平成15年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(9)成層圏プラットフォームの研究開発

北海道大樹町等で航空機等を用いた通信実証実験を実施

 成層圏プラットフォームは、気象が比較的安定している高度20km程度の成層圏に情報通信機材等を搭載した無人の飛行船を滞空させ、全国どこでも超高速インターネットやマルチメディア移動通信を利用可能とするもので、新たな情報通信インフラとして早期の実現が期待されている。また、観測センサー等を搭載することにより地上観測等にも利用可能となることから、幅広い用途への応用も期待されている(図表1))。

 
図表1) 成層圏プラットフォームの概念

図表1) 成層圏プラットフォームの概念

 そこで、総務省では、文部科学省と連携し、成層圏プラットフォームの早期実用化を目指し、平成10年度から産学官共同で研究開発を行っている。このうち、総務省は通信・放送ミッション及び追跡管制技術の研究開発を担当し、通信・放送機構の直轄研究により研究開発を実施している。
 これまで通信・放送ミッションについては、移動通信システム、広帯域固定通信システム等の要素技術研究、通信機器の設計・製作等を実施し、追跡管制技術については、追跡管制システムの基本設計、システムの要素技術研究、風予測ソフトウェアの開発、風観測・予測システムの構築等、今後実施される予定の飛行試験(図表2))に向けた種々の技術開発を行ってきた。

 
図表2) 飛行試験のイメージ図

図表2) 飛行試験のイメージ図

 平成14年度は、飛行試験の実施に向けて引き続き、各システムの開発を行うとともに事前飛行試験(航空機等を用いた通信実証試験)による通信・放送ミッションの事前の機能、実験手順の確認を行った。

【通信・放送ミッション事前飛行試験の概要】

1)平成14年6月から7月にかけて、ハワイにおいて無人ソーラープレーン「パスファインダープラス」を利用したIMT-2000移動通信及びデジタルハイビジョンテレビの中継実験を実施(図表3))。
2)10月、北海道大樹町多目的航空公園において、ジェット機を利用したUHF帯放送実験を実施。
3)11月、神奈川県横須賀市にある通信・放送機構 横須賀成層圏プラットフォームリサーチセンターにて、ヘリコプタを利用したミリ波帯素材伝送実験及び固定通信実験を実施。

 
図表3) 平成14年度事前飛行試験の一例

図表3) 平成14年度事前飛行試験の一例

 平成15年度においては、通信・放送ミッションでは、14年度に実施した事前飛行試験の成果を踏まえ、定点滞空飛行試験用機器の製作・試験等を行う予定であり、追跡管制技術では、14年度に引き続き、追跡・管制システムの製作・試験を行う予定である。また、開発した搭載機器を飛行船代替機に搭載して行うシステム機能確認試験の実施及び風観測・予測制御システムの飛行試験に向けた運用等を実施する予定である。
 こうした研究開発の進展を踏まえつつ、成層圏プラットフォームで使用可能な周波数の分配に関する国際的な対応を推進している。既に、平成9年のWRC-97(1997年の世界無線通信会議)において、47・48GHz帯が成層圏プラットフォームの固定通信用として分配され、また、12年のWRC-2000において、アジア・太平洋地域の12か国における固定業務用の31/28GHz帯の追加分配、2GHz帯においてIMT-2000の基地局として利用可能であること等が決定されている。
 今後は、これらの決定を踏まえて、総務省では、成層圏プラットフォームにおける、同帯域内での周波数共用検討及びその隣接帯域(電波天文/地球探査衛星)への影響等に係る新勧告案の策定等に参画する予定である。また、2007年に開催されるWRC-2007に向けて、定点滞空飛行試験の成果を反映させた他の業務との共用条件を確立することにより、周波数分配をより確実なものとし、より利用しやすい周波数環境の整備等に向けて取り組んでいく予定である。

 

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