平成15年版 情報通信白書

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第1章 特集「日本発の新IT社会を目指して」

1 情報通信が担う文化活動と国際情報発信

(1)デジタルネットワーク文化の浸透

デジタルカメラの出荷台数がフィルムカメラを逆転

 情報通信は、文化の担い手として文化の在り方にかかわっている。デジタル化によってコンテンツの低コストでの複製、修復、加工や劣化のない保存が容易となり、ネットワーク化によって場所や時間の制約を受けずに、世界中の文化に瞬時に触れることが可能となっている。情報通信の発達によって、日常生活において文化に触れる機会は増え、文化の産業化によって新たなビジネスも育ちつつある。

1 DVDビデオ及びデジタルカメラの普及

 DVDビデオの国内出荷台数は平成14年に対前年比約2倍の338万台に達し、VTRの出荷台数に迫っている(図表1))。PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)と液晶カラーテレビを合計した薄型テレビの国内出荷台数は、(社)電子情報技術産業協会によると平成14年に対前年比約1.8倍の120万台に達し、映画やコンサート等の映像や音楽を家庭内で劇場に近い臨場感をもって鑑賞できるホームシアターの利用も進んでいる。
 また、デジタルカメラの国内出荷台数も、平成13年にフィルムカメラの国内出荷台数を逆転しており、個人がデジタルカメラで撮影した写真を加工することも一般的になっている(図表2))。さらに、デジタルカメラやビデオで作成したコンテンツを情報家電等のホームネットワークを通じて利用する、またインターネットを使って個人の映像情報を発信するといった利用形態も広がりつつある。

 
図表1) DVDビデオ及びVTRの国内出荷台数の推移

図表1) DVDビデオ及びVTRの国内出荷台数の推移
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図表2) デジタルカメラ及びフィルムカメラの国内出荷台数の推移

図表2) デジタルカメラ及びフィルムカメラの国内出荷台数の推移
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2 デジタルシネマの展開

 映画の制作や上映においても、デジタル化が進んでいる。デジタルシネマは、制作から上映までのプロセスにおいて、フィルムを一切使用せずデジタルフォーマットで統一した形態の映画である。デジタル化することで、制作段階では、撮影中の映像確認や、コンピュータを使って画像等を作成・処理するCG(コンピュータ・グラフィックス)加工を容易に行うことができ、配信段階ではフィルムやその輸送コストを削減できる。また、上映段階では上映スケジュールや上映館数の変更が容易になるなど、制作から配信、上映まで様々なメリットがある。ただし、デジタルシネマ映写機は高価であるほか、デジタル化されたものはコピーが容易で安価であるため、違法コピー防止対策が今後の大きな課題となっている。
 大規模にデジタルシネマが実施された事例として、平成14年7月から公開された「スターウォーズ エピソードIIクローンの攻撃」が挙げられる。世界94か所(うち10か所は日本)のデジタル映写テクノロジーを使用した映画館で上映された。同映画はフィルムを一切使用せずに撮影・制作され、上映にもデジタル方式が使用された。
 配信までネットワークを利用した事例としては、平成13年7月から14年3月にかけて通信・放送機構が行った、映画「千と千尋の神隠し」の配信実験がある(図表3))。この実験では、デジタル技術で制作された映画コンテンツを、光ファイバを利用して映画館に配信し、ネットワークセキュリティやデータの送達確認・認証方式と大容量のコンテンツを高速で配信する技術について実証実験が行われた。

 
図表3) 「千と千尋の神隠し」

図表3) 「千と千尋の神隠し」

 さらに、映画のインターネット配信も始まった。米国では、2002年11月に、ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントなど映画大手5社が合弁会社「ムービーリンク」を設立し、1本当たり1ドル95セントから4ドル99セントで映画を配信している(2003年
4月現在)。

3 絶版となったコンテンツの流通

 コンテンツをデジタル化することにより、従来の流通経路では流通されなくなった書籍等のコンテンツを復活することができる。既にインターネットを使って、絶版や品切れ等の理由により現在市場に流通していない書籍等をオンデマンド出版(電子データを利用して、読者の要求に応じて書籍を印刷・販売する出版方式)により復刊するサービスが提供されている。その一つである復刊ドットコムは、インターネット上で読者からのリクエストを集め、一定のリクエスト数のあったものについて復刊するという読者主導型の出版システムである(図表4))。必要部数のみ印刷し、在庫や売れ残りの廃棄等がないため、少ない部数からの出版や従来ニーズが少ないために重版できなかった書籍の復刊も可能となっている。復刊ドットコムは、平成12年6月にサービス開始され、平成14年度末時点で登録会員数が約13万人、リクエスト登録数は12,819点であり、そのうち、120点の復刊が決定されている。

 
図表4) 復刊ドットコムホームページ

図表4) 復刊ドットコムホームページ

関連サイト:復刊ドットコム(http://www.fukkan.com/

 

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