平成15年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第6節 コンテンツ流通の促進及び人材の育成

1 コンテンツの制作・流通の促進

官民協力体制によるコンテンツ制作・流通の実証実験の推進

 ブロードバンド化、放送のデジタル化等、高度な情報通信インフラの整備が進展する中で、その利活用促進が課題となっている。そのためには、良質なネットワーク・コンテンツを増大させ、インフラ整備とコンテンツ充実の好循環を創出していくことが必要である。総務省では、官民協力体制による実証実験等を推進することにより、コンテンツ制作・流通の促進に向けた市場環境整備に取り組んでいる。

1 ブロードバンド・コンテンツの制作・流通の促進

 平成14年度から、官民協力の下、放送コンテンツや教育用コンテンツといったブロードバンド・コンテンツの制作・流通を促進するための市場環境整備として、国際的な標準化作業へのフィードバックも視野に入れつつ、次の3つの実証実験プロジェクトを推進している(図表1))。

 
図表1) ブロードバンド・コンテンツの制作・流通の促進(概要)

図表1) ブロードバンド・コンテンツの制作・流通の促進(概要)

(1)著作権等のクリアランスの仕組みの開発・実証

 放送コンテンツ等のブロードバンド・コンテンツを権利者と利用者との間で安全かつ確実に取引する市場環境の整備に向けて、放送事業者、番組制作事業者、権利者等と協力し、メタデータを円滑に交換する機能や市場機能を備えた権利処理システムの開発・実証を推進している。

(2)ブロードバンド・コンテンツの流通技術の開発・実証

 放送コンテンツ等のブロードバンド・コンテンツが高速ネットワーク上で消費者に流通する環境を提示するため、放送事業者、電気通信事業者、メーカ等と協力し、メタデータを活用した高度なコンテンツの流通技術、光ネットワーク上における配信技術、高度なセキュリティ技術等に関するシステムの開発・実証を推進している。

(3)教育用コンテンツ流通プラットフォームの開発・実証(EduMart実証実験)

 学校向けブロードバンドネットワークを活用し、良質な教育用コンテンツを流通させるため、全国8地域の自治体、教育委員会、教育ソフトウェア会社等と協力して、セキュリティの確保、認証、課金、効率的なネットワーク配信等の機能を提供するシステムの開発・実証を推進している。なお、教育情報ナショナルセンター(NICER)が提供する検索機能とも連携するなど、文部科学省等とも協調しつつ推進している。

2 アーカイブコンテンツのネットワーク利活用の促進

 現在、美術館・博物館等の様々な者が保有するコンテンツのデジタル化を進めているが、これをネットワーク上でより安全・円滑に活用するためには、メタデータの互換性を確保すること等が必要である。
 そこで、総務省と文化庁は、相互に連携を図りつつ、ブロードバンドを通じて国や地方の有形・無形の文化遺産に関する情報を積極的に公開するとともに、著作権等を保護しつつ利活用を促進することを目的とする「文化遺産オンライン構想」を平成15年4月に公表した。「文化遺産オンライン構想」では、1)我が国文化遺産のインターネット上での総覧の実現、2)文化遺産情報化戦略の策定、3)文化遺産情報のブロードバンド流通と利活用に向けた実証実験に取り組むこととしている。

3 ブロードバンド時代を展望した番組制作体制の公正性・透明性向上に向けた検討

 ブロードバンド時代における放送番組に対する需要の高まりを見据え、総務省では、経済的・産業的な面だけでなく、放送が有する社会的・文化的な面も含めて、総合的に制作体制の公正性・透明性を向上させる方策を検討すること等を目的として、平成14年10月から、放送事業者、番組制作事業者、学識経験者等の参加を得て「ブロードバンド時代における放送番組制作に関する検討会」を開催している。検討会では、平成14年12月に、放送事業者による番組制作委託取引に係る自主基準の作成・公表、契約見本の作成についての意見交換の実施等を内容とする合意を得ており、これを受け、平成15年3月にNHK及び(社)日本民間放送連盟が自主基準等を作成・公表している。

4 地域社会に根ざしたブロードバンド・コンテンツの制作・流通の促進に向けた検討

 総務省では、平成14年12月から、地域社会に根ざしたブロードバンド・コンテンツ制作・流通に関する先端的な取組の実態や諸課題を調査・検討し、その潜在的ニーズを把握することで、地域での多様なコンテンツ制作・配信の促進に資することを目的として、「地域メディアコンテンツ研究会」を開催している。研究会では、平成15年6月に取りまとめを行う予定である。

5 放送番組制作設備等のデジタル化支援

 地上デジタル放送の早期普及を促進するため、これに関連する放送番組制作設備等を対象に、放送事業者や放送番組制作事業者に対する税制及び金融上の支援措置を設けている。平成15年度税制改正等において対象設備の拡充を図るなど、事業者の投資負担の一層の軽減を図ることとしている(図表2))(3-3-2(1)参照)。

 
図表2) 放送番組制作事業者へのデジタル化支援(税制・金融上の特例措置)

図表2) 放送番組制作事業者へのデジタル化支援(税制・金融上の特例措置)
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6 放送番組の保存のための研究開発

 放送番組を収集・保存している番組ライブラリ(注)をネットワークで結び、遠隔地から高速で検索・視聴できるようにするシステムについて、平成11年度から研究開発を実施している。

7 デジタル化・ネットワーク化に対応した放送事業者の著作隣接権等の保護強化

 放送事業者の著作隣接権については、ローマ条約(1961年)により国際的保護が行われているところであるが、インターネット等の情報化の進展に対応した権利保護がなされるよう、WIPO(世界知的所有権機関)著作権等常設委員会において新たな保護の在り方について検討が進められており、総務省も文化庁と協力してこの議論に積極的に参画している。



(注)番組ライブラリとは、優良な放送番組等が収集・保存されたもので、現在は、放送法に定める指定法人である(財)放送番組センターが横浜市において整備・運営している

関連ページ:インターネット上の魅力あるコンテンツの流通については、1-4-2参照

 
参考: 「ブロ−ドバンド時代における放送番組制作に関する検討会」
  「地域メディアコンテンツ研究会」
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