総務省トップ > 政策 > 白書 > 25年版 > ICT産業のグローバル展開の経済効果に関する推計方法
付注
付注

付注5 ICT産業のグローバル展開の経済効果に関する推計方法

第1章第2節第2項(8)「ICT産業のグローバル展開の経済効果」においては、次の考え方に基づき推計を行った。

1)調査概要

ICTサービス事業、通信事業、通信機器、上位レイヤーサービスにおける日本主要企業が、海外先行企業をモデルケースとしてグローバル展開を本格化した場合に、その成功によってもたらされる経済効果を次の考え方に基づいて推計した。なお、本推計では、経協インフラ輸出の効果は想定していない。

2)経済効果の推計

ICTサービスでは、企業の売上規模によって、グローバル展開への取組に大きな差がある。世界市場で売上トップクラスに食い込む日本企業は、全売上に占める海外比率40%以上を目指すなど、海外企業トップクラス(IBM、HP、Accenture等)に肩を並べるグローバル展開に取り組んでいる。それに続く、日本企業グループでは、2015年〜2016年に同海外比率20%〜35%を目標に掲げており、世界市場の第2グループ(CSC、Xerox等)に匹敵するグローバル展開を目指している。以降の日本企業グループについては、グローバル展開の取組をこれから本格化する状況ではあるが、ユーザー企業(非ICT企業)のアセアンを中心とする海外展開を契機として、当該地域における海外拠点の設立や買収を活発化している。そのため、世界市場の第3グループに位置する韓国大手企業(Samsung SDS、LG CNS等)と同等程度のグローバル展開を実現すると想定した。これらを、全体として見た場合、ICTサービスについては、現在の国内売上高に相当する規模の海外売上高が実現されることになる。

移動体通信が世界の趨勢となっている通信のグローバル展開について、日本の移動体通信事業者は、各社の事業戦略に基づき新興国や先進国(米国)への展開に取り組んでいる。新興国への展開は、地縁を活かしたものであり、海外先行企業のT-Mobile(米国展開)、SingTel、América Móvil等がモデルケースとなる。一方、先進国展開は、T-mobileの東欧展開がモデルケースとなる。規制産業である通信のグローバル展開は、展開国の外資規制や許認可等に大きな影響を受ける。また、新興国への展開は不透明な要素が大きく、今後のTPP等の行方にも左右されるところが大きい。以上を念頭に、通信のグローバル展開については、先進国から新興国及び米国への展開を行ったT-Mobileをモデルケースとして推計を行った。更に、新興国への展開については、経済環境の違い(ARPU高低で分類)により、展開範囲やスピードに幅を持たせて推計を行った。前記モデルケースを想定すると、通信(移動体通信)のグローバル展開については、国内売上高の30%超から同等程度の海外売上高を実現することが期待される。

通信機器のグローバル展開については、マネージドサービスへの取組が前提であり、先進地域である北米や新興国を目指し、取組が行われている。コモディティ化の著しい基地局等の端末市場では、Huaweiがシェアを拡大しており、規模の経済による戦いが中心となっている。一方、コア網に近い領域では、SDN等の新たな技術革新を契機として、ネットワーク全体の運用・管理を高度化していくことで、既存の巨人から市場を奪うことも可能と考えられる。そのため、米国Ciscoをモデルケースとして想定したところ、国内売上高と同等程度の海外売上高を実現することが期待される。

上位レイヤーでは、SNS市場やEC市場の大手企業が、試行錯誤を行いつつも国・地域に囚われないグローバル展開を積極的に進めているところである。これらの企業が目指しているのは、先行する米国大手のFacebookやAmazonと想定される。これら2社をモデルケースとすることで、上位レイヤー産業では、現在の国内売上高と同等程度の海外売上高を実現することが期待される。

(出典)総務省「ICT産業のグローバル戦略等に関する調査研究」(平成25年)

ページトップへ戻る