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第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第3節 ICTによるイノベーションを推進する研究開発

(6)心理的障壁

ア 失敗が許されない社会的雰囲気

いわゆる「国家プロジェクト」は、その原資が国民からの税金であることから、当然失敗が許されるべきものではないが、失敗を恐れるが故に、必ず成功となるよう、当初からその目標が確実に達成できる程度に低く設定されてしまうものが多く、結果として、国家プロジェクトが成功するものの、新たな産業の創出という大きな成果に繋がらなくなっている恐れがある。

また、競争的資金6などによる研究開発も、「技術目標の達成」を強く求められている一方、事業化は達成を優先すべき目標とされていないことから、事業化に至ったものはさほど多くないのが現状である。

その一方で、破壊的イノベーションは、新しい価値を生むものであることから、その創出につながる技術は当然独創的・創造的なものである。このため、破壊的イノベーションに繋がる技術の研究開発への取組自体が、成功への道筋が明らかでないチャレンジであり、技術目標の達成を求める現在の研究開発事業の中では、そのような独創的な研究開発に取り組むことは困難である。

同時に、起業にも大きなリスクがある。ベンチャーキャピタルなどのリスクマネーの供給が十分でなく、リスクマネーに頼った起業や新事業創出が困難なため、企業の資金調達手段が、主に銀行からの融資によっており、中小企業等では、物的担保を超える融資を受けることが難しく、また、知的財産権など金銭に換算することが困難な資産を担保とすることも難しいことから、代表者などの人的担保に頼らざるを得なくなり、一度起業に失敗すると、立ち直るのが困難となりやすく、起業に大きなリスクが伴う。

また、失敗を恐れる雰囲気は、社会全体だけでなく、企業内や大学内にも存在するため、新たな評価軸でなければ評価できない、独創的な取組が疎外される要因となっている。

イ 自信の喪失

その一方で、我が国が持つ技術力は非常に高く、既に持っている技術や能力をうまく活用することで、高い国際競争力を獲得できるはずである。しかしながら、新たな価値の創造に取り組む自信を失っており、研究者が、次世代の技術を生み出し、将来の社会経済活動のあり方を変革する一翼を担っているという誇りを持てずにいる。

また、国内で生まれるベンチャー企業が、ビジネス志向ではなく、技術開発先行のものが多いために、結果としてマネタイズに至らずに失敗する事例が増加し、次の起業を目指す者の勇気を失わせるために起業が増えない、という悪循環に陥っている。

さらに、最近の学生は、リスクを取る、グローバルに取り組むことにネガティブで、将来に強い不安があるという空気に囲まれている。



6 資源配分主体が広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む 複数の者による科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金(第三期科学技術基本計画による定義)

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