平成15年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(10)宇宙通信の高度化

平成15年度より準天頂衛星システム研究開発を開始

 宇宙通信は、広域性、同報性、耐災害性など多くの特長を有しており、これまで通信、放送、測位等の分野において幅広く利用されている。総務省では、今後急速に整備・高度化される情報通信インフラの中で宇宙通信が果たすべき役割を踏まえ、今後必要とされる宇宙通信を実現するための各種実証衛星の開発や衛星利用実験を推進している。

1 技術試験衛星VIII型の研究開発

 マルチメディア移動体衛星通信技術、衛星測位に関する基盤技術等を開発することを目的として、技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)の研究開発を文部科学省と連携して推進している。ETS-VIIIは、13m級大型展開アンテナ、高出力中継器、フェーズドアレイ給電部、衛星搭載交換機、高精度時刻基準装置等を搭載し、H-IIAロケットにより平成16年度に打上げの予定である(図表1))。
 また、平成14年10月、ETS-VIIIを用いたアプリケーション開発を行うための実験(利用実験)参加者を一般から募集した。今後、実験計画の具体的な検討や準備が進められる予定である。

 
図表1) ETS−VIIIのシステム概念図

図表1) ETS−VIIIのシステム概念図

2 超高速インターネット衛星の研究開発

 広域性、同報性、耐災害性等といった衛星の特長を積極的に活用した地上のインターネット網と相互補完する超高速衛星通信技術の確立、アジア・太平洋地域諸国との国際共同実験の実施等を目的として超高速インターネット衛星(WINDS:Wideband InterNetworking test and Demonstration Satellite)の研究開発を文部科学省と連携して推進している。衛星打上げは平成17年を予定しており、15年秋には、WINDSを用いた利用実験の参加者を公募し、アジア・太平洋諸国にも利用実験参加の機会を広く提供していく予定である(図表2))。

 
図表2) 超高速インターネット衛星通信システム概念図

図表2) 超高速インターネット衛星通信システム概念図

 e-Japan重点計画-2002においても、「無線による広範囲の超高速アクセスを可能とする技術を実用化する。無線超高速の固定用国際ネットワークを構築するため、2005年までに超高速インターネット衛星を打ち上げて実証実験を行い、2010年を目途に実用化する。」とされている。これを踏まえ、独立行政法人通信総合研究所(CRL)は、平成15年度も14年度に引き続いて、衛星搭載ルータの開発衛星を利用したインターネットに最適な伝送方式の研究開発、地上系ネットワークとの相互補完に必要なシステム技術の研究開発等を実施する。

3 準天頂衛星システムの研究開発

 静止軌道を約45度傾けた軌道に少なくとも3機の衛星を互いに同期して配置することにより、常に1つの衛星が日本の天頂付近に滞留し、ビル陰等に影響されない高品質の通信・放送・測位サービスの提供を可能とする準天頂衛星システムの実現に必要な技術の研究開発を平成15年度から実施している(図表3))。
 準天頂衛星システムの研究開発は、総務省・文部科学省・経済産業省・国土交通省の4省連携施策であり、総務省では、高鏡面精度衛星搭載大型展開アンテナ技術、衛星移動通信用超小型地球局技術、準天頂軌道に対応した通信制御技術、超高精度衛星搭載原子時計技術等の研究開発を実施する予定である。

 
図表3) 準天頂衛星システムの概念図

図表3) 準天頂衛星システムの概念図

4 全球降水観測計画(GPM)の研究開発

 TRMMの後継・拡張ミッションとして、CRL、宇宙開発事業団(NASDA)及び米国NASAが中心となり、全球降水観測計画(GPM:Global Precipitation Measurement)の研究開発が推進されている。熱帯地方の降水活動を観測対象としていたTRMMに対し、GPMは高緯度地方までを含む広範囲の降水活動をより高頻度で観測することを目指している(図表4))。

 
図表4) 全球降水観測計画の全体構想図

図表4) 全球降水観測計画の全体構想図

 GPMは2周波降水レーダとマイクロ波放射計を搭載した主衛星1機とマイクロ波放射計を搭載した副衛星数機により構成される。Kuバンド(13GHz)及びKaバンド(35GHz)帯を用いた2周波降水レーダとマイクロ波放射計で同時に降水強度を観測することにより、降水活動の詳細を観測することが可能となり、この観測データを基に降水強度推定アルゴリズムの高精度化を図ることが可能となる。また、副衛星群を最終的に8機程度に増やすことにより、3時間ごとの全球の降水分布を求めることが可能となる。
 GPMで得られた全球の降水分布のデータをリアルタイムで配信することにより、科学研究のみならず、天気予報・洪水予測・水資源管理等の様々な利用が可能となると期待されている。
 平成14年11月、宇宙開発委員会において平成15年度よりGPM主衛星の2周波降水レーダを開発研究(予備設計)段階にフェーズアップさせることが了承された。これを受けGPMは、平成15年度から降水観測技術衛星用35GHz帯レーダに関する「開発研究」に移行した。

5 その他の通信・放送衛星プロジェクト

(1)次世代LEOシステム(NeLS)の研究開発

 宇宙空間を高速ネットワーク(インターネットの高速中継伝送路等)として活用するため、光ファイバ通信技術の宇宙空間への適用を目指した研究開発を実施している。平成17年度末頃の宇宙実証を目指し、9年度から通信・放送機構の直轄研究として川崎次世代LEOリサーチセンターを開設して、光衛星間通信技術、衛星ネットワーク技術の研究開発及び試作試験を実施している(図表5))。

 
図表5) 次世代LEOシステムの概念図

図表5) 次世代LEOシステムの概念図

(2)高度衛星放送システムの研究開発

 21GHz帯を用いて全国をカバーし、この周波数の特性である降雨減衰の補償を可能とする衛星放送システムの研究を行うことにより、超高精細度放送や立体TV放送等次世代の高度な衛星放送の早期実現に貢献することを目指している。

(3)ミリ波を用いた将来の衛星通信システムの調査研究

 ミリ波帯を用いた衛星通信技術の実用化に向けた研究を行うことにより、衛星通信における周波数ひっ迫を打開するとともに我が国の衛星通信技術の高度化を図っている。

 

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