第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第1章 ICTによる地域の活性化と絆の再生

(3)国民目線に立ったICTサービスの利用意向


●国民目線に立って想定したICTサービスの国民の利用意向は6割以上と高い

ア 国民目線に立ったICTサービスとは
 それでは、国民目線に立ち、利用者の利便性に配意したICTサービスとはどのようなものなのであろうか。そのコンセプトとして「個人最適化(国民一人一人に合ったサービス)」「簡単・便利(誰でも、手軽に使えるサービス)」「困ったときに(生活で困ったときの助けとなるサービス)」「生活に密着(生活への係わりが深いサービス)」という4つの視点を設定した(図表1-1-1-6)。

図表1-1-1-6 国民目線に立ったICTサービス(コンセプトイメージ)
図表1-1-1-6 国民目線に立ったICTサービス(コンセプトイメージ)
「個人最適化」「簡単・便利」「困ったときに」「生活に密着」の視点を設定
(出典)総務省「ICT利活用による地域活性化と国際競争力強化に関する調査研究」(平成22年)

イ 国民目線に立って想定されるICTサービスイメージ
 さらに、国民の地域社会生活に身近な「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」の3分野を設定し、上記の「個人最適化」「簡単・便利」「困ったときに(助けとなる)」「生活に密着」といった国民目線に立って総務省が独自に想定したICTサービスのイメージを図表1-1-1-7のとおり、3つずつ作成した。

図表1-1-1-7 「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」における具体的なICTサービス
図表1-1-1-7 「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」における具体的なICTサービス
「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」の3分野を設定し、「個人最適化」「簡単・便利」「困ったときに」「生活に密着」といった国民目線に立って総務省が独自に想定したICTサービスのイメージ
(出典)総務省「ICT利活用による地域活性化と国際競争力強化に関する調査研究」(平成22年)

ウ 国民目線に立って想定されるICTシステム・サービスの国民の利用意向
 インターネット利用者を対象としたウェブアンケート調査6により、上記9つのICTサービスイメージを提示して、利用意向を尋ねた結果は図表1-1-1-8のとおりとなった。

図表1-1-1-8 「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」における利用意向
図表1-1-1-8 「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」における利用意向
ほとんどのICTサービスについて、6割以上の利用意向が認められる。特に利用意向が高いのは「診察事前予約サービス」(医療・健康 81.9%)及び「粗大ゴミ・不用品のリサイクルサービス」(生活・暮らし 81.7%)
(出典)総務省「ICT利活用による地域活性化と国際競争力強化に関する調査研究」(平成22年)

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 「医療・健康」分野の「健康状態に合わせた最適健康管理サービス」で「利用したい」と「機会があれば利用したい」と回答した合計の割合は69.9%となった。同様に、「病状に合わせた最適医療サービス」は75.8%、「診察の事前予約サービス」は81.9%となっている。
 「教育・就労」分野の「個に応じた学びと教え合い、学び合う教育サービス」は54.6%、「オンライン教育ポータルサービス」は62.9%、「教育・資格に基づいた就業支援サービス」は60.5%である。
 「生活・暮らし」分野の「引越手続のワンストップサービス」は77.2%、「税申告の作成等支援サービス」は74.7%、「粗大ゴミ・不用品のリサイクルサービス」は81.7%となっている。
 いずれも単純集計であり、利用が想定されない人の回答も含まれているが、ほとんどのICTサービスについて6割以上の国民に利用意向があることがわかる。

エ 国民目線に立ったICTサービスの実現に向けた課題

●「個人情報の保護・セキュリティ」「サービスによる効果の有無・必要性」は、多くのサービスに共通した不満・不安

 今回提示したICTサービスでは、ほぼ6割以上の利用意向があることがわかったが、他方、「あまり利用したくない」「利用したくない」との回答もあり、全ての国民にとって価値のあるICTサービスとするには、まだ課題が残されている。
 提示したICTサービスによっては、「そもそも利用する場面が想定されない」「興味・関心がない」などの理由で低い利用意向を回答した人もいれば、ICTサービスに対してある程度の価値を見出しつつも、利用することへの抵抗感、不安感を抱くために、それらが障壁となって低い利用意向を回答した人もいると考えられる。そこで、何らかの抵抗感、不安感を抱いていると想定される「あまり利用したくない」と回答した人を中心に、ICTサービスへの不満・不安を整理すると図表1-1-1-9のとおりとなった。

図表1-1-1-9 「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」のICTサービスに対する要望
図表1-1-1-9 「医療・健康」「教育・就労」「生活・暮らし」のICTサービスに対する要望
「個人情報の保護・セキュリティ」「サービスの効果の有無・必要性」は、多くのサービスに共通した不満・不安
(出典)総務省「ICT利活用による地域活性化と国際競争力強化に関する調査研究」(平成22年)

 不満・不安の内容としては、「個人情報の保護・セキュリティ」「サービスの効果の有無・必要性」「サービスの利用に伴う手間」「サービスの利用に伴う費用」「オンライン化に伴う対人トラブル」などが挙げられた。特に「個人情報の保護・セキュリティ」「サービスの効果の有無・必要性」は、多くのサービスに共通した不満・不安となっている。
 「個人情報の保護・セキュリティ」では、カルテ情報や納税情報などの個人情報を扱うため、オンライン上での情報管理は不安である、といった意見が見られた。実際にICTサービスを提供するためには、情報の取り扱いに関する明確なガイドラインの策定や、セキュリティを担保するためのシステム上の仕組の構築などが必要と考えられる。また、「サービスによる効果の有無・必要性」では、既存のサービスに比べた優位性を見出しにくい(対面教育の利点が損なわれる、オンラインでは形式的な教育に留まってしまう等)、といった意見が見られた。本サービスの位置づけや、既存サービスとの使い分けについて、今後検討を深める必要がある。


6 アンケート調査の実施の詳細については、付注1参照
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