量の増加を反映して前年度比13.3%増の771億円となった。しかし,営業費用が640億円,前年度比15.7%増と収入の伸びを上回ったため,営業収支率及び総合収支率は前年度に引き続いて悪化した。なお,営業費用のうち比較的大きな増加を示したものは減価償却費と研究費である。
 NHKについては,カラー受信契約者数の年度間増加数の伸びが,その普及の進展と共に鈍化傾向にあるため,経常事業収入は前年度に比べ4.4%の増加にとどまり,一方経費節減の努力にもかかわらず,人件費,放送費等の経常事業支出が同15.0%増と大きく増加したため,前年度を上回る189億円の赤字を記録した。
 民間放送については,1社平均の収支状況をみると,ラジオ・テレビ兼営社,各単営社とも営業収入は景気低迷の影響を受けて伸び悩む一方,人件費,制作費等の営業支出が増加したため,利益はほぼ前年度並にとどまるとともに営業収支率は他の通信事業同様悪化した。

第1-2-1表 通信事業の収支状況

第1-2-2図 通信事業の収支率
 

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