第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第2章 グリーンICTによる環境負荷軽減と地域活性化

3 グリーンICTによる地域社会の絆


●地域においてグリーンICTに取り組むことが地域社会の絆の深化につながっていく

 ICTを活用したグリーン化(Green by ICT)においては、新しいテクノロジーやそれを用いるための新しい仕組の導入が時として必要となる。そして、これらを地域社会に適用するためには、地域における多種多様な層の協力が欠かせないため、グリーンICTを地域で実現した際には、結果的に地域社会の絆を強めたり、深めたりすることにつながる可能性がある。ここでは、そのようなグリーンICTでCO2排出削減と共に地域社会の絆を深めることに取り組んでいる事例を紹介する。

●地域通貨で支払えるカーシェアリングの仕組をICTで実現

 カーシェアリングとは、1台の自動車を複数の会員が共同で利用する自動車の新しい利用形態である。会員(利用者)にとっては、自動車保有に伴う費用負担や手間を軽減できるといったメリットがあるため、我が国では平成18年以降、急速に普及しつつある(図表2-2-3-1)。また、カーシェアリングは、自動車の保有台数及び走行距離の削減等によりCO2排出を大幅に削減可能とされている。さらに、一部地域においては地域住民同士のコミュニティ活動を活性化させるための仕組としてのカーシェアリング活用も始まっている。

図表2-2-3-1 国内のカーシェアリング車両台数と会員数の推移
図表2-2-3-1 国内のカーシェアリング車両台数と会員数の推移
カーシェアリングは国内で急速に普及し、平成22年の会員数は前年比約2.5倍となった
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 J社はオーナーから預かった自動車を同社会員ユーザに時間単位でレンタルするカーシェアリング事業者であり、同社は、都市部の団地内コミュニティ再生活動の事業趣旨に賛同し、カーシェアリングサービスを提供するとともに支払いを現金以外に同地域の地域通貨でも可能とする仕組みをICTにより実現した。現時点では、現金での支払いが主であるが、住民同士での外出や、支援を行っている大学の学生による買い物代行のためにカーシェアリングが利用されており、その仕組が地域内の活動を活性化し、絆を深めることに貢献しつつあるといえよう。
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