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第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第1節 電子行政とオープンデータ

(2)オープンデータの推進に向けた我が国の取組

ア IT総合戦略本部における取組

オープンデータは、国・地方自治体すべてに関わることから、政府が一体となった取組が求められる。IT総合戦略本部において、2012年7月4日に、①政府自ら積極的に公共データを公開すること、②機械判読可能な形式で公開すること、③営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること、④取組可能な公共データから速やかに公開等の具体的な取組に着手し、成果を確実に蓄積していくこと、の4項目を基本原則とする「電子行政オープンデータ戦略」がとりまとめられた。取組対象とする公共データは、政府が保有するデータ(安全保障に関する情報等公開に適さない情報を除く)について率先して取組を推進し、独立行政法人、地方自治体、公益企業等の取組に波及させていくものとされた。併せて、東日本大震災の教訓を踏まえ、緊急時に有用と考えられる公共データについては早期に取組を進めておくことが重要としている(図表2-1-2-2)。

図表2-1-2-2 電子行政オープンデータ戦略の概要
(出典)内閣官房「電子行政オープンデータ実務者会議」(第1回)資料

また、同戦略に基づく具体的施策を検討するため、IT総合戦略本部に、「電子行政オープンデータ実務者会議」が設置され、①公共データ活用のために必要なルール等の整備、②データカタログの整備、③データ形式・構造等の標準化の推進等といった基本的な事項の検討が進められている。電子行政オープンデータ実務者会議には、機械判読に適したデータ形式等について検討を行う「データ・ワーキンググループ」と、公共データ活用のために必要なルール、周知・普及等について検討を行う「ルール・普及・ワーキンググループ」の2つのワーキンググループが置かれ、具体的な検討が進められている(図表2-1-2-3)。平成24年度における両ワーキンググループを含めた電子行政オープンデータ実務者会議の検討成果は、「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」(平成25年6月14日 IT総合戦略本部決定)及び「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)」(平成25年6月25日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)としてまとめられている。

図表2-1-2-3 電子行政オープンデータ実務者会議の体制と構成員(平成25年6月14日時点)

まず、「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」は、各府省がオープンデータの取組を進めていくためのマイルストーンを定めたものであり、「ロードマップ策定後に作成し、インターネットを通じてホームページで公開するデータについては、機械判読を考慮した構造で、かつ機械判読に適したデータ形式でも掲載すること」や「ロードマップ策定後、国が著作権者である公開データについては、二次利用を制限する具体的かつ合理的な根拠があるものを除き、二次利用を認めること」が原則として規定された。また、どこにどのようなデータがあるかを分かりやすく案内し、必要なデータ取得を容易にする「データカタログ」(ポータルサイト)についても、平成25年度上期から試行版を公開し、平成26年度からは本格運用を行うこととされた。

次に、「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)」は、各府省の保有するデータの公開に関する基本的考え方を整理したものである。機械判読に適したデータ形式については、「特定のアプリケーションに依存しないデータ形式であることを要件とし、可能なところから、順次より高度な利用が可能なデータ形式での公開を拡大していく」という基本方針のもと、特定のアプリケーションに依存しないデータ形式で公開するためのデータ作成に当たっての留意事項が示された。例えば、表形式データでは、機械判読に適した形式とするため、「データセルに、整形や位取りのための文字(スペース、改行、カンマ等)を含めない」や「数値等のデータの値やタイトル、単位以外の情報を、セルに含めない」等の留意事項がまとめられている。公開データの利用ルールについては、「著作物でないデータについては、著作権の保護対象外である(著作権を理由とした二次利用の制限はできない)ことを明確にする」ことや、「委託・請負契約の検討・締結等に当たっては、それを念頭に置いた対応(例えば、委託調査の契約の内容を、成果物である報告書を府省がインターネットを通じてホームページで公開する場合、当該公開データの二次利用を認めることの支障とならないようなものとする等)」等が記載されている。

本年6月に決定された「世界最先端IT国家創造宣言」(IT総合戦略本部決定)においては、公共データの民間開放(オープンデータ)を推進するため、①電子行政オープンデータ戦略に基づくロードマップを策定・公表、②2013年度から公共データの自由な二次利用を認める利用ルールの見直しを行うとともに、機械判読に適した国際標準データ形式での公開を拡大、③各府省が公開する公共データのデータカタログサイトについて2013年度中に施行版を立ち上げ、2014年度から本格運用を実施等を掲げている。2014年度及び2015年度の2年間を集中取組期間と位置づけ、2015年度末には他の先進国と同水準の公開内容を実現することを目標としている。

イ オープンデータ流通推進コンソーシアムにおける取組

産官学が共同でオープンデータ流通環境の実現に向けた基盤整備を推進することを目的として、平成24年7月27日に、「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が設立された(図表2-1-2-4)。本コンソーシアムでは、公共機関等が積極的にデータを公開したとしても、国民や企業等がこれを有効に活用し、新たな価値やサービスを創出しないことには効果は限定的となり、民間保有データとのマッシュアップを考慮したデータ形式の標準化や、民間保有データのうち公共性の高いものの流通・活用促進など、公共機関保有データと民間保有データの間をシームレスに繋ぐ仕組づくりも必要との観点から、①オープンデータ推進にむけた課題解決に関する研究活動(オープンデータ推進に必要な技術標準のあり方等の検討、オープンデータ推進に必要なライセンスのあり方等の検討)、② オープンデータ推進の普及啓発活動(オープンデータ推進に関する情報発信・情報共有、オープンデータ推進による新たなサービス等の検討)を行っている。

図表2-1-2-4 オープンデータ流通推進コンソーシアム

総務省では、本コンソーシアムと連携して、オープンデータに係る技術仕様、二次利用ルールの検討や、オープンデータの意義や可能性の情報発信を実施しているところである。

同コンソーシアムでは、オープンデータ推進に必要な技術標準のあり方等を検討するとともに、オープンデータ推進に必要なライセンスのあり方等の検討を行っている。同コンソーシアムで取りまとめた「オープンデータ化のためのデータ作成に関する技術ガイド」は、平成25年6月25日に各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定された「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)」に反映されている。また、本年4月に総務省では情報通信白書のオープンデータ化について、政府系白書としては初めて、あらゆる二次利用を原則可能とする形で実施する旨発表したが14、この取組は、「オープンデータ流通推進コンソーシアム」における二次利用ルールに関する検討のテストケースとして行われており、ライセンス等にかかるルールについては、同コンソーシアムの検討結果を踏まえたものとなっている。

また、同コンソーシアムでは、オープンデータ戦略の推進に当たって、公共データを活用すれば例えばこういう新たなアプリケーションが生まれるといった事例を開発し、オープン化のメリットが利用者に見える形にしていくこと(可視化)が重要であるとの観点から、オープンデータの普及展開のための活動も展開している。平成24年12月には「気象データ・ハッカソン15」、「オープンデータシンポジウム」を実施し、平成25年3月には優秀事例を収集して表彰する「勝手表彰16」を実施した(図表2-1-2-5)。

図表2-1-2-5 勝手表彰

気象データ・ハッカソンでは、約50名が参加し、テーマ別に6チームに分かれて検討された。気象庁は、このイベントに参加するとともに、気象データを提供している。また、ハッカソンの開催に先立ち、利活用アイデアを検討する「アイデアソン」がFacebook上で約1ヶ月間行われ、40以上のアイデアが出されるなど活況であった(図表2-1-2-6)。

図表2-1-2-6 気象データ アイデアソン・ハッカソンの例
ウ 総務省におけるオープンデータ推進に向けた取組
(ア)オープンデータ流通環境の整備

オープンデータを幅広い主体で活用可能とし、創意工夫をこらした多様な活用方法の創造を促進する観点から、情報流通について、個別分野ごとの「縦軸」の情報化から分野・組織横断的な「横軸」の連携の重要性が高まっている。 

総務省では、このような背景から、組織や業界内で利用されているデータを社会でオープンに利用できる環境(オープンデータ流通環境)の整備に向け、①情報流通連携基盤共通API17の確立・国際標準化、②データの二次利用に関するルールの策定、③オープンデータのメリットの可視化のための実証実験を平成24年度から実施している。その成果については、「電子行政オープンデータ戦略」を推進しているIT総合戦略本部「電子行政オープンデータ実務者会議」や「オープンデータ流通推進コンソーシアム」等と連携して展開することとしており、オープンデータ流通環境の普及を目指している。

例えば、公共交通情報を活用した実証実験では、複数の鉄道やバスのリアルタイムな運行情報が活用可能となることで、複数の公共交通機関の電車やバスのリアルタイムな位置情報を1つの地図上で閲覧できるサービスや、実際の遅延情報を考慮した最適なルート案内等のサービス等が実現できることを検証している。また、防災・災害関連情報を活用した実証実験では、リアルタイムの様々な気象データと地方自治体が提供しているハザードマップ等の情報とを同じ地図上で組み合わせること(マッシュアップ)で、住民の避難や地方自治体の行政判断に役立てられるような情報の公開・利活用について検証している。なお、気象庁は、この実証実験において、気象データの提供に協力している。更に、地盤情報を活用した実証実験では、国や地方自治体が公共事業のために作成した地盤情報(ボーリングデータ)を二次利用しやすい形式で公開する仕組を実証し、それらを集積することで、3D地下構造図、災害予測シミュレーション等の様々なアプリケーションが実現できることを検証している(図表2-1-2-7)。

図表2-1-2-7 実証実験の概要
(イ)API機能による統計データの高度利用環境の構築

総務省統計局では、国勢調査、経済センサス、労働力調査、小売物価統計調査(CPI)、家計調査などの統計局が所管する統計データについて、API機能により、大量・多様な統計データをプログラムから簡単に取得できるようにする高度な利用環境の提供を本年6月から試行的に開始することとしている。

これにより、①利用者の情報システムに統計データを自動的に反映、②利用者が保有するデータやインターネット上のデータ等と連動させた高度な統計データ分析などが可能となり、また、平成26年度中に政府統計のポータルサイトであるe-Stat18に同API機能を付加し、各府省の統計データの提供も可能となる予定で、ビジネスの活性化や新規事業の開発促進、行政サービス向上などへの一層の貢献が期待される(図表2-1-2-8)。

図表2-1-2-8 API機能の活用例

情報通信白書・情報通信統計データベースのオープンデータ化の実施

総務省では、行政が保有する情報のオープンデータ化のテストケースとして、情報通信白書・情報通信統計データベースのオープンデータ化を本年4月19日より実施している。これは、政府系白書では初めて、複製・改変・頒布・公衆送信等のあらゆる二次利用(商業利用を含む)を原則可能とするものであり、そのライセンスルールについてはオープンデータ流通推進コンソーシアムと連携して検討したものである。

4月段階では、平成22〜24年版の情報通信白書について、著作権が発生する箇所については、原則として、自由な二次利用を認める旨明記するとともに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス19を適用し、その「表示ライセンス(CC-BY)」で利用可能な点にも言及表記を適用した。併せて、統計数値データや簡単な表・グラフには著作権を有しないことも明記している。この情報通信白書のオープンデータ化を受けて、国立国会図書館は、「NDLラボ(脚注表示機能を有した電子読書支援システムの構築実験)」(本年5月7日から運用中)の1つのコンテンツとして、オープンデータ化した平成24年版情報通信白書の一部を追加した。NDLラボは、コンテンツ中に出現するキーワードについての情報を左右のサイドノートに表示する「自動脚注表示機能」があり、Wikipedia等の情報を表示するという点が特徴として挙げられる。

また、情報通信統計データベースについても、ウェブサイトをリニューアルし、より見やすいものとするとともに、数値データには著作権を有しないことも明記している。

本件については、オープンデータ化の対象年を拡大するとともに、白書に掲載されている図表のデータについて、従来のExcel形式だけでなく、より機械判読に適したCSV形式で提供することとしている。



14 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000053.html別ウィンドウで開きます

15 ハッカソン(Hackathon) とは、あるテーマに対して、アプリケーション・サービス開発のアイデアを出し合いながら実際に開発し発表しあうイベントで、特定のデータを対象にテーマを決めて短期間(例えば1日)で開催され、参加者は複数のチームに分かれて、実際にアプリケーションの作成を行う。Hack(ハック)をMarathon(マラソン)のように行うことになぞらえて、2つの語を組み合わせた造語である。また、ハッカソンに先立ち、色々なアイデアを持ち寄り、お互いに検討しあうイベントとしてアイデアソン(Ideathon Idea とMarathonを組み合わせた造語)があり、アイデアソンを事前に行うことで、斬新性の高いアイデア、実現性の高いアイデア等様々な観点からのアイデアが集まり、お互いに刺激しあうことで、テーマに対して多角的な可能性を示すことが期待される。

16 http://www.opendata.gr.jp/event/2013/000076/別ウィンドウで開きます

17 標準データ規格(データモデル・データ表現形式・共通ボキャブラリ)及び標準API規格から構成される。APIとは、Application Programming Interfaceの略で、アプリケーションの開発者が、他のハードウエアやソフトウエアの提供している機能を利用するためのプログラム上の手続きを定めた規約(通信プロトコル)の集合のこと。APIが実装されていると、コンピュータプログラムが自動的にデータを検索・取得することが容易となる。

18 「統計調査等業務の業務・システム最適化計画」(2006年(平成18年)3月31日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)に基づき、各府省の統計調査等業務に係る情報システムを集約して整備された「政府統計共同利用システム」において、統計利用のワンストップサービス機能を担う政府統計のポータルサイトhttp://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do別ウィンドウで開きます

19 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)は、インターネット時代のための新しい著作権ルールの普及を目指し、様々な作品の作者が自らの作品に対して、「この条件を守れば自由に使用可」という意思表示をするための仕組であり、国際的非営利組織クリエイティブ・コモンズが提供している。権利者は以下の「表示」「非営利」「改変禁止」「継承」の4種類のマークで示される条件を取捨選択して使用する。この仕組(ライセンス)を利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で権利者に許可を得ずとも再配布やリミックスなどをすることができる。各国の政府では、豪、NZ、米国White Houseなどで利用されているほか、英・仏でも相互互換性を担保したライセンスが利用されている。

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