総務省トップ > 政策 > 白書 > 25年版 > データ流通量とマクロ経済指標との関係性分析
第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第3節 ビッグデータの活用が促す成長の可能性

(4)データ流通量とマクロ経済指標との関係性分析

これまでの分析から、ビッグデータの流通・蓄積量が経年的に増大していることを見てきた。それでは、企業が電子的に受信するデータ流通量の増大は、経済のパフォーマンスにどのような効果を及ぼしているのであろうか。この点を分析するために、従業員1人当たりのデータ流通量の伸び率と労働生産性(従業員1人当たり実質GDP)の伸び率との関係性について、両者のデータが共通して採れる2005年から2011年を対象に分析する。

図表1-3-2-12は、横軸に従業員1人当たりデータ流通量の年平均伸び率(2005年→2011年)を、縦軸に労働生産性の年平均伸び率(2005年→2011年)をとり、両者の相関関係を散布図で示したものである。2005年から2011年にかけては、データ流通量が増大している一方で、GDP等の経済指標はリーマンショック等の影響で下降トレンドとなっていることに留意する必要があるが、図表1-3-2-12からは、両者の間の関係性に影響を及ぼす他の要因(政策変更要因や経済のファンダメンタルズ要因28等)を一定とみなす限りにおいて、データ流通量と労働生産性とにはプラスの相関関係が観察される。

図表1-3-2-12 従業員1人当たりデータ流通量伸び率と労働生産性伸び率との関係
(出典)総務省「情報流通・蓄積量の計測手法の検討に係る調査研究」(平成25年)
「図表1-3-2-12 従業員1人当たりデータ流通量伸び率と労働生産性伸び率との関係」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

次に、データ流通量の増大が生産性の向上に及ぼす効果について、個別産業ごとの産業特性や経済のファンダメンタルズ要因等をコントロールしつつ、統計的な観点から検証するために、データ流通量データと労働生産性データが共通して取得可能な2005年、2008年、2011年の3か年の産業別パネルデータを構築の上、データ流通量の増大が労働生産性の向上に及ぼす効果に関するパネルデータ分析を行った。

データ量と労働生産性との定量分析に用いた推定式および推定結果は次のとおりである29

データ量と労働生産性との定量分析に用いた推定式および推定結果

ここで、lnは自然対数、V/Lは従業員1人当りの実質GDP(労働生産性)、Data/Lは従業員1人当りデータ流通量である。また、先述したように推定期間中の経済指標はリーマンショック等の影響で下降トレンドとなっているため、推定モデルにトレンド項を設定の上、経済変数の下降トレンド要因を除去した。

推定の結果、(Data/L)の係数の符号が有意にプラスとなり、(今回推計されたデータ流通量で分析する限りにおいて)データ流通量の増大と労働生産性の向上とには有意にプラスの関係性があることがみてとれる。この結果は、個別産業に特有な特性(業界慣行や制度要因等)や経済トレンド等の諸要因をコントロールしてもなお、データ流通量の増大を通じた生産性向上ルートが存在している可能性があることを意味している。

ただし、先述したとおり、今回のデータ流通量推計は計量対象メディアが限定されている等、一定の制約のもとで行われており、すべてのメディアを網羅した上でビッグデータ流通の全体像を捕捉している訳ではないことから、データ流通量と経済指標とのプラスの関係性については1つの可能性を示したに過ぎない。したがって、情報のフローとしてのデータ流通量やストックとしてのデータ蓄積量の増大が、経済パフォーマンスにどのような影響を与えるのかについての関係性分析は、計量対象メディアの拡充等を行いつつさらなる研究の蓄積が必要である。



28 一国の経済活動状況を示す基礎的な要因のこと。例えば経済成長率、物価上昇率、失業率など。

29 実際の推定では、各産業の観測不可能な特有の効果(個体特有効果)を除去するため、産業ダミーを入れた。

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